語り部 2016-11-11 07:32:53 |
通報 |
>魔女さん
…女神様は、弱くとも善行を重ねる者を見捨てはしませんから。
(開けた野原に身一つでたどり着き見上げた満点の星空、その一つ一つが手の中に集まる様に銀貨へと変わり降り注いだあの日の女神様との出会いは自分の中でもとても特別な記憶で。けれど地上から幾億の星々が望めるのと同様に月からも地上は広く見渡せるはず、その中で女神様に見出してもらえたという事実だけで己にとっては身に余る慈悲、だからこそ女神様からの愛などと見えないからこそどこまでも傲慢に求められてしまうものを肯定する気にはなれず。少しだけ困ったように笑みを浮かべてから相手の言葉に応え、そっと視線を空に向ければ星ひとつない暗い空が望めて。星が降ったあの夜と同じ空のはずなのに星がないだけでその暗さは深く恐ろしく、僅かに唇を噛み締めてから相手に向き直るとその傍へと近寄って、胸元に軽く手を当てながら一礼をすると同行への誘いに薄く笑みを浮かべながら答えて。)
…はい、喜んで。せめて命を散らすなら女神様の傍、満点の星空の下で。…グリムの兄弟様達にとって私が不要になったのだとしても、私の命を拾って下さったのは女神様です。拾って頂いた命をその恩人に断りなく捨てるなんて不作法、私にはとても出来ませんから。
>死神さん
…何が、なんて具体的なものはありませんよ。ただ死神さんの温かさに、何となく言いたくなってしまっただけです。
(抱えられたことで視点が高くなり見通しが良くなってもフードの隙間から覗くのは変わらぬ瓦礫ばかりの道と火薬と肉の焦げる様な匂い、それでも体を支えてくれる温かさや身を覆ってくれるマントの存在のお蔭て一人きりでいた時よりも随分と気分は軽くなっていて。ふとフードを深く被せる様に引く相手は一体どんな景色を目にしながら歩んでいるのか、その気遣いで視界を塞がれた己には布越しに感じる死臭だけでもその濃さでどれだけ凄惨なものなのか位想像がつき。死神、といくら死に近い存在を司っていても死臭に慣れるだなんてきっとないのだろう、気遣いを相手から受けるばかりで何も返せていない己だがせめて自身が安堵した生きた人間の温もりを相手にも触れさせようとするように肩に添えていた手をそのまま首に滑らせぎゅっと軽く抱きしめながらフード越しの額を相手の頭に寄せて。そのまま先程の相手の問いかけにあくまでそれと指摘してしまわないような曖昧な言葉を返すとそっと目を閉じ、服越しに仄かに伝わる相手の体温を感じて。)
トピック検索 |