VIVID COLOR PARADE【3L】　

>Leone

レオーネ？　どうし、──ッ！

(お礼を述べるも返事がなく、何やら妙な様子の彼に不安を感じ問いかけようとすれば、突然悲哀に満ちた笑みが形作られ目を見開く。劣等感と、自己嫌悪。自らにとっては実の親よりも親近にある感情がよもや彼の顔へ滲んでいることを敏感に感じ取れば、一瞬呼吸が止まり。何故、どうしてよりによって貴方が、そんな顔を。衝撃と著しい困惑が頭を巡ると共に、雲の上の存在だったはずの相手が、なんだか急に……ただの、自分と一つしか違わない、弱いところも脆いところもある平凡な青年のように思えてしまって。「──大丈夫だよ、レオーネ」だから、覚悟は驚くほどすぐに決まった。自然、やけにハッキリとした物言いになり、いつもの怯えの代わりに強い意志が深灰の瞳に宿る。それほどまでに自らを駆り立てたのは、その気に食わない顔をいち早く覆さなければという強烈な焦燥感で。余計なお世話だと、ただの自分本位なエゴイズムだと疎まれることを、常なら死よりも怯え臆するその事態を、今この時この場において決して恐れはしない。──だって、その忌まわしき情動は俺のものだ。他でもない俺だけが苦しみのたうつべきものだ。その一欠片だって、貴方には……こんな自分の絵を認めてくれた、優しく笑いかけてくれた、仲良くなろうと歩み寄ってくれた──愛しい君だけには、絶対に絶対に渡すものか……ッ！　先程の喜びようから一転、そんな怒りにも似た激情と痛烈な胸の痛みに突き動かされれば、ぐっと無意識に固く拳を握り、根拠などない、道理などもっとあろうはずもない、しかし妙な確信だけはある言葉を必死に彼へと紡ぐ。「──大丈夫だよ、君は、きっとやろうと思えば何だって出来るすごい人だから。俺が何度だって保証する。……大丈夫、君は、……大丈夫なんだよ」元々口下手なのが災いしたのか、あるいは切羽詰まっている為か、はたまたその相乗効果か、我ながら悲しくなるくらい唐突で支離滅裂だ。二ヶ月にも満たない浅い付き合いの人間が言うことだから、信憑性だって欠けている。そもそも彼が何を抱えているのかすら、自分は見当もついていない。それでも、せめて、少しでもいい、君に届いてくれ、と彼の目を仮面越しに強く見据え逸らさず。「たとえ、君に駄目な所や困った所があったって……俺が、ついてる。何が出来るか分からないけど、俺が力になるよ。精一杯頑張るから、だから……──そんな顔をしないで、レオーネ」)

ご、ごめ……っ！　俺、ひっ、……っう、……あり、ありが……っ。

(案の定狼狽させてしまい、あたふたとハンカチを差し出す相手に申し訳なさのあまりますます涙が溢れてくるが、震える手で礼のような嗚咽のような声を漏らして受け取り。有難くハンカチで目元を抑えてフードを引っ張り顔を隠せば、どうにか少しだけ落ち着いて。「……ご、ごめん、ごめんね……あの……違うんだ、悲しいとかそんなのじゃなくて」もごもごと口篭るも、時間を経れば先程の『友』発言は何かの聞き間違いか勘違いか何かではとあらぬ疑念が膨らみ確信を問い正せず)


>Jack

え……、あ……？　……っ！

(いつもの大仰な身振り手振りを交えた彼の言葉を素直に受け止めきれず、しばしポカンと間抜けな顔で彼を見上げていたが、正確にその真意を把握するや鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をして。彼が自分を同等と捉えているなど到底信じがたく、恐れ多すぎて身震いがしたが、それでもどうしようもない喜びが込み上げ収まらず。彼に対する胸のつかえが少しだけ取れたような気すらして、我ながらひどく単純な自分に小さく笑ってしまう。「……あっあの。……変なこと言って、ごめん。……お、おお、俺も、……俺も、“貴方なんか”と一緒にご飯が食べたい、な」光を受け輝くその金の髪と同様に、本人もまた直視に耐えない程眩ゆく煌めいている彼を自分と対等であるとはやはりとても思えなかったが、相手の言を尊重しぎこちなくも控えめにはにかんで。「うわっ、ほ、ほんとだ。絵の具がこんなに……」他方、服装を指摘されたことを思い出し自らの体を見やれば、地味でシンプルな黒一色だったはずのそれは今や赤やら青やらが飛び交い、なかなかハイカラな様相を呈しており。確かにこれで彼と外で食事を共にする訳にはいかない、と大慌てで自分の部屋へ急ぎ向かって。)

あの、ごめん、すぐっ、すぐ！　い、一分で戻るから、待ってて……！　待っててね……！