＿＿ All I need is you. (1:1/BL)

ただの、好意。後からそう理由付けることは、できるんでしょうか。
(相手の言葉はまるで自分が許されているような、逃げ道を作ってくれているような曖昧な言葉で。けれど、過去に自分の心が大きく揺らいでしまったことも、それを笑い話にされて傷を負ったことも事実だった。それを、後から“ただの好意だった”と言ってしまっていいのだろうか。続けた言葉は、問いかけというよりは己自身に語りかけるようなものだった。言ってから俯き数秒唇を噛み締めて、そのまま立ち上がる。)ありがとうございました。こういう診断は初めてだったから緊張したんですけど、学校の先生と話してるような感じで気持ちが楽でした。(荷物を入れていた籠からコートとリュックサックを取ると、一度顔を上げてから深く頭を下げて。家に帰って、診断はどうだったかと聞かれるに違いないけれど、これ以上自分をひらくことはできそうになかった。くるりと踵を返すと、診察室を出ようと扉に手をかけ)

それは自分次第、誤魔化してしまえばそれでお終いだからさ。
( 言葉を紡ぐも、聞く耳を持たない様子で思い詰めた表情をする相手に子首を傾げて興味深げに見つめ。彼が目の前で一体何を思い、何を感じたのだろうかと推測していれば突然椅子から立ち上がり頭を下げた彼を凝視して。「...診察の時間まだ終わってないけど、大丈夫？」白衣を膜って腕時計を確認するも約束されている時刻まで余裕はある。まるで心の内を悟られぬようにと慌てた仕草でこの場から立ち去ろうとする彼だが、医者の己が引き止める権利などある筈がなく、比較的落ち着いた声色で確認し。体制を起こしてひらりと片手振れば、通常通り医者らしからぬ振る舞いで見送ろうとし。)
良かったらまた来てみなよ。電話予約ならもっと時間の都合も合わせやすいし、先生いつでも待ってるからさ。あ、精神科医なら他にも沢山いるからな。女の先生とか。

ありがとうございました。……また、来ると思います。
(扉を開け、部屋を出る前に振り返る。相手の言葉は依然として軽く、そんなものか、と複雑な気持ちになる。悩みがあると分かっている人間を前にして、容易く好奇心に駆られる友人のように聞いて欲しいわけではなかったが、紙風船に息を吹きかけるような軽さで“カウンセリング”されるものだとも思っていなかった。再度頭を下げると、その後会計を待つべく先程座っていたソファへ腰掛けて)

(/初回は本当に軽くしてしまいましたが、このあと家に帰宅して両親からきちんとカウンセリングしてもらうようにと叱責を受けて再度来院……というようなのを考えています。それで問題無ければ、あいだに各々一人の時間を挟むか、次の診察の日へ飛ぶかはお任せします!)

( そそくさと逃げるように扉を閉めた彼の背中を見つめながら途端に静かになった相談室で溜息をひとつ吐き出す。あの様子を見るに恐らく己は好印象ではなかったのだろうが、医者以前に己も人間だ。人間同士相性も存在して、当然ボタンをかけ違えるように上手く事が進まない診察だってこれまでに何度か経験した。日々何気ない会話を重ねて患者から本懐を吐き出そうとするまで気長に待とうとする己の手法は他の精神科医から見れば良い物と認められる事の方が少なく、時間とお金が惜しい患者だって居るだろうからと大抵の場合非難される。カウンセラーの肩書きを手に入れてからずっと独自の方法で仕事を続けて来たがいい加減考えを改めるべきなのか、頭を掻き毟りながら机につっ伏して項垂れて。)

( /ご丁寧に有難う御座います。了解致しました、それでは数日後に再度来院される形でお願い致します。)

(数日後、同じ待合室で今度は名前だけ聞いたことのある少年漫画を読んでいた。何故か始めの巻が欠けていたので話はいまいち理解出来なかったが、そもそも、頭の中で考えているのは両親に言われた言葉だった。この先付き合いのある人じゃないのだから、話すだけ話してしまった方がいい。その医師一人に話したところで、周囲の目が変わるわけじゃないのだから。……そんなことを言う両親の表情は、風邪をひいた時の自分を心配するのと同じ顔をしていた。結局、それをしこりのように考えているのは両親そのものなのに。どうせ話さなければいけないのなら、前回布石を打っておいたあの医師に話す方がせめて気が楽だろうかと考えてそのまま予約したが、やはり女性の方が良かっただろうか。そんなことまで悶々と考えては、はあ、と浅い溜息を吐いて、全く台詞を読まないままに本のページをひとつ捲った。)

( 本来ならば医師達は昼食を取るように設けられた正午前の休憩時間、自分の事になると食生活までずぼらな己は一人屋上で煙草を吸っていた。フェンスに凭れ掛かる様にして身体を預け、今朝ラジオで耳にした通り今にもにわか雨が降りそうな色褪せたグレーの空を背景にそっと息を吐き出す。ふと思い出した様に腕時計に目をやれば時刻は次の診察時間へと迫っており、慌てて吸殻を携帯灰皿へと放り込み蓋をすると、足早に階下へと続く階段を駆け下りて。直前に書類を確認せずともこれまでに担当した患者の容態とカルテは全て頭に叩き込んである。しかし来院した患者を医師が待たせる訳にもいかず。今朝院内の予約リストに目を通した際手持ちのメモに書き写した名が数日前に一度だけ相談を受けた男子高校生だった事は明らかであり、前回のカウンセリングでは彼自身有意義な治療を受けたという認識はないであろうが、数日後に担当医の変更希望も出さず再び予約が入った現状から少なくとも己は悪印象ではなかったのだろうかと考えて。態々相談室に戻ってから呼び入れるのでは少々面倒だと、精神科病棟の待合室に直接顔を出してはちらほらと椅子に座って診察を待つ数人の中から漫画雑誌に目を落としたままの彼の姿を見つけて。)
…いたいた、立花くん。早速お待たせしちゃって悪いな、第3相談室まで行こうか。

