人外好き 2017-08-01 03:59:39 |
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虹の橋?そう、ヨルにはそんな夢が見えているのね
(危機管理云々についてはそれ以上はもう何も言うまい、と肩を竦め閉口し。目を瞑る彼女を優しく包むように、妖精の翅から零れる光の粒子はその周囲で仄かな輝きを放つ。次に瞼が開かれた時、ダークブラウンの瞳の奥に幾多の星が煌めいて見えた。彼女に優しい夢を。そう念じて編んだ魔法。術者が万が一、魔法を掛けた本人の感情を軸に具現化した幻惑に身を呑まれぬよう、その光景は彼女本人の眼にしか映らない。話振りから想像を広げつつ、その傍らを妖精は飛び回り。──父を迎えようと普段と変わらぬ態度で歩む娘に対し、父親の幻影はどこか涙を堪えるような、そして嬉しさを滲ませ、彼女によく似た笑みを口許に湛え同じく歩み寄る。彼は声を発する事は無く、しかし何かを告げるように口を動かす。それは愛の言葉か、日頃の謝罪か。記憶を源に動く其れの反応は、本人により近い潜在意識の行動を鏡写しの如く反映しているのかもしれない。互いの距離がすぐそこまで縮まれば、大切な娘を両腕に抱き締めようと揺れ動き、けれどその手は体に触れる事は叶わず透過し、一陣の強い風が吹く。桜の花弁に拐われるようにして父親の姿や頭上の虹は掻き消え、彼女の周囲で魅せていた光源たる粉も力を失い。ほんの一瞬だけ夢を見ていたように、そこで魔法の効力は切れ、彼女の眼には元の景色だけが映っている事だろう)
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