匿名さん 2018-06-10 12:20:27 |
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あれぐらいのは珍しいと思うぞ。
(相手の動揺を察すれば、特に目も合わせないまま、淡々と。"あれ"という単語は、先の人のことを指しているのではなく、大まかであれ見た目から推察できる、その人の境遇、痛ましげな状態の方を指しており。続けて客室にて、運び込んだ荷物をそれとなく固めて床に置いていれば、相手が呟いた言葉を聞き広い、また特に何も考えていないような、思ったことを一切精査せずにそのまま言っているような平淡な口調で「オレはゆっくりでもいいけれどね」と述べ。
……契約成立直後の言動は一体何だったのか、と疑問に思われても仕方ない台詞な気もするが、本人に矛盾の認識はないのかもしれない。何せ、今日まで虐待どころか使役らしいこともされておらず、契約そのものを嫌がる動機には欠けており、また、幸いなことに初日以降、騒動も発生していないため、最初に最も危惧していた "自分を発端に周囲が不利益を被る" 事態への実感もたまたま今この一瞬は薄れていて。
その後、床に置いた荷物を広げての片付けが始まれば、荷物を挟んで相手の正面に座り、時折、自分の近くにあるものを取って手渡したり、ゴミ袋に移したりするような極めて簡単な動作だけは手伝いつつ、基本的にはじっと相手のすることを見ており。相変わらず表情の起伏は乏しく、別段ワクワクしている風でもないが、何処となく親が料理や掃除などの家事をしているのを、興味から静かに観察している子どものような雰囲気が醸し出されていて。
大体、ここが客室である以上、相手が何を始めようが無視して寝ることもできるはずなのに、わざわざすぐ近くで何をしているのか見届けたがっているというのは、つまり関心があるということなのだろう。その中で、思い付いたみたいに相手に提案をされれば、まるで昼間の服屋での一幕を再生するかの如く、一瞬予想外の出来事に驚いたような顔をした後、少し困惑している感じで。事実、私物らしいものは殆ど持っておらず、財布や地図や水筒や筆記具など、鞄があれば入れるものの定番にして個々人が携帯する所持品の類がそもそもなく)
え……オレはいいよ。……その、そんな持ち歩くような荷物もないし。何かあっても、アルと一緒でオレは嫌じゃないし、荷物持ちぐらいならするから。
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