精神科医 2017-09-23 17:53:28 |
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( 本来ならば医師達は昼食を取るように設けられた正午前の休憩時間、自分の事になると食生活までずぼらな己は一人屋上で煙草を吸っていた。フェンスに凭れ掛かる様にして身体を預け、今朝ラジオで耳にした通り今にもにわか雨が降りそうな色褪せたグレーの空を背景にそっと息を吐き出す。ふと思い出した様に腕時計に目をやれば時刻は次の診察時間へと迫っており、慌てて吸殻を携帯灰皿へと放り込み蓋をすると、足早に階下へと続く階段を駆け下りて。直前に書類を確認せずともこれまでに担当した患者の容態とカルテは全て頭に叩き込んである。しかし来院した患者を医師が待たせる訳にもいかず。今朝院内の予約リストに目を通した際手持ちのメモに書き写した名が数日前に一度だけ相談を受けた男子高校生だった事は明らかであり、前回のカウンセリングでは彼自身有意義な治療を受けたという認識はないであろうが、数日後に担当医の変更希望も出さず再び予約が入った現状から少なくとも己は悪印象ではなかったのだろうかと考えて。態々相談室に戻ってから呼び入れるのでは少々面倒だと、精神科病棟の待合室に直接顔を出してはちらほらと椅子に座って診察を待つ数人の中から漫画雑誌に目を落としたままの彼の姿を見つけて。)
…いたいた、立花くん。早速お待たせしちゃって悪いな、第3相談室まで行こうか。
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