匿名さん 2018-06-10 12:20:27 |
通報 |
「……勝手に入ってくる奴があるか! 埃が飛ぶだろ、出ていけ!」
(外で談笑していた職人たちの話を、へぇ、と思いながら聞いていた。どんな魔道具にも精通しているとは心強い。相手に付いて教えられたテントを覗けば、中にいたのは如何にもといった鍛冶師らしいドワーフ族で。……第1種の亜人だと思った。自分のような亜人は、基本的に仲間と連携しないし、子どもを作れないし、ゆえに一族として成立せず、一世代で終わってしまう。言わば、亜人としても2種以下の下位。それに対して、ドワーフやエルフ等はある程度種族的な地位を獲得しており、人口の差もあって人間より立場は弱くても "別種の人間" としての存在感を一応は持っている。久々に遭遇した、純粋な人間でもなければ、自分とは異種に当たる亜人種に、少々物珍しさを感じ、しばし作業風景ごとその姿を見入っていたが、やがて、老職人が手を止めたタイミングで相手が声をかけると、老職人はこちらを振り向き、作業用と思わしきゴーグルをずらして。無表情のまま、つぶらな瞳だな、なんてことを考え、ぼさっとしていると、老職人は無言で椅子の脇に立て掛けたあった杖を手に取り、突如それを振り上げたかと思えば、怒った表情で怒鳴り声をあげて。……えぇ!? 外にいる、多分貴方の仲間と思わしき職人に聞いてここを訪ねたんだが。思わぬリアクションにちょっと引いてしまい、動揺がさすがに顔に出て、こいつ、きっと気難し屋だな、と即座に悟り。
その時、後ろから『ああ、やっぱり』と声がし、身体の向きは変えず、首のみでそちらを確認すると、テントの入り口から、頭にバンダナを巻き、口元には黒い髭を少しだけ生やし、全体的に肌の色は炉焼けしたように黒っぽい気の良さそうな男が顔を覗かせていて。男は老職人の方を見ると『シュミットじいさん、そう言わずに見てやって。俺たちじゃ難しそうだったんだが、面白そうな魔道具だし、こいつら困っているみたいだからさ。まさにじいさんの出番だよ、俺からも頼むよ』と言って。恐らく、ここを教えたはいいが、作業中であることか、あるいは単にへそまがりなことか、その辺りを思い出して様子を見に来てくれたのだろう。他方、そう言われた老職人の方は、別に気を良くする風でもなく、杖は下ろしたものの)
「お前も勝手にテントを開けるな! 風が入るだろ。暇があったら "あれができない、これができない" と言ってないで修行しろ。出ていけ!」
(……内心、なんてつっけんどんなんだ、と呆れるが、男は苦笑いし、特段気にする素振りも見せず、自身の方には暖かげな瞳で目配せした後、身長的に声をかけやすいのだろう相手の方に『腕は確かだから。ちょっと偏屈なところもあるがな、根はそこまで嫌なじいさんじゃねぇし。本当だよ』と茶目っ気を交えて耳打ちしてから、素早く引っ込み。……そう言われても、この人とどうやったら会話を成立させられるのだろう、と疑問を抱きかけると、老職人は何故か手招きをしてきて。顔立ちは気難しそうなままだが、先の男の言葉で実は心を動かされたのか(←)、相談に応じてくれる気らしく)
「どれ、見せてみろ。何をどうしたいんだ?」
(/これは排斥されてしまうタイプの人←)
トピック検索 |