夕立 2017-07-16 02:45:57 |
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>12 笛吹 瑛
(長い睫毛が僅かに忙しなく揺れるのをじっと見つめること暫し。向けられた人当たりの良さそうな笑顔が一瞬、ほんの一瞬だけ陽炎のようにゆらめいて見えたのは、容赦なく照り付ける陽光の悪戯だろうか。違和感とも呼べないような何か。それは正体を掴む前に多分に熱気を含む大気中へと霧散していき、宙ぶらりんになった思考が彼の声によって引き戻される。どうやら彼には祖父母との交流があるらしく、そう広い町ではない事を思えばさもありなん、といったところか。一体どんな接点なのかという疑問は残るものの、何にせよつい先ほどの自身の対応が失礼に当たることは分かる。現在祖父母の家でお世話になっているのは、言わば遠野(うち)の我儘。だからせめて迷惑をかける事だけは避けなくてはならない。それは電話をかけてきた父が、出張に旅立って行った母が、唯一求めてきた事でもあるのだから。気を引き締めるように軽く唇を引き結んでから「高倉のお家は母の実家で、わたしは孫の遠野紗綾と申します。遠野物語の"とおの"に、紗綾型…絹織物の"さあや"、です」と自己紹介を述べる。それから非礼を詫びるために頭を下げようとしたところで、日傘を手にしたままだった事に気付き、慌てて畳めばぺこりと頭を下げて)
……その、申し訳ありません。わたし、祖父母のお知り合いの方に失礼な態度を…。
(/ありがとうございます!こちらも背後は一旦控えさせていただきますね。何かありましたらお声掛けくださいませ!)
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