現代怪奇譚 (非募)

「 都市伝説は実在する 」
「 人が語れば全ては現実になるんだ 」
「 きみもその被害者というわけだね 」

日常をどこまでも普通に暮らしていた少年は、「 にんぎょひめさま 」という呪いに囚われる。
クラスの女子の間で流行っていたその噂。

「にんぎょひめさまにお祈りすれば、 どんなに難しい恋でも叶うんだって」

「にんぎょひめさま、知らないの？ 恋を叶えたらそれで満足するお化けなんだって、都市伝説ってヤツ。……いやいや、怖くないって。このことばでお祈りするだけで恋が叶うんだよ、知りたい？ だよねー、たしか、えっと……」

「『にんぎょひめさま、わたしの恋を叶えてください』だったかな」


「 ほら、 同じクラスの───さんとか、先輩と付きあい始めたじゃない。あの子もにんぎょひめさまにお願いしたんだって！つーまりー、叶えてもらったひとも本当にいるってこと！！すごくない？！ 」

嘘だと思っていた。そんなはずは無いと思っていた。偶々だろう。元々好き合っていた男女が、おまじないをやったタイミングで付き合い始めただけだ。

「 そうだろうさ、ボクもそう思う 」

「だが、事実叶ったんだ。おまじないのお陰ではなかろうが、 みんなの中ではそれが現実になったんだ。恋が叶ったのはにんぎょひめさまのおかげだって。」

「願いが叶ったから、代償はどこかに求められた。世界の摂理だね 。」

「もしかすると、にんぎょひめさまではない、似たようななにかとおまじないが繋がったのかもしれない 」

「噂が、都市伝説が、にんぎょひめさまを作り上げて現実にしたのかもしれない。」

「わからないよ、でも、ここに事実がひとつ。」

「代償は、はじめに恋を叶えた彼女の、隣の席の君に飛んできた。 理由はない。不運だったのさ。たまたま引き寄せやすい体質だったとか、そんなところだ」
「それでも代償は降りかかる。 叶えられた恋の数だけ、重荷はぐちゃぐちゃに降りかかる。理不尽に、君だけにね 」

声が、出にくくなったのが最初だった。それから次に、目に見えて影が薄くなっていった。話しかけても、気づかれない程に。一通り認識されなくなってから、完全に声が失われた。

理由もわからない、自身が薄れていく恐怖に怯えていたところに現れたのはとにかく美しい少年/少女。目の前で滔々とニヤニヤと語るひと。

「人魚姫と関わりがあるような、ないような呪いだよね、それは。未だ曖昧だ。だったらボクの異能で、繫ぎ止められる」

彼/彼女は『曖昧な噂を、都市伝説を思うままに固定する』異能者なのだそうで。

「ただ、その呪いを曲げるくらいならまだしも、失わせることはできないんだ。そこまで便利な力じゃなくてね。」

「曖昧な記述を、一定範囲内で固定できる力なんだけど、ふふふ。ぽかんとしてるね。」

「噂のふわっとしたところを好きなように弄れるのさ。……人魚姫のおまじない、呪い、ふむ」

「だったらボクは定義する。……ボクは君の呪いをこう再定義しよう」

「『王子様が君のそばにいるその間だけ、呪いは解ける』」

人魚姫よろしく、だ。と彼/彼女は笑う。

「ただし、王子様はボクだよ。操れるのはボクがいる範囲だからね。離れたら呪いは再発する。長時間一人では動けないと思いたまえ。」

「ついでに呼称もそれに沿わせるかな。現実をはっきりさせるためにね。……いいね、プリンセス？ 」

これは、怪しげな探偵と共に、様々な都市伝説に出会うことになる青年の物語だ。

(/初っ端から長々と申し訳ありません！物語設定の文章を置いておきますね。

此方の提供キャラクターの探偵は男性となりますが、喋り方はかわらず大体上記のようなものとなります。地雷等ありましたら遠慮なくおっしゃってくださいませ。変更が可能です。

それでは改めまして、これからよろしくお願いいたします！)

(/トピ立てありがとうございます。そしてこの度はお相手に選んでいただき感謝しております。これからどうぞよろしくお願いしますね！
ロルについてですが此方のロルが終始・小説風・心情ロルが混じりますので、もしよろしければ使用させていただきたく…ロルの長さはその時々で調整致します！

