月の書室

月の書室

月  2016-09-03 18:33:52 
通報
元ネタ・オリのblが基本の小説集です。
著者は私、月のみですのでよろしく
荒らし・なりすまし・マナー違反はお止め下さい
ご意見感想等はend後にお願いします

では、始めます

コメントを投稿する

  • No.1 by 月  2016-09-04 00:37:09 




     - 割れたグラスに注ぐ愛 -

(オリbl)

  • No.2 by 月  2016-09-04 00:53:58 




     - プロローグ -


何故俺は今こんな目にあって居るのだろう。
確か今日は夏休み初日で、幼なじみの樫月桜夜(カシヅキサクヤ)の住むマンションに遊びに来た、それだけのはずなのに。
目が覚めたら、手足を拘束されてるなんて、嘘だろう。
これは夢なのか、ならば早く覚めてくれ。
そして、優しい桜夜に会いたい。

  • No.3 by 月  2016-09-04 01:42:22 




     - 一滴目 優しい愛と冷たい毒 -

  • No.4 by 月  2016-09-04 03:30:27 

その日は夏休み初日で、互いに一人暮らしの俺達はバイトもなく予定もないため、いつものように遊ぶ約束をしていた。
昨日メールで話した、桜夜は俺、葉月凪(ハヅキナギ)の一つ年下の幼なじみで、今日は桜夜の家でDVDを見る予定だ。
俺はなれた足取りで桜夜の家に向かい、エントランスのインターホンを鳴らす。
しばらくして聞こえてきた桜夜の声は相変わらず綺麗だった。
「はい、どちらさまですか」
「俺だよ、凪だ」

  • No.5 by 月  2016-09-07 19:28:41 

名を名乗るとオートロックが開き、エントランスを通過し、エレベータに乗り八階のボタンを押す。
桜夜の家は凪の家より少し裕福なため、駅から歩いてすぐの防犯、防音が完備している綺麗で広い造りで、凪のアパートより過ごしやすい。
そのため、二人で屋内で遊ぶときは大抵桜夜の部屋で過ごしがちになってしまう。
ただ、俺にだって年上の意地があるため、毎回手土産だけは忘れたことがない。
そして今日の土産は桜夜が好きな『ハニーストライプ』のベリータルトだ。
桜夜はここのベリータルトに目がないから、きっと喜んであの明るく愛らしい微笑みを見せてくれるだろう。
そんなことを思い浮かべると、凪の顔にも微笑みが浮かんだ。

  • No.6 by 月  2016-09-08 02:04:16 

エレベーターを降り、桜夜の部屋に歩みを進める。
このマンションは一つの階に部屋は二つしかないため、桜夜の部屋を覚えるのには差ほど苦労をしなかったものだ。
凪はエレベータを降りてすぐ右、『801』の部屋のインターホンを鳴らす。
するとすぐにドアの鍵を外す音がして、見慣れた青年がドアを開けてくれた。
「おはよう、思ったより早かったね」
微笑む青年、彼こそがこの部屋の主樫月桜夜である。

  • No.7 by 月  2016-09-08 05:33:09 

「乗り継ぎが上手くいってさ、あ、ほらこれ今日の土産な」
「ハニーストライプってことは…」
凪が手渡した土産の箱を見る桜夜の瞳は、キラキラと輝きを増していく。
「桜夜の好きなベリータルト、ラスト二個だったんだぞ」
ベリータルトの名を聞いた瞬間、桜夜の瞳はより輝きを増したように見えた。
「早く、早く中に入って、早く食べようっ」
待ちきれないと凪を部屋の中へ押し込むようにし、桜夜も中へ入ると、土産を両手に急いでキッチンへ走り出す。
そんな桜夜の様子に苦笑いを浮かべ丁寧に靴を脱ぐ凪の後ろから、桜夜の声が響く。
「靴なんて良いから早くっ」
「焦らなくてもタルトは逃げないだろう」