うおっ、ビビったー……。
(前回よりも些か長く待っているような気がして、袖を少し捲り上げ腕時計を見る。ちょうど昼食時だな、なんて考えてしまうと、それまで感じていなかった空腹が僅かに顔をのぞき始めた。意味無く漫画のページを捲りながら呼ばれるのを待ち遠しく思っていると、予想していなかった所から声を掛けられて不意を突かれ。肩を跳ねさせ思わず素を出してしまうと少し気まずそうに頬を掻き、視線を合わせないまま漫画をラックに戻して。)あー、よろしくお願いします。(荷物を持って立ち上がると、相手のあとを追うように相談室へ向かい。「どうしてあっちから？」と、相手が来た方をちらりと振り返ってから不思議そうに首を傾げ)

( 待合室にて黙々とページを捲る他の患者の読書の妨げになってはいけないと配慮して声を落としたつもりだったのだが、判りやすく身体を強ばらせ無防備な声を上げた相手に不覚にも笑みを零し「そんな驚かなくとも」出会って間もない己にはよそよそしい態度しか示さなかった彼の素を垣間見た様で愉快に口角をにい、と吊り上げ得意げに相手を見据え。相手の問い掛けを受けて「んー…ちょっと屋上に用事があってな」流石に勤務時間にも関わらず呑気に煙草を吸っていたとは言えず、頬を掻きながらそれとなく誤魔化すも仕事着には微かに煙草の香りが染み付いていて。白衣を翻して相談室へと向かう最中、資料室からファイルを抱えて顔を出した看護師に会釈をし、相談室の前まで足を進めれば女性をエスコートするかの様な気取った動作で扉を開け先に中に入るよう促して。)

( /大変お待たせしてしまい申し訳ありません、仕事でトラブルが発生してしまい中々纏まった時間を取れずにおりました…! まだいらっしゃるでしょうか。)

( /何かの弾みで下げボタンを押してしまっていたようです、レス消費申し訳御座いません。)

……そんな露骨に笑わなくても。来ると思ってた場所以外から声を掛けられれば、誰でも驚きますよ。
(楽しげに口端を上げるのを、目を細めジトリと流し見てから相手の言葉を真似るように。問いかけの答えはイマイチ煮え切らない口調で、あまり追求しないのだろうかと考えては、「屋上、出られるんだ」と独り言のように返すだけに留め。そのまま中へ入るかと思いきや自然な動きで行動を促されてしまうと、つい背筋を正し。どう対応すれば良いのか分からず、「あ、ありがとうございます」とぎこちない口調と動きで礼を言ってはそそくさと中へ入り、前回と同様に荷物を籠の中へ。相手の登場がイレギュラーだったおかげか、ここへ入るまでは随分とリラックスして話せたような気がした。けれど、これから話すのは自分の核に触れるようなことであって、それを考えると一気に体が重くなるのを感じる。とは言え、今度はちゃんと話して来い、と診察費用をくれた両親の顔を思うと後戻りすることも出来ず。ふぅ、と小さく息を吐けば、相手が座るであろう場所に対面するように置かれている椅子へゆっくりと腰を下ろし)

(/最近風邪やインフルエンザも流行っていますので、体調を崩されたわけではないと分かっただけで安心致しました! 仕事やプライベートでの多忙は仕方の無いことなので気にしないでください。レス消費もお気になさらず、です!)

( 機嫌を損ねてしまったかと表情から笑みを消して、大人よりも敏感な年頃である彼に悟られぬよう「患者は立ち入り禁止な、入院患者なら許可さえ貰えれば出られるけど」淡々とした口調で当病院の決まり事を告げて。単なる診察の緊張から来るものなのかは本人にしか判らないが相談室の敷居を越えると同時に前回同様体を強ばらせる相手を横目で気に掛けつつ、己も椅子に腰を下ろして一息つき。ちらりと腕時計を確認し時間に余裕がある事を確かめれば改まって足を組み直して。)
そいで、今日はどうしようか。何か相談したい事があるならこの場で聞くけど。

( /優しいお言葉に頭が上がりません…! 匿名様もこれからの季節体調を崩されぬようお気をつけ下さいませ。仕事は無事復帰致しましたので再びお世話になります。)

前回、恋愛感情について聞いたんですけど。
（飽くまで淡々と、冷静に、まるで他人の話をするように。そう思いながら口を開くと、一旦口を閉ざし。相手に倣うように自分の腕時計を見て、初回が30分だったということは今回はもう少し短いのだろうか、と考えてから捲くった袖を戻し。「俺、小学生の頃に幼馴染のことが……多分、好きになったんだと思うんです。……同じ、男の」時間に後押しされるように話の核の部分を告げると、言い切ってから気まずくなり自分の足元を見つめ。「すみません、先生も男なのに。本当は女性の方が良いかとも思ったんですけど、」そこまで言ってから再び口を閉ざすと、どんな答えと反応が返ってくるのかと不安になりながら、膝に肘をついて額を支えるようにして）

（/いえいえ。こちらこそお気遣いありがとうございます! お仕事が落ち着いたのなら良かったです。改めてよろしくお願いいたします。）

（/進めづらい展開にしてしまったでしょうか……。もし、途中で相性が合わないと感じられたのならば、一言頂ければそれで構いません。折角練り込まれた設定ですし、新しくお相手様を探して進められるのでも問題ありませんので！）