またこちらのトピの>>1も拝見いたしました。話し方など問題ありません！此方のキャラがリアリストで卑屈なキャラとのことですので、探偵さんに振り回されて文句を言う姿が目に浮かびますね。地雷などもありませんのでこのままの探偵さんでお願いします)

(/こちらも終止、心情、小説風を使いがちですし、そのようなロルが大好きなので是非お使い下さいませ！
また当方ロルにムラがあり出先から打つ時などは短くなりがちなのでお許しください……！

それではこの口調のまま作成したしますね。容姿等に希望はありますでしょうか？？怪しい美貌の少年といった感じを想定しているのですが。

また青年君はまさにおっしゃった通り振り回される苦労性といった要素があると嬉しいです。容姿等には希望はありませんのでお好きに作成していただいて構いません！)

(/ありがとうございます…！ではロルは自由にやらせていただきますね！
こちらも日中はムラ気味で短くなりがちですのでお気遣いなく！お互いのペースでいきましょう

怪しい美貌の少年…いいですね！真実をはぐらかされて悶々とする予感がします…容姿など特に指定ありませんのでご自由にしていただいて大丈夫です！

また振り回され役了解いたしました！ちなみにこちらの年齢なのですが、高校生を想定していたのですが相違ないでしょうか？)

(/ありがとうございます…！

了解しました、それでは自由に作成させて頂きますね。
pfは文量はそう書けないのですが、少し遅くなるかもしれないのでお待ちいただけるとありがたいです。

はい、高校生でお願いします。1年の中頃〜2年生始めくらいを考えていました。この辺りはお好みで決めていただければと思います〜！)

(/了解しました！ではこちらもプロフ作成に取り掛かりますね！
ある程度完成させておき、探偵様のpf拝見してから微調整いまします！)

名前/薙原 飛鳥 (ナギハラ アスカ)
性別/男
年齢/不詳、10代半ばの少年に見える。
容姿/少しハネ気味の真っ黒い髪を襟に着く程度に伸ばしている。艶やかで少々クセのある髪質。ツリ目気味の目は大きく、その瞳が占める割合も大きい。ただいつも人を小馬鹿にしたようななんとも言えない笑顔を浮かべているため、怪しい、胡散臭い等評されることが多い。大きな目に通った鼻筋、薄い唇、それから異様に白い肌と浮世離れした美貌の持ち主だが不思議と注目を浴びることは少ない。服装は自身が美少年であることを最大限に意識したものが多い。サスペンダー、どこかのお金持ちな学校の制服らしきものなど。身長は163cm。細くみえるものの身体能力は高い。

性格/とにかく何事にも動じず、泰然自若とした振る舞いが目立つ少年。いつも変わらぬ楽しそうな笑顔を浮かべており、実際その声にもどこか陽気な響きが混じっている。親しい人間にはからかうような、小馬鹿にしたような態度となるが、初対面の人間には人を試すような冷ややかさで接する。怪異で困っている人間に対しては辛辣な態度を取っていたとしても最終的には救おうと尽力している節がある。落ち込んでいる人を慰めるのはかなり苦手らしく、うまい言葉はかけられないが、ずっと側にいる程度の優しさはある。普段適当に見えてできることはとにかく早めにやっておくタイプ。何事にも準備万端で挑みたがる。

備考/年齢不詳、美貌の怪異探偵。探偵事務所と称した割と綺麗な、事務所感は一切ないただの貸家に住んでいる。事件があると感付けば出歩いているが、何もなければほとんど外出しない。やたらクーラー、もしくは暖房の効いた部屋にこもっている。器用なので自炊もできるがそこは面倒くさいのでほぼやらない。
「怪異に関する噂の不確定な部分を好きなように確定させる力」を持っており、危険な噂に巻き込まれた人間を助けることを目的として探偵業を営んでいる。ただ怪異が何らからの形で実体化しなければ使えないため、後手に回りがちで難儀している様子。
相手のことはそれなりにからかい甲斐があるためか気に入っている。完全に巻き込まれただけということで気に掛けもしているようだ。一緒に居ないとまずいので、解決料を払ってもらえて居ないので、という理由で彼を探偵助手に任命して連れ回している。



(/完成しました！！だいたいこんな感じでいかがでしょう、訂正等ありましたら遠慮なくおっしゃって下さい )

