人外好き 2017-08-01 03:59:39 |
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ほう……その素晴らしい日とやらに盗みを働いたのはどこのどいつだったか、忘れたとは言わせんぞ
(素晴らしい日、待ちに待っての日。心の中で相手が発した言葉を暗唱し、不意に振り返り満面の笑みを咲かせるその表情を一瞥した双眸をすぅ、と細めたの奥には、また良からぬ事を企んでいるのではと別の意味として解釈した為に疑いの念が渦巻いていて。再び前を向き魔法の花を手に入れた経緯について訂正され真実を知れば、への字に結んでいた口許を薄く開き鋭い音を立てて舌を打ち「チッ、また羽虫の差し金か。不用意に人に与えるべき物ではないと言うのに……」どんな花か具体的な内容には触れられていないが何であれ魔力を宿す草木の譲渡を、おそらく快く承知した妖精の憎たらしい顔がポンッと脳内に浮かび上がっては、ぐちぐちと一人愚痴溢し。「言ったはずだ、貴様の言葉は信用しないと。──ハッ、幾ら貢ぎ物をした所でもう魔法は教えんからな」聴覚に優れた耳が不満を含んだ呟きを拾い上げ、その後に続けられた"プレゼント"の単語が鼓膜を通りすぎればまるで嘲笑うかのように鼻を鳴らし、ご機嫌取りをしても無駄であると何とも捻くれた言葉を送り。やがて無造作に木々の生えた以外には何の特徴も無い場所で足を止め、徐に膝を曲げてしゃがみ込み地表に生えた草の中から視線を巡らせ、縁がギザギザとした葉を持つ薄黄色掛かった雑草に焦点を合わせたならば根元近くの茎から折り曲げるようにして採取し。しゃがんだ体勢のまま背後に居るであろう相手に見えるように左右にゆらゆらと揺らし「今日貴様が集めるのはコイツだ。草の根を掻き分けて探して集めろ。これとよく似た草がこの辺りには多いが、間違えるな」と、特別目立った特徴の少ない薬草探しをやや一方的な口調で命じて)
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