  • No.8 by 月  2016-09-08 05:55:28 

桜夜に手を引かれリビングに行くと、すでに二つのマグカップに入ったカフェオレと白い皿の上に真っ赤なイチゴや、ブルーベリーにラズベリー等が乗ったベリータルトが二皿用意されていた。
桜夜は甘い物好きのせいか、それらを美味しく食べる事にも手を抜かない。
綺麗なケーキにはそれに合うお皿で、一緒に飲む飲み物も少し高い物をいつも用意している。
なんでもそれがスイーツに対する礼儀らしく、凪にはイマイチよく分からないが、桜夜が喜んでいるし、凪も美味しいカフェオレが飲めるから気にしない事にしたのだ。
ソファに並んで座り凪はカフェオレを、桜夜はタルトを口に運ぶ。
「うん、やっぱりここのベリータルトは絶品だよ、果物は甘酸っぱくて、クリームもほどよい甘さ、何よりこの生地が…」
桜夜は必死にタルトの美味しさをアピールし続ける。

  • No.9 by 月  2016-09-08 23:02:47 

「桜夜は本当にここのタルトが好きだな」
微笑を浮かべ、タルトを食べている桜夜を見ていると、不意に眠気が襲ってきた。
昨日遅くまで本を読んでいたせいか、嬉しそうに微笑む桜夜を見ていて癒されたからかは分からないが、とにかく眠い。
「悪いんだけど、ちょっと昼寝させてくれ、凄く眠くてさ」 
目を擦り、飲み終えたカップをテーブルに置く。
遊びに来てすぐ寝るなんて酷いかもしれないが、桜夜は小さく頷いてくれた。
「分かった、じゃあ凪のタルトは冷蔵庫に入れとくよ」
タルトを食べ終えたらしい桜夜がキッチンとリビングを往復する中、凪は徐々に眠りに落ちていく。

  • No.10 by 月  2016-09-09 23:31:39 



   ***

何だろうか。
凪は薄い意識の中、寝苦しさを覚えゆっくりとその瞼を開ける。
するとすぐに視点の位置のおかしさに気づいた。
俺は今までソファで眠っていたはずなのに、何故そのソファが見える位置に座ったまま寝ているんだ。
しかも両手首には世間で言う手錠なる物二つも填められており、両手が自由になりそうもない。
これは夢なのだろうか。
そうでなければ、この状況は説明がつかない。
幸い口は塞がれておらず声は出せそうだが、ここで桜夜の名を呼んで現実だったら…。

  • No.11 by 月  2016-09-10 01:04:18 

声は出るはずなのに恐怖心で声が出せない。
手錠の冷たさが『これは現実だ』と凪に囁く。
焦りの余りに手錠を外そうとしてみるが、そこにはむなしく金属音が響くのみだった。
とりあえず冷静になろう、ここは見た感じでは桜夜の部屋で部屋の主は見あたらないようだ。
桜夜が見あたらないという事は、もしかしたら凪が寝ている間に泥棒が入って桜夜と凪を拘束し金品を盗んだのかもしれない。
だとすれば、この状況も納得できるし、桜夜も監禁されている可能性がある。
物音がしないという事は、泥棒は出ていったのだろう。
ならば凪が今すべき事は桜夜の安否の確認だ。
さすがに泥棒とはいえ命を奪うまねはしないだろうが、怪我がないとは限らない。

  • No.12 by 月  2016-09-14 01:45:13 

「さく…」
確認しようと声を出した瞬間、玄関のドアが開く音が聞こえた。
まさか泥棒が戻ってきたのだろうか。
焦る凪の気持ちをよそに廊下からは意外な人物が現れ、凪は驚きをかくせない。
「あれ?凪起きてたんだ」
現れたのは片手に買い物袋を掛け、両手で小包を持つ桜夜の姿だった。
「え、お前泥棒に襲われて、閉じこめられてたんじゃ…」
「泥棒?俺買い物に行って来ただけだけど」
あ、そうか、桜夜が留守の間に泥棒が入ったのかもしれない。
そのせいで、俺だけ暴れないように縛られたんだろう。
それなら納得も出来ると、桜夜が留守中に泥棒が入った事を告げた。
「俺にも分かんないんだけど、桜夜が出かけている間に泥棒が来たんだよ」