名前：霧崎 拓己(きりさき たくみ)
性別：男
年齢：16歳

容姿：身長176cmの細身。運動はしていないためあまり健康そうな体ではない。黒髪を肩あたりまで伸ばしており頭の高い位置でポニーテールにして纏めている。前髪は目に僅かにかかるほどの長さで左分け。顔のラインに沿って左右にひと房ずつ髪を残している。目は切れ長で瞳の色は茶色。無表情でいると気難しそうな顔をしているが、まだ成長途中なので大人からみればそれも愛嬌。学校指定の黒の学ラン姿が基本スタイル。休日には白シャツに赤色のパーカー、藍色ズボンと着飾らない格好を好む。

性格：表向きはよく口が回るお喋りな性格。リアリストを自称し、霊だとか呪いだとかいう類いは一切信じず、何かしらの科学的理由があるはずだと言い張る。しかし肝心の理由は説明できない。その一方で自分に対して自信がなく卑屈な性格でもあり、『自分に価値がないと理解している己こそリアリストである』と拗れた考えを持つ。よく喋るのも自分に自信がないことの表れであるが本人は気づいていない。自信満々な態度の裏に卑屈な人格を抱えるせいか弱い人間の心理はよく理解しており、なんだかんだ困っている人を捨て置けない。ある程度までは自分の無茶を押し通すが、強い押しをされると途端に折れてしまう。故に意思の強い人間にとっては格好のおもちゃである。

備考：一人称『僕』二人称『お前・君』
高校1年の生活も半ばまで来たが持ち前の面倒な性格のためあまり人が寄り付かず、同じクラスに友達が1人いるだけで他の人間とはほとんど喋らない。部活には所属しておらず、曰く｢入りたいと思わない部活に無理やり入っても何も得られないだろ？｣成績は中盤で可もなく不可もなく。運動能力も人並み。家事は一通りこなすことができ文句を言いつつも探偵の身の回りの世話を焼いてしまっている。相手から離れることもできないため言われるがまま探偵助手を引き受けることになる。呪いを受けて1人消え行こうとした時はパニックになり泣き叫んでいた。

(/素敵な探偵をありがとうございます！訂正など一切ございませんので、飛鳥くんにお相手をお願いします！こちらの性格が卑屈なリアリストとのことでしたのでかなり捻くれた性格になりましたがいかがでしょうか…？個性としては強めですので飛鳥くんに合わせもう少し柔らかな性格にすることもできますのでなんなりとお申し付け下さい…！)

(/すごく素敵です……！
性格はこれくらいキツくても全然オッケーです！

ただ一つ、このままでも十分素敵なのですか、わがままを言わせていただきますと、一人称を「俺」に変更いただけないでしょうか。もちろんお相手様の中で「僕」の方がやりやすいのでしたらそのままでも構いません！

ただ探偵さんと一人称が同じなのが少し気になりまして…、いやもうほんと個人的なアレを指摘しちゃって申し訳ないです……！)

(/ありがとうございます…！気に入っていただけて良かったです。一人称変更問題ありませんよ！どうせなら凸凹の2人の方が楽しいですしね！
では一人称『俺』二人称は基本的に『お前』でいかせていただきます！)

(/あっあっ、本当にありがとうございます！わがままを聞いてくださって…！！


そろそろ始めたいと思うのですが、どこから開始致しましょうか？出会ってしばらくして、探偵事務所という名の家に拓巳君がやって来たところから〜くらいが良いかな、と思ったのですが。
にんぎょひめさまのお話しは、ある程度慣れてきてから過去編とか回想編としてやれればいいなぁと考えていたりします、初っ端からハードかな〜、と。どうでしょう？？)

(/いえいえ、お陰様でよりキャラが固まりましたのでむしろありがとうございます！

そうですね、出会ってから初訪問くらいがいいと思います、賛成です！まずはお互いのペースを知るという意味で日常のシーンがよろしいかと…！ハードな所はご提案していただいた通り過去編か怪奇の一端で無理やり回想させられる…とかでも良いかなとか思っております)

ようこそ、辛気臭いプリンセス。ここがボクの探偵事務所だよ。
(スタスタと、相手を振り返ることも無く無言でしばらく歩いてたどり着いたのは、少し寂れてはいるがそれなりに広い一軒家。手入れはほとんどされていないらしく雑草はボウボウに生えているが元はそれなりに豪華な家だったのだろう、と思う。自分はその辺気にしないので、どんどん汚れていくのだが。と疲労からぼんやりと思考して。立ち止まってすぐに芝居掛かった仕草で振り返り相手の様子を伺えば、当然といえば当然か、昨日はひどく錯乱していたし、呪いは一旦の解決を得たとはいえ、ボクがいなければ再度顕在化するのだ。とはいえ、気を遣った態度などとは自身が無縁なことは理解している。これから手伝ってもらう様々なことを考えるとシャキッとしてもらわねばならないし。挑発するようにニヤニヤと笑いながらそう声を掛けて)

