匿名さん 2018-06-10 12:20:27 |
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「冗談だな」
(自分としても若干気になっていたことを相手が単刀直入に尋ねれば、副首領は冷静なトーンで切り返し、さらに『……さっき、別の場所から流れ着いたと言ったな』と繋げて。最後方を歩いている自分には、下っ端たちの表情も伺えないが、何か特別な事情でもあるのだろうか。内部の空気感は掴めないままだが、副首領が続けて語るところには)
「鉱山にいたのは俺の方が先だ。俺はガキの頃に、元々ここにいた山賊の仲間に引き入れられた。だが、腕力がなかったもんだからよ。ずっと下っ端で冷遇されていた。受けていた扱いときたら、酷いもんだったぜ?」
(自分たちの歩く音以外、雑音のない静かな坑道でどうやら身の上話のようなものが始まった気配であり。話からすると、身寄りのない子どもだったのか、もしくは身内を殺されでもしたのか。ただ、腕力がないというのは見た目から少々分かる気もして。彼は見るからに貧弱ではないが、屈強ではない外見であり、背もそう高くはなく。副首領は続けて『そこに今のカシラが、一緒に没落した子分連中と落ち延びてきたんだよ。たまたま俺が一番に会って、鉱山と元の山賊たちの情報を売った。元の山賊をカシラがぶっ倒して、アジトごと乗っ取って"今"だ』と明かし。
それから一度、こちらをちらりと見れば、やや忌々しげに『……それで俺も取り立てられて、上につかせて貰ったけどよ、騎士団長時代からカシラに仕えている剣士もいるし、下克上なんざする気はなかった。リスクがでかすぎる。何よりアウトローの世界じゃ "力" に勝るものはねぇしよ。全部上手くいっていたんだ。お前らが来るまでは』と言ってのけ。……自分が確認した限りでは、下っ端でもあの首領に愚痴をついている者はいた。分裂しそうな内部で、それでも本当に分裂したら色々と面倒だから、頑張って首領を立てて上手くやっていたというところなのだろうか。
だとしたら、少なくない人間が見ている前で、首領を徹底的になぶってしまったことは非常に "良くないこと" だったのかもしれず。力こそ全ての世界で、力のみで辛うじて統率力を持っていた人物の面子を潰してしまったことになる。……やり過ぎた自覚がある分、"襲ってきたお前らの自業自得" と言える気分にはなく。決まり悪さを覚えては、視線を斜め下方に落とし。そのうちに、突き当たりに差し掛かったようで。先を歩いていた下っ端たちに合わせ、足を止めて前を見ると、そこには大人3人くらいなら並べそうな幅の穴があり、下方に向かって紐梯子が降りていて)
「ああ、そこだ。その地下通路が言ってた道だ。梯子があるだろ? 長めだから気を付けて降りろ」
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