人外好き 2017-08-01 03:59:39 |
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従順だな。いつもそうであれば、多少は煩わしさも拭えるものだ
(彼女の身体に今、何が起きているのか。観察するように視覚情報と思考を働かせ、考えを統合させる。平衡感覚を司る三半規管の異常により視界が回り、揺れ、歪み。地面や周辺の状態は実際には動いてはいないにも関わらず、誤情報を脳内の信号が伝達し、正常であったバランスが崩れ。それに伴い乗り物酔いにも似た吐き気。頭部を締め付ける痛み。下手をすれば、このままだと手足の痺れや耳鳴り、幻覚も現れてくるかもしれない。どんな言葉を投げ掛けても気丈な振る舞いを覆さない彼女の弱った姿に、いっそ穏やかな程の声音で感想を溢し。常であれば煌めく星の如く、好奇心の光を宿す瞳も瞼の奥に隠されてしまえば。症状を和らげる対処法として間違っていないのも合わさり、満足そうに魔法使いは頷き。「貴様にしては賢い選択だ。そのまま暗闇の中で蹲り、身動きは一切取るな。助かりたければな」下手に動かれ新たな面倒が巻き起こされては、堪ったものでは無い。そんな思いを込めた指示を告げては、遠方から魔法を行使するべく、低い声で短く、淡々と。彼女の耳には意味を成さない言語にてスペルを紡ぐ。すると魔力の注がれた使い魔が彼女の頭から立ち上がり、翼を広げれば。肉眼での視認は不可能な球体状の結界が展開され、周囲の穢れから彼女の身を守るように、空間が隔離されてゆく。次に、翼を前後に羽ばたけば。涼やかな風が吹き、結界内に取り残された魔素を外側へと押し出されたならば。彼女にとっては少し息がしやすくなったであろう環境を整え。そして最後の仕上げに、使い魔自身に己の魔力をさらに注入すれば。電球のような明かり代わりとなった時と同様に、体全身から、今度は清浄な輝きを放ち始め。その光が、彼女の頭部から染み込むようにゆっくりと足先にかけ、じんわりと温かく、伝播していく。使い魔越しに伝わる魔力はやがて治癒の効果を発揮し、暗闇を照らすように乱れた気を正し、血の巡りを向上させ、緩やかに全身を包み込み、彼女の身と心を癒す手助けとなろうか)
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