(/ロルはこんな感じでよろしいでしょうか？？何かありましたら遠慮なくどうぞ！

怪奇に過去を喚起されるっていうのはすごくいいですね…！ぜひそんな感じでいきましょう！)

今のお前の発言で言いたいことが3つある。1つ、辛気臭いは余計だ。2つ、俺は男だプリンセスじゃないって言っただろ。3つ、こんな看板もないような場所探偵事務所じゃない、これは家だ！……俺はこれからこんなとこで暮らすのか…
(ニヤけた笑顔を浮かべる相手にまずは三本指を突きつける。指折りしながら自分の道理にあわない箇所を指摘してやった。何がプリンセスだ。そもそも何が人魚姫の呪いだ、非現実的で理不尽なことがここ2日は多すぎる。目の前に広がる寂れた家とその前にたつにやけ顔の少年を交互にみた。これからこいつと暮らして行かなければならないのだ、こいつによれば永遠に。あまりの理不尽に泣きたくなる、いや実際昨日泣いたわけだが。呪いだのおまじないだの、馬鹿げた人間の妄想だと豪語ていたのに、昨日自分自身に明確に形となってそれは現れたのだ。藁をも掴む思いだったところの藁がこの少年、どうやったかは知らないがとりあえずは自分の異変は止まった。それは事実だ、受け入れがたくはあるが。異能だなんだ説明されたが正直さっぱり分からないし非現実的にも程がある。未だに昨日のことは夢じゃないだろうかと考えながら、項垂れた目で目の前にいる少年を見つめていた)

(/全く問題ありません！こちらこそこんなロルで大丈夫でしょうか？

ぱっと思いついた発想ですが気に入っていただけて良かったです…！程よいタイミングでシリアス展開もいれていきましょう！)

はは、そうかもしれないねぇ
(妙に理屈っぽいのが可笑しくて目を細めてくすくすと笑い声をあげ。その言葉を聞きこそすれど何か出来ることがあるわけでもない、曖昧な答えを返してからポケットに入っていた鍵を取り出してガチャガチャと鍵を開けて扉を開く。「さっさと入りたまえよ、少しだけ散らかっているけど許してくれ」言いつつもただの一軒家だし特に案内する気はない。うちに帰ると一気に気が抜けてしまい一つあくびをして、相手が付いて来ているかどうかも気にせずリビングに入っていき。リビングの中はそれなりに散らかっている。部屋の壁が見えないほどに本棚が置かれていて、その中にはファイリングされた都市伝説の資料が沢山詰まっているのだが、必要なものを取り出したり何たりする時に面倒くさくて片付けないことが多々あるのだ。今日はまだいい方で、寝ていると紙束に埋もれるようなこともたまにある。定位置のソファに置きっぱなしだった何枚かの紙をテーブルの上に放り投げ、そのままソファに体を預けてもう一つ欠伸をし)

(/全然問題ありませんよ〜！

そうですね、一通り日常編が終わったらまた怪異を出したいと思います…！それでは背後は一旦失礼します。何かありましたら遠慮なくお申し付け下さい！)

ったく、聞いちゃいねぇな…―――これのどこが『少しだけ』散らかってるだ、カラスでももっと整頓する。これじゃ家じゃなくてそれこそ巣だろ。それで？俺はここで何して生活していきゃいい？
(自分の言葉を受け流され悪態をつきつつ家の中へと入る。しかしその中は家と呼ぶにはあまりにも生活感のない空間に一瞬リビングへ入る足を止めてしまった。所狭しと並ぶ本棚に詰め込まれた資料達、床に散らかるのもそれらの類か。自分が座るためにそこに置きっぱなしになっていた書類を退かすのをみると、あれは片付けられない奴がやる行動だとため息がもれる。床に散らばる紙を適当に拾い上げてみると、胡散臭い都市伝説について纏められたものだった。怪訝そうに眉をひそめつつ周囲に散らばる他の書類も見てみるがどれも内容は同じ、非現実的な現象についてばかり書かれている。早くも頭が痛くなってきた。悪態をつく言葉は止まらずペラペラと喋り続けながら眠たそうにして横たわる相手の傍に近寄り見下ろして)

