匿名さん 2018-06-10 12:20:27 |
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……! ……貴族? ……政争…?
(手元の灯りを頼りに、坑道を進みながら落ち着いた口調で語られた相手の話は、声のトーンに不釣り合いなほど重たい内容で。言語情報としては頭に入ってきたが、感情と思考も合わせて即座に消化吸収できる類のものではなく。やや瞳を丸め、幾つかの単語を復唱しては先を行く相手の背を追い徐に歩を進めるが、そうして少しの間を置くとようやく心慮も巡り出し。
つまり、さっきの奴は、ただの騎士崩れの阿呆野盗かと思いきや、本当に何の導きで再会してしまったのか、相手にとっては因縁深く、宿敵とも言える存在だったわけで、向こうにとっても相手は、今聞いた分には逆恨みのように思える経緯であっても、その後の人生を狂わせられ、辛酸を舐める切っ掛けとなった不倶戴天の仇敵と云うことであり。
……ちょっと待った、いきなり聞くには情報量過多だ。相手が元貴族…? 少し変わった、ぼっちだけれど、割りとお人好しのトレージャーハンターだとばかり思っていたんだが。……確かにトレージャーハンターという職業自体、堅気とは言い難く、一定数訳有りの人間が集いそうな雰囲気もあるが、それにしても没落貴族の唯一の生き残りとは話が重たく)
……………………。
(視線をやや下方に落とし、顔立ちは平常通りのまま、口を引き結び、黙って歩きながらも今のような事情を聞けば、これまでの相手の言動も違った意味を持ってくるように思えて。それだけの過去があり、性格や行動パターンに影響が出ないわけはない。だが、他人が勝手に現在の相手の一挙一動を安直に過去と結びつけて捉えるのも、非常に失礼だろう。しかし、友だちがいないようなことを仄めかしていたのも、自身に弟がいると知った時の反応も、振り返るとその時には微塵も察せなかった背景が関わっているような気もしてしまい。何せ、故郷を追われた元貴族とあれば、長らく軽率に足がつきかねない真似はできなかったはずで──
しかし、そこまで考えて、ふと引っ掛かりを覚え。相手の一族を嵌めた後、対立勢力の統治が上手くいっているなら、二度と故郷に戻れないのも分かる。だが、今の話だと全然そんなことはなさそうで。国は内乱、その事実を断片的に示すが如く、先の頭領も山賊に身を落としており。……なら、例え没落直後は追われる身でも、いつ何処から現れるか分からない刺客を思いつつ、延々と日陰を渡って過ごすより、味方を見つけて正面から立ち向かう道はなかったのか。
戦場と言えば、誇り、名誉、団結。一度劣勢に立たされようと、受けた屈辱は忘れぬもの。勝機を見計らい、隙あらば雪辱を果たす、そういう空気感なら知っていて。特に貴族や騎士はそういった気質を持つ人種だろうし、現に先の頭領も相手のことを深く恨んでいる様子だったのであり。復讐の欲求と安寧の奪還がつきまとう連鎖に思慮が行き着くと、相手にとってはどうなのかと繋がって。
どんな返事であれ、裁く気はなく、子どものように邪気のない疑問、かといって面白おかしく話を聞き出そうという意図もなく、ただ純粋で裏のない興味から、瞳の奥に小さくとも澄んだ光を宿せば、やや真面目な表情となって顔を上げ、表面上はいつもと特に変わったところのない背中に素直な言葉を投げ掛けてみて)
……なあ、大まかな話は分かったけれどさ、要するに……あいつも失脚して、国は荒れていて、じゃあ、アルは帰ることはできないのか?
(/長文定期←。今後の展開について了解ですw まぁ結構前の話でしたのでw;)
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