臆病な自分と冷たい相手

お前はそれでよくても、俺がよくない。
使用人に風邪をひかれたら困る。
(腕を組んで言えば、ふと思いついたように「あ…それともあれか、ベッドより布団派か」と呟き、)

風邪なんて引きませんよ(もともとそういう場所で生活していたので体は結構頑丈で、｢布団？｣ベッドと言うのはカタログを見てわかったのだが相手の言う布団がわからなくてまた首を傾げてキョトンとして)

……まさか布団も知らないのか…？
(首を傾げる相手に思わず尋ねるも、“寝具”を知らなかったのなら無理もないかと考え、)
ちょっと貸せ……あった。
いいか、布団というのはこういう物だ。眠る時に、身体を冷やさないようにする為に使う。
(相手の手からカタログを取ればパラパラと捲り、布団の映っているページを見つければ相手に示して説明し、)

便利なものがあるんですね(相手の説明を聞けばうなずいて｢これは家にあるのですか？｣相手を見てカタログの布団を指差して)

あぁ、布団は予備というか…余りが結構ある。
(相手が珍しく興味を持ってくれた事に内心嬉しくなりながらも表情には出さず、思い出しながら言い、)

なら私はそれでいいです(あると聞けば買わなくてもそれで良いと思い少しニコッと微笑みながら相手の服の裾を小さく握り)

そうか…？
なら、布団はそれでいいとして……ベッドは本当にいらないのか？
(微笑んだ相手に首傾げ尋ね、握られた裾にちら、と目をやるも特に何も言わず、)

はい、僕にそんなに優しくしてくださってありがとうございます(相手に抱きつくのは無理だが少しくっつきあいての顔を見てニコッと微笑み)


(今日はもう落ちます。ありがとうございました)

優しく…って……別に、普通だろう。
(相手の言葉に、確かに自分にしては他人を気遣っているな、と我に返り軽く頬染めそっぽ向き、くっついてきた相手をちらっと見て、)

(/了解ですっ
おやすみなさい)

(そろそろ限界なのか目をギュッと閉じて離れたいが体が動かなくて小さく震えはじめて)

お前…自分から近寄ってきたくせに怯えるな。
(相手の様子に溜め息つき、自分から一歩離れ、)

すみません(相手が離れてくれれば力が抜けて床に座り込み)

大丈夫か、お前……。
(へたり込んだ相手を見下ろし呟けば、相手に合わせてしゃがみ込み、)

はい、大丈夫です(久しぶりにあんなに長時間人に触れていたので自分からしたことなのに昔の記憶が流れてきて震えはじめて涙目で上記を述べて)

大丈夫に見えないぞ……。
俺の寝室を使って構わないから、今日はもう休め。
(相手の様子に溜め息つき、言いながら立ち上がって、)

僕の部屋で大丈夫です(相手の部屋と聞けばなおいっそう震えて大きく首を横にふり)

だからお前の部屋は掃除しないと使えないって……あぁもう！
(さらにひどくなった相手の震えに苛立ち、相手の腕を掴んで無理矢理引っ張り上げるとその両肩を掴み、「しっかりしろと言ってるだろう！ 誰もお前に危害をくわえたりしない！」と語気を強め、)

(無理矢理引っ張りあげられて両肩を捕まれてはビクッとして目をギュッと閉じて相手の言葉を聞きそっと目を開けて｢本当に？｣聞き返すように相手を見て首を傾げて)

あぁ、少なくともこの屋敷の人間はな。
だが、お前がいつまでもそんな風だったら俺は殴る。
(相手から手を放せば吐き捨てるように言い、後半は軽く脅しも兼ねて、)

え…(手を離され相手の最後の言葉を聞けばまた殴られるのだと思い座り込みボロボロと泣きはじめて)