(/はい、ではこちらも背後は失礼しますね！改めましてよろしくお願いします…！)

よく喋るね、プリンセス。不安なのかい？
(眠気を堪えて長い睫毛に縁取られた目をパチリと開く。相手がこちらを不遜な表情で見下ろしているのが見え、よいしょっと上体を起こしながらもからかうような言葉を告げ。知り合って間もないが、かれのよく回る口がある種の自己防衛であると言うことはなんとなくわかる、それがどうにも愉快でたまらないのだ。言いながら相手の目をじいっと見つめて鬱蒼とした微笑みを漏らし。とはいえここでいつまでもからかって遊んでいるわけにもいかない。やってもらうべきことはいくつかあるのだ、反論の間を与えることなくすぐに再度口を開いて)
やってもらうことはそれなりにある。まず君からボクは解決料をもらっていないんだよ、言っておくけどそれなりに高額だから高校生には払えるものではないし、……親に相談とか無意味っていうのは、リアリストな君ならわかっているだろう？
(明らかに、これから何かを吹っかけるといった体で、がくんと首を傾げて人形じみた美しい笑顔を浮かべて囁くように語りかけ)

っ、！――――……あんな馬鹿げたこと俺は信じたくないが、…実際にこの体に起こったことを否定するほど馬鹿じゃない。俺をあのまま消さなかったのは、俺に利用価値があるからだろ？っ、――で？何が望みだ？金以外で俺にその高額な解決料をどう払わせる？
(『不安なのか』その言葉は自身が必死に取り繕い隠そうとしていた心理そのもので、図星を突かれ反論しようと口を開けるがその前に相手の言葉が続く。悔しげにこちらを揶揄い遊ぶ目を睨み返すが負け犬の遠吠えに等しい。口さえ回して静寂を潰し続ければ大抵の人間は自分に圧倒されて閉口するのに、こいつときたら化けの皮を見透かしてくる。しかもこの短期間で、だ。こいつの側を離れることができないのに、早くも相手のペースに乗せられがちで先が思いやられる。だがかといって、こいつを振り切って逃げることもできない。この不気味な資料に囲まれた部屋の居心地も最悪だが、1人になれば先日の恐怖をまた繰り返すのだ。誰にも認知されず、誰にも知られぬまま声さえ出せなくなってただ静かに涙しか流しながら存在が消える…あの時の瞬間を思い出し悪寒が走って頭を振った。もうどうせ後戻りもできない。この馬鹿馬鹿しい場所で、馬鹿げた相手と暮らしていかねばならないのだ。決意をしても相手がガクンと首を人形のように傾げると不安が胸に襲いくる。それを振り払うようにまたよく喋る口を動かしながら答えを誤魔化す相手を睨んだのだった)

いやいや、ボクは怪異に困っている人は凡そ助けるよ？無償でとはいかないだけさ。
(相手の動揺っぷりが楽しい、そう思いっきり顔に出てはいたものの、自身にとって大事なところにはきっちりと反論してから立ち上がり。彼の隣を素通りして資料の詰め込まれた棚から一冊のファイルを取り出す。ファイルの中にももちろん、入れられるだけの紙が限界まで収納されているため目当ての資料を取り出すのには時間がかかる。どこに収納したかはなんとなく覚えているので、このファイルであっているはずだが、と思いつつも不意に面倒になったので中身をぶち撒けて散らばった紙を物色。漸くお目当ての紙を見つけて一枚手に取って。)
これからやってもらうのは、端的に言えばボクの助手だ。君に利用価値があるから助けたわけではないけれど、おそらく結構向いている。拒否権はないけどね？幾らか事件に付き合ってくれれば解決料はチャラにしよう
(先日も錯乱はしていたが、自暴自棄な行動に走ってはいなかった。ああなると大抵の人間はもっとおかしくないなるものなのだが、案外肝が座っているのかもしれない。虚勢を張り続けられるだけで役にはたつだろう。なんせ自分は少年の姿だ、それなりに目立たないようには細工しているものの、話したり接触したりすればどうやったって印象に残る。自分で言うのもなんだが、忘れられにくい顔立ちをしているとも思う。噂やら都市伝説やら、身内で語られることの多い情報収集には向かないのだ。手に持っていた紙、すなわち雇用契約書を相手に差し出して)
さぁ、サインしたまえ