◆ 2018-04-03 00:00:02 |
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>Leone
…本当に大丈夫? …あ、あぁいや、しっ仕事のことじゃなくて…。
(あれ程の暴挙へ惜しみのない誠実さを返報し、憤る所か失望の色一つ見せない彼に依然胸を押し潰すような悔悟の念こそあるものの、強張っていた肩の力が多少なりとも抜けるのを感じ。しかし、無問題を告げる表面的な言とは相反し、先刻の一瞬の暗色を彷彿とさせる不明瞭な陰りは相も変わらず眼前の素顔に宿り続けており。自らへの悪感情や行けず終いの仕事への憂いでもなければ、仮面を外したが故の心許なさだけが原因でもなさそうに見えるそれが、まるで何かの欲を押し殺す様のように思えてしまうのは、自らもまた内に秘め頑なに見て見ぬふりを続ける秘密の箱を隠し持つからか。…先刻の醜悪極まる欲が、果たして何に起因するものだったのかなんて今更だ。先刻“守る”などと言った舌の根も乾かぬ内に身勝手な刻印付けに転じておきながら、それでも決して薄っぺらの嘘言だった訳ではないのだと、そっと徐に重ねた自らの頼りない手。そんな物如きに強ばる表情を緩める彼に、直に重なり混じり合う手の平の確かな熱に、伏し目がちな紫眼の些末な動き一つ一つに鋭敏に反応し高鳴る鼓動が、その答えを克明に告げ続けている。余りに声高の主張に心の耳を必死に塞ぐも、しかし眼前の見え隠れする暗色を看過する事など到底出来ず。ぐっと耐え難い心の動揺をどうにか一時的に抑え込んでは、交わらぬ相手の瞳を確と見つめ「前も、言ったけど…俺、本当に何でもするよ。──…君が望むことなら、なんでも」頭上の傘を叩く小降りの雨音にも似た静かな囁きの音は、決して今までのような卑しい奴隷根性に基づくものなどではない。しかし、彼という唯一人にのみ向ける鮮明にして醜悪な格別の色が、思った以上にその声音へ熱を落としてしまったような気がして。折よく目的地の玄関扉まで辿り着いたのを好機と取り、慌てたように手を離すと、朱の射した顔を魅惑極まる紫眼から急ぎ逸らす。そのままその手の平をドアノブへと伸ばしては、一足早く中へと駆け込んで)
〜っ、ああぁえっとっ…! とりあえず、入ろっか。レ、レオーネはその髪とか服とか、乾かさないとだね。…っ俺はあの、リビングで待ってるから…。
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