  • No.13 by 月  2016-09-16 00:30:09 

「ありえないよ、だって俺が出かけたのって十五分くらいだよ?それにドアの鍵だってオートロックだし、なんかあったら管理人さんだって気づくって」
桜夜の言葉を聞いて冷静になれば、確かに泥棒が入った可能性は低い。
短時間しかない状態で、部屋から金品を探して盗み、元に戻すなど不可能に近いといえる。
だとしたらこの状況はどういう事なのだろう。
泥棒が入ったわけでもないのになぜ、凪は拘束されているのだ。
嫌な予感がする。
しかし次の瞬間、予感は確信となり現実へと変わった。

  • No.14 by 月  2016-09-17 00:20:14 

「凪、喉乾いてない?今飲み物用意するけど、その前に…」
桜夜は凪に優しく声をかけたかと思うと、小包を開け、中から銀色の頑丈そうな鎖を取り出す。
鎖の先には今の凪の手に付いている物より、丈夫に見える手錠が一つ付いている。
「え…、桜夜…?」
「ちょっと待っててね、これをこの壁の所に打ち付けて…」
混乱している凪を横目に、反対側の鎖に付いていた金具を桜夜はせっせと壁に打ち込む。
何なんだろう、この光景は。
拘束されている俺の様子に驚くこともなく、桜夜はよく分からない金属を手にしている。
やはりこれは夢なのだろうか、しかし手錠を外そうとした時にできた腕の傷は鈍く痛みがある。

  • No.15 by 月  2016-09-17 02:44:29 

「出来た、あとは…これでよしっ」
凪があれこれ考えている間も、桜夜は鎖を壁に付けて凪の左手に鎖付きの手錠を填める。
それが終わると、両手を拘束していた手錠は外されたが、多少自由になっただけで左手が拘束されている事には変わりない。
つまり、凪からしてみれば全然良くないし、意味も分からない。
「あのさ、桜夜?いくつか聞きたい事があるんだけど良いか?」
「いいよ、何でも聞いて」
いつもと変わらない笑顔に、いつもと変わらない綺麗な声。
ただ違うのは凪の今の状況と、桜夜の行動だ。
「お前さ、何してるの?」
「何って、凪を鎖で拘束してるだけだけど?」
恐怖心と理解の出来ない状況のせいか、短くしか問えない凪に、桜夜はあっさりと現状を話す。

  • No.16 by 月  2016-09-17 18:52:55 

目の前の光景を受け入れられない凪に、桜夜の言葉は止めとなる。
なぜ桜夜は凪を拘束したいのだろうか。
しかし、こればかりは桜夜に直接聞かないと分からないだろう。
「あのさ、何でこんな事するんだ?」
凪の言葉に桜夜はため息をこぼした。
「何でこんな事するのかって?そんなの決まってるだろう、凪の側に居たいからだよ」
呆れたような顔をしながら凪の頬に触れる桜夜の指先は、優しくて暖かいはずなのに冷たい。
「こんな事しなくたっていつも側に居るじゃないか、大学だって同じだし、休みの日にはこうして遊ぶことも多いし」
そんな桜夜に、必死に凪は言葉をかける。
拘束などしなくても、凪と桜夜はいつも供にいる。
大学でも違う講義の時以外はよく一緒にいるし、休みの日も桜夜と遊ぶことが圧倒的に多い。

