Seul et unique : 〆　

ん＿＿舌火傷したっぽい、ピリピリしてきた( 手に紙コップを持ったまま一旦一時停止を姿勢を取る。ぐるっと相手の方に向き直れば、少し舌を出して「火傷してるくね？」と確認促して。)氷頼んだ。口に放り込んだら家出るぞ、そろそろ3分だ。

んー、ちょい赤くなってる？
( 玲央の舌をじっと確認するも「いや、分かんな」とすぐに諦め。とりあえず応急処置にと一度水で濡らした氷を彼の口へと放り込むと、スクールバッグと先程置きっぱなしにしたスマートフォンを手に取って )
丁度3分だ。……玲央鍵持った？

まぁ舐めときゃいつか治んだろ、こほひ、…つへて…っ( 口の中に放り込まれた氷が思いの外冷たく１回吐き出したくなるも何とか堪えて。身支度を整える愛斗を横目で確認しつつほぼ何も入ってないスクールバッグを手に取り、玄関に足を向け ) むしろ鍵とスマホしか入れてねーし、大丈夫だろ。

( 素早く靴を履くと、玲央が玄関の鍵をかけたのを一緒に確認する。エレベーターまでの短い通路を早足で歩くと、上がってくるのを待つ間、スマートフォンを取り出して地図アプリを開いて )
どのルートもそんなに変わんないな……、普通に一番大きな道行こう。

おっけ、とりあえず気持ち早めに歩くわ。( エレベーター到着を確認するとゆっくり開ききったドアを片手で軽く抑えて。横にいる愛斗に先に乗るように目配せすれば自分も続いてエレベーターに乗車し )なんかちらほら同じ制服着てるやついるからまだ時間大丈夫そーだな。

おお、ほんとだ……
( 玲央の言う通り、道に出てみると同じ制服を着た学生が散見され。それに気が緩んだのか歩調まで緩むと、冗談に聞こえない冗談をぽつりと零す )
……これ、みんな遅刻組だったらどうする？

………お前さらっと怖いこと言うなって。まぁ？その時は代表して学校側に謝ってもらうしかねーな、愛斗に( 「お前の愛嬌とやらでなんとかしろ」と冗談めかして指を差すと歩調を緩めて。大通りを真っ直ぐ進んでいけば視界に学校の校舎がちらりと見え始め )ん、もうすぐ着きそーじゃね？

僕得意だよ、そういうの。
( 軽やかに笑い声漏らすと、両拳を顔の近くへと持ってきたポーズで玲央の方を向き「ほら可愛い」と可愛こぶりっ子。前方に高校が見えてくると、スクールバッグを抱え直して身だしなみを確認して )
うわ、めっちゃ先生立ってるじゃん。

あーハイハイかわいいっすねー。…ってわざわざこっち向き直るな( 明後日の方を向きながら褒めちぎると、視界にぐいっと入り込んできた愛斗に対してしかめっ面で答えて。そのまま校門目掛けて足を向け、門前に並んでいる先生達の間をぐいぐい進んでいけば )早く抜けるぞ、周りの視線がうぜぇ。

僕のせっかくのファンサ……
( 口を尖らせながらぼやくも、表情はいつものやりとりだからと気に留めていない様子で。足早に校門付近の人集りを抜けようとする玲央と、目を引く彼の容姿に注目する周囲の間にさりげなく自分の身を挟みながら、何とか構内へと到達し )
相変わらず注目されるの苦手だねえ、玲央は。

それがファンサなら俺は常にお前のファンサを浴びてる理論になる。ありがてーなァ( 口を尖らせてる愛斗に早口で言葉続ければ態とらしくニヤつきながら目を細めてみせて。門をくぐり校内に入る間、体を少し自分の方に寄せてくれている愛斗に気づき一瞬顔が綻び )人の目線が苦手なんだよ、こっちは目を合わせることもできねー陰キャだぞおい。

そろそろお金取ろうかな。
( 売り言葉に買い言葉。挑発的な玲央の言葉に、前方に顔を向けたまま微かに口元を緩めて返し。小学生の頃を思い返すと、彼との関係も大分変わったものだとしみじみ思いながら )
僕と初めて会った時も、全然目合わせてくんなかったもんね。

ファンサ振りまいて貰った金で焼肉奢れ、寿司でも可。( アイドルの卵には有るまじき発言をポンと吐いてはケロッとしてみせて。昔の話を振られ少し思い返すも「覚えてねーわ」との一点張り。校内を人の流れに乗って進むと教室案内の張り紙がチラッと見えて )ん、芸能科のクラスも書いてあるぞ。

あ、焼肉いいな、食べたい。今日帰り寄ってかない？
( 玲央の発言の断片だけに反応すれば、マイペースに自分の願望を述べて。後から「奢りでもいいよ」と何の気なしに付け足すと、クラス表と教室案内が貼り出してある場所まで移動して )
芸能科は11組からね──どれどれ、……あ、僕11組だ。

おーいいな。お前の奢りなら全然あり寄りのあり( クラス表を見ながら空返事気味に返すと一瞬目が見開いて。少し息を吐くとゆっくり愛斗の方に顔を向けて口を開いて )
＿＿ったく、お前とは腐れ縁というかなんつーか、てか芸能科のクラス圧倒的に少ねーじゃん！11組と12組しかねーじゃん！ (11組の出席番号順の上の方を指さし、態とらしく肩を落としながら溜息をついてみせて )

そりゃあまぁ……そうでしょうねぇ。
( クラス表を指しながら肩を落とす玲央に、苦笑混じりに返す。教室案内を見ると芸能科は他の学科とは棟も違うようで、芸能科の棟の方へ足を向けながら )
ほら行くよー、玲央。ちょっと時間押してきた。

なんだよ、結局同じクラスかよ俺たち( 「あーあ、つまんねー」と小言をしっかり零しつつも何故か表情は明るく見えて。時間のことをすっかり忘れた様子だったが愛斗の方に早足で駆け寄ると芸能科の棟を指さし )芸能科ってあっちか？ふーん、割とキレイそーじゃん。

わりと新しめなのかな？　何期生なんだろ、僕たち。
( 玲央の指差す先を眺めつつ、思ったことをそのまま口に出し。ろくに調べずに志願したことを隠そうともしない口調で )

校舎は新しめっぽいな、エレベーターとか付いてるし最新式なんじゃね？俺もよく確認してねーから知らんけどなんか入試の時言ってた気するわ( 「10周年だから記念なんです～！とか言ってなかった？先生。」と頭を捻りながら手を口元に持っていき少し考える素振りをみせて。チラッとスマホの画面で時間を確認すると、自分のクラスの方に足早に歩き始め )うわっ、もう教室めっちゃ人いんじゃん。入りにくさやべーわ。

そうだっけ？　よく覚えてたね、そんなの。
( 頭を捻りながら思い出そうとしてみるも記憶になく、素直に感心して。急ぎ足で到着した教室をちらりと覗けばドアを開ける。机の上に出席番号のカードが置いてあることに気がつくと、周りの視線も気に留めず玲央に向かってひらひらと手を振って )
じゃあ玲央、また後でね。