本当は怖いグリム童話【3L】【人数制限】

本当は怖いグリム童話【3L】【人数制限】

語り部  2016-11-11 07:32:53 
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──御伽の国は、グリム兄弟が築いた国。

御伽話を演じていない時の国民たちは、グリム兄弟に生み出された同じ血の通う仲間として、それは仲よく暮らしていました。


──御伽の国は、グリム兄弟が築いた国。

だから、誰かが本を読んでいないとき、グリム兄弟自身がその中にひっそり現れるのだって、実は当たり前のことでした。

御伽の国に暮らすだれもが、創造主たるグリム兄弟を愛してやみませんでした。



──御伽の国は、グリム兄弟が築いた国。


そして、御伽の国を滅ぼしたのも、

他ならぬグリム兄弟だったのです。



>>1 もっと詳しいお伽話【世界観】
>>2 生き残った国民たち【募集枠】
>>3 国民たちの尋ね書き【プロフ】
>>4 滅んだ御伽の国の掟【規約文】


──本を開くまで、暫しお待ちを。




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  • No.1 by 語り部  2016-11-11 09:10:53 



【4節から成る、最初で最後の、
  グリム兄弟が登場する御伽話】



──御伽の国は、グリム兄弟が築いた国。

かつて酷く貧しかった兄弟は、夜な夜な紡いだ物語を文字におこして本を編み、血の滲むような努力の末に『グリム童話』として出版。
たちまちのうちに、世界中で知られる童話の王様になりました。

グリム童話の生き生きとした物語には、子どもも大人も男も女も、皆が皆夢中でした。
それもそのはず。
物語の登場人物、御伽の国の国民たちは皆、本の中で本当に生きていたからです。

シンデレラの継母と白雪姫の継母は、娘たちに本当は優しく、お互いにも大の仲良し。
歳上のお姫様たちにぞっこんな兄ヘンゼルに、グレーテルはたいそうやきもき、そんな彼女を王子様たちは微笑ましそうに見守ります。
赤ずきんのおばあさんを食べる役の狼は、ブレーメンの音楽隊の晩餐会のお客様さま。

主人公も悪役も、貧民も王族も、人か動物かも関係ない。
御伽話を演じていない時の彼らは、グリム兄弟に生み出された同じ血の通う仲間として、それは仲よく暮らしていました。



──御伽の国は、グリム兄弟が築いた国。

だから、誰かが本を読んでいないとき、グリム兄弟自身がその中にひっそり現れるのだって、実は当たり前のことでした。

国民たちは兄弟を崇め、ふたりのために皆で建てた立派なお城をプレゼントしてやりました。
グリム兄弟は、たびたび現実の世界からこのお城にやって来ては、自分たちを一躍人気作家にしてくれた愛しい我が子たちのために、豪華なパーティーを開いたものです。

だれもが幸せでした。御伽の国に暮らすだれもが、創造主たるグリム兄弟を愛してやみませんでした。
だから、あの晩起こったことを、だれも予期できなかったのでしょう。



いつものように、御伽の国じゅうの国民たちが、グリム兄弟に招かれてお城のパーティーに集まりました。
御伽話の主演俳優たちだけでなく、小人や妖精、町民、村民、森の獣や神様たちまで。
とにかく、グリム童話に出演するありとあらゆる国民たちが全員招待されたので、大広間には入りきらず、パーティーは城の中庭で行うことになりました。

本の向こうの読者たちを楽しませる日々の苦労を互いにねぎらう、楽しい楽しい晩餐会でした。
たらふく食べて、心行くまでお喋りして………

そんな時です。
先ほどから姿の見えなかったグリム兄弟が、城の3階のテラスから不意に姿を現しました。
何やら奇妙な服に身を包んでいます。
御伽の国の民たちは、まったく見たことがなかったので、それが防護服だとわかる者はだれひとりいませんでした。
弟の方の顔は、少し青ざめているようです。

いつのまにあんなところに? 何の話を始めるのだろう。
無邪気にこちらを見上げる国民たちに対して、グリム兄弟の兄の方は、ひとこと、ふたこと、挨拶したあと、声も高らかに言いました。

「ここにいる皆を、心から誇りに思う。
 御伽の国に栄光あれ!」

そして、何やら不気味なマスクを弟とともに付けると、大きな薔薇の花束を中庭に放り投げました。

ただの薔薇にしては、落ちるのが随分早い──
だれかがそう思ったほんの数瞬後、そこにはすさまじい爆音と、衝撃と、焼け付くような暴虐な光が、辺り一面に爆ぜていました。

『グリム童話』の世界観に、決してあるまじきもの。
花束に仕込まれていたそれは、だれかを殺すために造られた、超威力の爆弾でした。

妖精も、魔女すらも、まったく異なる世界からもたらされたその脅威の殺人兵器に、逆らうことができませんでした。
花束が落ちたところにいちばん近かった者たちは、御伽話では決して描写できないような、見るも無残な有様になりました。
爆弾で砕け散ったテーブルや椅子は、巨大な空飛ぶ瓦礫になって国民たちを襲いました。
いちばん遠い、城の壁に近かった者は、吹っ飛ばされた仲間の体に衝突された勢いで、壁に叩きつけられました。

たった1発の爆弾で、夢の場所だったグリムの城は、阿鼻叫喚の真っ赤な地獄絵図に変わり果ててしまったのです。

……それでは、グリム兄弟は、かつて自分たちを貧困から救った国民たちを、皆殺しにしたのでしょうか?
違いました。
あれほどの不意の大爆発に巻き込まれながらも、生き残った者たちはわずかながらいたのです。
たまたま物陰にいて、または寸前に中庭から城の中に逃げ込んで、あるいは咄嗟に仲間に庇われて。

彼らも多少は怪我を負いましたが、どうにか命に別状はありませんでした。
ただ、奇襲があまりに突然すぎて何が起きたのかわかりませんでしたし、目の前に広がる焼け焦げた惨状は、彼らの理解を超えていました。

それでも、身を隠していたテラスから再びこちらを見下ろした、グリムの兄の冷酷なまなざしで、彼らははっきり知ったのです。


──御伽の国は、グリム兄弟が築いた国。

それなのに、他ならぬグリム兄弟が、
たったいま、自分たちを皆殺しにしようとしたということを。



創造主グリム兄弟が、何故あんなおぞましいことをしたのか。
そのわけもわからぬまま、生き残った者たちは、グリムの城から命からがら逃げ出しました。
ところが絶望的なことに、一夜のうちにして、御伽の国全体も変わり果てていたのです。

暗雲が垂れこめた空には巨大なドラゴンが舞い、ゾンビや亡者たちが街々を破壊して周り、機関銃やチェーンソーを持った骸骨兵たちが常に辺りをうろついている。
『グリム童話』の世界観とはまるで異なる、世紀末めいたそれが、世界を覆い尽くしていました。

そして、逃亡の生活をほんの数日送るあいだに、生き残った者たちは、先ほどのドラゴンや兵士たちがグリム兄弟の手先であり、自分たちを探し出して始末する命令を出されていることを知ったのです。

──御伽の国は、グリム兄弟が築いた国。

逃げども、逃げども、グリム兄弟の魔の手は、生き残った者たちを永遠に追い続けることができるのは明らかです。
それでも尚逃げ続けるか、覚悟を決めて戦うか。
生き残った者たちが選ぶ道は、ふたつにひとつしかありません。


かくして、生き残った御伽の国の民たちの、グリム兄弟に狙われ続ける絶望の時代が、始まってしまったのです。


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