人外好き 2017-08-01 03:59:39 |
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何故音楽なんぞ植物に聞かせる。赤子でもあるまいに、そこにどんな意味があると言うのだ
(水以外にも加えられていた世話遣りに、そんな事までしていたのか、と。本体の魔法使いは眉間に皺を寄せ、呆れ顔を浮かべていた。妊婦が腹部に宿る我が子と、コミュニケーションを計る手法の一つとの知識は有していても、実行しようとは欠片も思い付かず。彼女の柔軟で自由な発想を不可解そうな思いを言葉にありありと漏らし。湖から視線を上向かせれば、天井から突き出た氷柱のような岩には、八面体の透明な、或いは紫を帯びた水晶が入り交じっている。使い魔の灯りが無くとも周囲の光景が明瞭なのは、ダイヤモンドダストの如き魔素の輝きのあるお陰か。己の知らぬ秘境の地を彼女に案内されてしまえば、鈍いと罵っていた亀に先を越され屈辱を苦々しく感じる兎のように。カチン、と負けず嫌いが顔を出しては、楽しげなその表情を歪めようとの対抗心を持って口を開き「人の世についてでは無く、この森の中に在るもので、貴様に何かを教えられる日が来ようとはな……しかしその秘密の場所を俺に教えてしまって良かったのか?これから根こそぎ奪われるとは考え無かったのか」彼女が考える以上に、己にとっては利用価値の高い鉱石の宝庫。既に幾つか用途の算段を巡らせ、採取方法も理解し確立してもいれば。人が森の自然を、人工物によって切り開くのは妨害する癖に、己は奪う側に躊躇しない意志を淡々と告げようか。「野菜?耕せる柔らかな土の無いこの場にか?……いや、鉢植えか。──そうだな、これだけ豊富な魔素があるのだ。人の食えない毒や狂暴な食虫植物に変異しても可笑しくは無い。実に面白い試みだ」語られる菜園には、子供の豊かな夢を現実を突きつけ、台無しにしようとする意地の悪い大人じみた。しかし、その可能性もゼロでは無い考えを魔法使いは発しては、くつくつと喉の奥を震わせ、陰鬱な笑いを彼女の耳に届けさせることだろう)
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