  • No.17 by 月  2016-09-18 02:35:12 

「全然足りないんだよ、大学でも凪が側にいない時は寂しいし、休みの日もそれ以外も側に居たい」
「桜夜…」
凪の目に写る桜夜はいつもの桜夜とは違う。
優しくはあるのに、狂気が滲んで見える。
愛しそうに見つめるその目は鋭くて、凪には目をそらす事も出来ない。
「でも、いままでは何ともなかったじゃないか、何で今更…」
凪がようやく発した言葉は、桜夜に火を付けてしまう。
「何ともなかった?ねえ、凪、勘違いしているみたいだから教えるけど、俺はずっと寂しかったんだよ?でも我慢するのにも限界があった」
桜夜の指先は凪の頬を伝い、首筋をなぞる。
微笑みながら話すその瞳は、いつもの光を失って見える。
「それでさ、俺考えたんだよ、どうしたら凪がずっと俺の側に居てくれるかって」

  • No.18 by 月  2016-09-18 03:11:38 

首筋を撫でていた指先は、凪の首に絡まる。
桜夜の声もいつもの綺麗な声のはずなのに、冷たく響く。
絡まった指先に包まれた凪の喉が鳴る。
目の前の人物は誰だろう。
俺の知っている人によく似ているのに、違う気がする。
「そして思いついたんだ、大切なら、他の人に邪魔されないように閉じこめておけばいいって」
桜夜の指先に力が入り、凪の表情が歪む。
「俺はさ、分かんなかったんだよね、大切な物を傷つけたり、苦しめたりする奴の感情」
微笑む桜夜の顔は変わらず綺麗なのに、凪の片手じゃ抵抗できないくらいに指先に力が入っている。
それどころか今にも気を失いそうなくらいに、凪の力は抜けていく。
「でも、今なら分かるよ、大切だからこそ傷を付けたいんだ」

  • No.19 by 月  2016-09-19 02:24:16 

凪の意識は今にも消えてしまいそうだ。
このまま、この命の火を桜夜に消されてしまうのだろうか。
遠のく意識の中桜夜の声が聞こえる。
「僕は凪が好きだよ、これからはずっと一緒だよね」
冷たい真空のような闇の中、不意に苦しみが消えた。
しかし凪の意識は闇からあがることを拒否し、ゆっくりと沈む。
酷く眠い意識の中、小さく凪は祈りを呟く。
神様これは夢ですよね。
どうか僕を夢から覚めさせてください。
しかしその祈りが届くことはなかった。

  • No.20 by 月  2016-10-09 01:54:15 




   - 二滴目 鎖は黒に浸食される -

[PR]リアルタイムでチャットするなら老舗で安心チャットのチャベリ!
ニックネーム: 又は匿名を選択:

トリップ:

※任意 半角英数8-16文字 下げ
利用規約 掲示板マナー
※トリップに特定の文字列を入力することで、自分だけのIDが表示されます
※必ず利用規約を熟読し、同意した上でご投稿ください
※顔文字など、全角の漢字・ひらがな・カタカナ含まない文章は投稿できません。
※メールアドレスや電話番号などの個人情報や、メル友の募集、出会い目的の投稿はご遠慮ください

[お勧め]初心者さん向けトピック  [ヒント]友達の作り方  [募集]セイチャットを広めよう

他のトピックを探す:個人用・練習用







トピック検索


【 トピックの作成はこちらから 】

カテゴリ


トピック名


ニックネーム

(ニックネームはリストから選択もできます: )

トピック本文

トリップ:

※任意 半角英数8-16文字

※トリップに特定の文字列を入力することで、自分だけのIDが表示されます
※メールアドレスや電話番号などの個人情報や、メル友の募集、出会い目的の投稿はご遠慮ください
利用規約   掲示板マナー





管理人室


キーワードでトピックを探す
初心者 / 小学生 / 中学生 / 高校生 / 部活 / 音楽 / 恋愛 / 小説 / しりとり / 旧セイチャット・旧セイクラブ

「これらのキーワードで検索した結果に、自分が新しく作ったトピックを表示したい」というご要望がありましたら、管理人まで、自分のトピック名と表示させたいキーワード名をご連絡ください。

最近見たトピック