VIVID COLOR PARADE【3L】　

>Junlong

えっあっ、そんな、ジュ、俊龍はもう十分素敵だよ……！　……うん、ほんと、すごいなぁ……。俺なんてすごいひ弱だから、羨ましいよ。…………。

(こんな自分程度の絵描きのモデルになる為更に体を鍛えるなどと嬉しいことを言ってくれる相手に、慌てて頭を横に振りそう否定して。ふと相手の逞しい肉体美を尊敬の眼差しで見れば、あの辺りの筋肉の色味はああなって、光と影の境界線はこうで、ああいう具合に骨の形が出て……とつい絵描きの目でしげしげと彼を観察してしまい。他方、一人勝手に絶望し始めたこちらを気遣ってだろうか、彼の絵を多く描いて欲しいという要望には意表を突かれ、頭を抱えていた手を迷うように胸元に持ってくれば、如何に返答すべきか答えに窮して。彼の為ならばもちろんいくらでも鉛筆を握るが、先刻披露した絵は幾らか明るい印象があったとはいえあくまでも比較的、である。尊敬の念がたまたま前面に出た分、他の絵よりかは幾分マシというだけで、やはり劣等感やら嫉妬やら自己嫌悪やらの悪感情が混在しどことない仄暗さが残っており、そして、以降そういった悪感情が絵に強く現れない保証などなく……。しかし、モデルが素直で明るく人当たりの良い俊龍であれば、案外それほど暗くないものが描けるのかもしれないという希望的観測もあって。まあ油断すればすぐに悪感情が滲んで酷い絵になりかねないが、色のない鉛筆画であるならば恣意的に影を少なめかつ光を多めに描写すれば恐らく何とか──そう、何とか彼を不快にさせない朗らかで幸せな絵が……！「分かった、頑張る……！　俺、頑張るよ俊龍……！」懸命にそんな策を巡らせながら決意を固め終えれば、返してもらったスケッチブックを握る手にも力がこもり。もちろん、恐れ多いと断り逃げるという手を考えなかった訳では無いが、自らの絵を見た上でモデルになるから絵を描いてくれなどど頼まれたのは初めてで、それ故に自らの浮かれ様もそれなりであり。)

(/いえいえ、お気になさらず……！お返事ありがとうございます！)


>Leone

レ、レオーネ、……。っ……──そっか、そうなんだ。君は卑怯者で、すぐに逃げ出しちゃう弱い人なんだね。……俺と、同じだ。

(やはり、俺なんかの言葉では届かないのか。すっかり怯えてしまった彼と相対し戸惑う自分。まるで普段とは真逆の構図に、ますます焦燥が募り、張り裂けそうな胸の痛みに顔を歪めて。事情もろくに知らない自分が彼をこれ程までに追い詰め踏み込んでしまっていいものかと躊躇いが生じたが、やはり、どうしても……どうしても、彼が自分と同じ苦痛に喘ぐ姿に耐えられず上記を。彼の言を否定しても納得しては貰えないだろうという思惑の肯定とはいえ、よもやこんな自分と“同じ”だなんて、ともすれば最大限の侮辱にもなりかねない言葉を彼に吐くことになろうとは。しかし自然と口をついて出てきたそれは、不思議と胃の腑にすとんと落ちて。距離を取ろうとする彼を追いはせず、その場で彼を落ち着かせなければと右手を差しのべ慌てて声をかけようとしたものの、「……っ」紡ぐはずだった言葉は無意味な吐息と化し、その指先もわずかに震えてしまい。……あれ、おかしいな、覚悟は決めたはずだったのに。そう、少しでも挫けてしまえば後はいつも通り、顔はみるみる青ざめて視線を落とし、差し出しかけた手は頭上のフードへ伸びる。どうしよう、やっぱり駄目だ。……怖い。怖い怖い怖い怖い怖い……！　どう考えたって無理だ。手を取ってもらえる気がしない。こんなことなら身の程を弁えていれば。逃げたい。何もかも諦めて逃げ出してしまいたい！　一度彼との間に築かれてしまった見えない壁は、恐ろしいほどに高く高くぶ厚いような気がして。ぐるぐるといつもの悲観的な思考が頭を巡り始めればもう止まらない。やはり、こんな惨めで愚かで弱い自分が、何も出来るはずはなかったのだ。うっすらと涙が滲み、いつものように盛大に謝って逃げてしまおうとすら思い。……でも、くらり歪んだ視界の片隅で、今にも泣き出しそうな君の顔が見えたから。──ぐっと強く奥歯を噛み締め、もう一度決意を新たに顔を上げ微笑する。再度差し出した手の震えはまだ止んでいないけれど、努めて柔らかな声音になるよう絞り出した声だってひどく掠れて、とても頼りになんてならないだろうけれど、それでも、今回ばかりは頑張らない訳にはいかず。「──それなら、ちょうどいいね。駄目な者同士、俺と一緒に進もう、レオーネ。君が本当に、俺が思っているより弱い人だったとしても、俺は君がすきだよ。こんな俺に優しくしてくれた君が、あんな絵を認めてくれた君が、綺麗で繊細な君の音色が、本当にすきだ。……だから……だから、ねぇ、……大丈夫だよ、レオーネ」)

…………、ご、ごめんあの、あの……俺って、あの、ええっと……、……っす、すごい面倒な奴だと思うんだ！　ほ、ほら、あの、いつもビクついてるし、ノロマだしグズだし反応だっていつもすっごい過剰って言うか、情緒不安定で皆を振り回してばかりで自分勝手だとも思うし、あああぁっほらまたこんなすぐ卑屈なこと言い始めるし……！

(再びの『友』発言に、やはり先刻のそれは幻聴でも聞き間違いでも何でもないと悟った直後、またもあっさりパニックに陥って唐突に自虐を始め。つっかえつっかえながらも早口でそうまくし立て終えたかと思えば、一転静かに俯いて。表情を隠したフードの下、間を置いて密かに口だけが小さく動き。「…………俺、貴方の友達でいいの？」少しの期待と不安が入り交じった、今にも消え入りそうなか細い声でそう伺い)


>all

(/申し訳ありません、時間の都合上、続きはまた明日投下させていただきますね)