探偵さん 2018-10-15 14:31:19 |
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「 都市伝説は実在する 」
「 人が語れば全ては現実になるんだ 」
「 きみもその被害者というわけだね 」
日常をどこまでも普通に暮らしていた少年は、「 にんぎょひめさま 」という呪いに囚われる。
クラスの女子の間で流行っていたその噂。
「にんぎょひめさまにお祈りすれば、 どんなに難しい恋でも叶うんだって」
「にんぎょひめさま、知らないの? 恋を叶えたらそれで満足するお化けなんだって、都市伝説ってヤツ。……いやいや、怖くないって。このことばでお祈りするだけで恋が叶うんだよ、知りたい? だよねー、たしか、えっと……」
「『にんぎょひめさま、わたしの恋を叶えてください』だったかな」
「 ほら、 同じクラスの───さんとか、先輩と付きあい始めたじゃない。あの子もにんぎょひめさまにお願いしたんだって!つーまりー、叶えてもらったひとも本当にいるってこと!!すごくない?! 」
嘘だと思っていた。そんなはずは無いと思っていた。偶々だろう。元々好き合っていた男女が、おまじないをやったタイミングで付き合い始めただけだ。
「 そうだろうさ、ボクもそう思う 」
「だが、事実叶ったんだ。おまじないのお陰ではなかろうが、 みんなの中ではそれが現実になったんだ。恋が叶ったのはにんぎょひめさまのおかげだって。」
「願いが叶ったから、代償はどこかに求められた。世界の摂理だね 。」
「もしかすると、にんぎょひめさまではない、似たようななにかとおまじないが繋がったのかもしれない 」
「噂が、都市伝説が、にんぎょひめさまを作り上げて現実にしたのかもしれない。」
「わからないよ、でも、ここに事実がひとつ。」
「代償は、はじめに恋を叶えた彼女の、隣の席の君に飛んできた。 理由はない。不運だったのさ。たまたま引き寄せやすい体質だったとか、そんなところだ」
「それでも代償は降りかかる。 叶えられた恋の数だけ、重荷はぐちゃぐちゃに降りかかる。理不尽に、君だけにね 」
声が、出にくくなったのが最初だった。それから次に、目に見えて影が薄くなっていった。話しかけても、気づかれない程に。一通り認識されなくなってから、完全に声が失われた。
理由もわからない、自身が薄れていく恐怖に怯えていたところに現れたのはとにかく美しい少年/少女。目の前で滔々とニヤニヤと語るひと。
「人魚姫と関わりがあるような、ないような呪いだよね、それは。未だ曖昧だ。だったらボクの異能で、繫ぎ止められる」
彼/彼女は『曖昧な噂を、都市伝説を思うままに固定する』異能者なのだそうで。
「ただ、その呪いを曲げるくらいならまだしも、失わせることはできないんだ。そこまで便利な力じゃなくてね。」
「曖昧な記述を、一定範囲内で固定できる力なんだけど、ふふふ。ぽかんとしてるね。」
「噂のふわっとしたところを好きなように弄れるのさ。……人魚姫のおまじない、呪い、ふむ」
「だったらボクは定義する。……ボクは君の呪いをこう再定義しよう」
「『王子様が君のそばにいるその間だけ、呪いは解ける』」
人魚姫よろしく、だ。と彼/彼女は笑う。
「ただし、王子様はボクだよ。操れるのはボクがいる範囲だからね。離れたら呪いは再発する。長時間一人では動けないと思いたまえ。」
「ついでに呼称もそれに沿わせるかな。現実をはっきりさせるためにね。……いいね、プリンセス? 」
これは、怪しげな探偵と共に、様々な都市伝説に出会うことになる青年の物語だ。
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