◆ 2018-04-03 00:00:02 |
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>Leone
…ぁ、う…っ。……それは、あの、それもある、けど……ッだって…君が…
(両膝を着いてその場に腰を下ろせば、包む手を幾度も握り返した末に細められた無垢な瞳が、己の手だけではなく心の臓までをも鷲掴んで。頬を彩る朱を一層濃くし、どうしようもなくおろおろと覚束無い言葉を散らす醜態振りは、もはやどちらが病に侵されているのかすら判然としないような有様だろう。一応友人関係にあるとはいえ、そのあまりの無防備ぶりには、彼の身の安全がどれほど脆くか細い均衡の上に保たれているかという事を多少なりとも警告しておくべきではと思案しないでもないが、培われた信頼を自ら打ち崩す事も躊躇われては無様に返答に窮して。先刻、自分に溺れて良いなどと我が身には甚だ過ぎた甘言を貰ったものの、やはり彼がこの“恋心”と呼ぶには余りに穢らわしい依存を、執着を、夥しい迄の欲心を確り認識しそんな言葉を差し出したとは到底考えにくく。堪らなく胸を焦がす熱情を煽る色をよりにもよって彼が有している事実が己にとって如何に致命傷なのか、今になってそんな事が嫌になるほど身に染みて。しかし、やはり心身共に疲れが溜まっていたのか、布団を被せてやれば直ぐにうつらうつらと瞼を閉じかける彼の様子に、不意に安堵と共に少しの魔が心中に差し込む。…今ならば、たとえ如何様な答えを落としたとして、その全てが曖昧に霞む夢現の中へと消えてくれるだろうか。そんな油断と先の嬉色を灯す紫紺の記憶が、躊躇いに無為の開閉を繰り返す口を滑らせて。未だにその可憐な容貌と普段の彼の言動とに少しの違和も見出すことなく、その双眸を厭う理由すら全く見当も付けていないが為に、今にも紡がれんとする率直の音に誤魔化しや気遣いの類いが含まれることすらない。視線は包み込んだ彼の白い手の甲へと落としたまま、愛でるように親指で軽くそれを撫でると切なげに眉を下げ、ぽそりと端的な解を零して。)
――…君が、あんまり可愛いから……悪いこと、しそうになる。
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