青年とお憑きくん(〆)

はっ！？……っ…お前 なんなんだよ！？
(突然背中を押され、手をつく間もなくそのまま盛大に転んでしまい、擦りむいた額を押さえながら体を起こせば、背後にいる相手をキッと睨むように見て言い)

ご、ごめんっ！
俺触れないから腕すり抜けさせて驚かせてやろうって思っただけで…(相手が転んでしまうと、やってしまったと思い、頭を下げて謝り、悪気は一切なかった事を話して。偶然だろうかと思い、相手の体を試しにぺたぺたと触れてみれば、やはり触れることが出来て、「すげぇ、触れた！」と嬉しそうに目を輝かせて)

はあ……おい、気安くベタベタ触るな
(睨みつけてやれば申し訳なさそうに謝る相手に本当に転ばせる気はなかったのだろうと納得し謝罪を受け入れる代わりに大きな溜息をついて、遠慮もなくぺたぺたと触っては感動している相手を見て、そういえばどうして触れることができるのか不思議に思うも、ここは人の往来が多い道、周りからはひとりでに転んで怒っているへんな奴に見えることだろうと思ってはその場を離れようとして)

俺、宮城琉祐！
会話出来るやついねぇからさ、友達になってくれよ(相手が移動すれば、自分もついて行き、見える人がいなかったせいで誰かと話せることが嬉しく、自分の名前を名乗ると友達になりたいと言い)

嫌だ
(友達になってほしいという相手の申し出を即座に断っては家路を急ぐも、このままでは家まで着いてくるのではないかと思えば、口先だけでも友達とやらになれば良いのかと考えを巡らせて)

即答？！(相手に即座に振られると、わかりやすくショックを受け、相手の格好から学生とわかり、「同じ高校生なんだから、仲良くしよーぜ？お前しか相手してくれる奴いねぇんだしさぁー」と言い。ふと、家までついて行ったらどうするのだろうかと、ちょっとした悪戯心が疼き)

知らねーよ、成仏でもなんでもすればいいだろ
(相手の言葉にじっと見れば制服を着ていることに気づき、確かに年齢は近いようだと思い、それはそうと家まで着いてこられるのは嫌なので、帰路から少しそれた自宅近くの公園に向かって歩いていき)

成仏…あれ？そういやなんで俺、してねぇんだろ(相手について行きながら、成仏しろと言われ、ふとなぜ自分がこの世に残っているのかわからず、きょとんとして。会ったばかりの相手の性格など知らず、「もしかして、俺のこと嫌いなのか？」と尋ねて)

好き嫌い以前に関わりたくないんだが
(17時を過ぎた公園には遊ぶ子どもの姿はなく、ベンチに鞄をドサッと置いてその隣に座り、本当にどこまでも着いてくるなと呆れた様子で相手を見れば質問に裏表なく応えて)

…そっか、俺幽霊なんだもんな(相手にハッキリと関わりたくないと言われ、言葉は半ば諦めているようなものの、表情はしょぼんとしていて。相手がベンチに置いた鞄を見ては、ふと相手には触れるが、相手の物であればどうなのか気になり、相手の鞄に手を置こうとしたが、当然のようにすり抜けてしまい)

……なあ、何でお前俺に触れんの？
(相手の落ち込むような態度にこれといって心が動かされることはなく、ただこの目の前の普通は見えない存在をどうするべきかと考えていて、不意に伸ばされた手に身構えるも、その手が自分の鞄の方へと向かえば安堵し、そう言えば何故自分に触れることができるのか疑問に思っていたことを尋ね)

え？んー…俺が見えるから？(相手に触れられる事について聞かれ、自分でもなぜかわからず、考えてから、他の人と相手の違いは幽霊である自分の存在を認識できた事であり、それでは無いかと言ってみるも、確信はないため、疑問形になってしまい)

……今までのヤツ、触られたことなんかねーぞ……で、お前いつまでついてくる気だ？
(幽霊と呼ばれるものに遭遇したことは今までの人生で1度や2度ばかりではないため、以前に遭遇したものを思い返しながら言い、自分から触れようと思ったことは無いが、ぶつかるかと思いきやすり抜けてしまったことなどあるため、ただ相手が見えるから触れるというわけではなさそうだと思って、とはいえ考えたところで結論は出ないわけで、とりあえずこの幽霊らしき相手からどうにか離れられないものかと考えて)

！…俺、いつもあそこで気付いてくれる奴探してっからさ、また会ったら話してくれよな(嬉しくてつい忘れてしまっていたが、家に帰る相手にとって邪魔である事に気付き、家族も気付かない以上行き場もないが、とりあえず離れようと思い、にっと笑いながら相手にそう言って、離れようとしたが、ふと相手の名前が気になり、「あ、そうだ！名前、教えてくれよ！」と言い)

……佐久間だ。お前他の奴には見えないんだから嫌に決まってるだろ、話しかけんなよ、あと着いてくんなよ
(相手に名前を聞かれれば、答えて取り憑かれでもしたら困ると思いつつ、無邪気に笑う相手が悪意を持っているとは考えにくく、ひとまず苗字だけを名乗り、それに付け足すように言っては着いてこないように釘を刺して)

佐久間が酷い…！(今度会ったら話しかけようと思っていたが、相手に話しかけるなと言われ、ショックを受けて、「こーゆー人いねぇとことかで、俺の話し相手になってくれてもいいのに…」と不満そう呟いては、あまり引き止めるのも悪いかと思い、「話してくれてありがとな！じゃあ俺、戻るから！またな、佐久間」と手を振りながら言うと、公園を出て、相手のように見える人を探すべく、いつもの場所へと戻り)

……。
(公園を去っていく相手の背中を見送って、こんなにも他人に素で話したことがあっただろうか、いや人では無いのだが…素の自分を晒しても嫌がったり怒るどころか笑顔を返す相手がおかしくて、たまに人目につかないところで話すくらいなら悪くないのかもしれないと思いながら、ここから近い家に向かって歩いていき)

とりゃーっ！…やっぱり触れねぇか(今までは人は愚か物すら触れられたことが無いため、気にせず腕をズボッとすり抜けさせていたが、もしかすれば相手のように触れられる人がいるかもと思い、着くと人通りが多いこの場所で人混みの中に両腕を伸ばして突進するも、当然誰一人として触れられず、すり抜けては落胆し)

……。
(翌日、学校と家の往復では道順が変わることはなく、昨日と同じ時間に同じ場所を通りかかり、昨日も見た光景を呆れ半分に見ては、相手の横を素通りしようとして)

……。
(翌日、学校と家の往復では道順が変わることはなく、昨日と同じ時間に同じ場所を通りかかり、昨日も見た光景を呆れ半分に見ては、相手の横を素通りしようとして)