語り部 2016-11-11 07:32:53 |
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>死神
(鎌を振り回しいとも容易く異形を退けたわりに存外優しい気性をしているらしい。頼もしい笑みと共に受け入れられた欲求とぐんと上に引かれる感覚には決意と体が地に足をつけて立ち、かの傍若無人の思惑を食い止め、その真意を問う為の軌道に乗る事が出来た幸運に祝福を―――か弱い身ではあれ、心には自分が思う最強の剣を意志として持って。幸い腕の負傷以外主立った傷も無く、物語で小人の家に辿り着くまで山の中を縦横無尽に走り回った経験が項を奏して疲労感を感じさせぬ足取りで歩みを進め。ところどころにはパーティー会場で逃げ延びはしたものの兵の手から逃れられず無念にも命を絶たれた無惨な死体が転がっていて、その手が伸びる先は何れも町の外に続く道に向けてであり、恐らく彼らも己と同じく町の外へ出ようとしたのだろうと推測付けるとその光景の痛ましさに眉を顰める。なれど、今は立ち止まって死を悼む暇も弔う暇もありはせず、心を鬼にして足を動かしながら飛んできた問いには口を噤んだのち頷き一つ)ええ、そうね……先ずは、森へ。そこには私の「友達」がいる―――こんな状況じゃ、その「友達」もどうなってしまっているか分からないけど………もしその子たちが生きていて私に力を貸してくれるなら。その子たちが私の剣になり、私はその盾になれる。
>セレネ
貴方の選択を私は責めはしない。だから、こう言いましょう―――生きたいのなら、共にきて。ここで待つのは死と地獄だけ。たしかに彼らは私たちにとって神様のような存在だけれど、それでも、私たちの選択の権利を奪っていいわけがない。
んーー、でも、そうね。難しいこと抜きでいうと、私はただ生きたいだけなの。ただ一方的に蹂躙されて怯えた死を待つくらいなら泥水を啜ってでも生きることを選ぶし、その為なら戦うわ。……だから、私がそうしたように、貴方も貴方の運命は自分の手で決めればいい。その権利を、取り戻すのよ。
(思慮深く、それは愚かだと形容してもいい程に優しく、弱さと強さを兼ね備えた少女を慈愛に似た感情を胸に宿し乍ら自らの考えを声にして出す。生きたい。結局の所、いくら壮大な決意を掲げたとしても、綺麗事を並べ立てたとしても根底にある思いはそれだけなのだ―――私達の夢の国を、御伽の国の平和を取り戻したい。頁を閉じるというのなら、せめて綴り手である兄弟の思いを知ってから、彼らに生を与えられた生涯に幕を閉じたい。高貴な存在ならば此所で心を揺るがす演説をして見せるのだろうが己はその器に非ず、上手い言葉が考えても考えても思い付かず仕舞いには気恥ずかしそうに笑いながら率直な思いを伝えよう。しかし彼女の瞳の奥に強い意志を汲み取ることが出来、それを尊重するようぐっと拳を握りしめて語れば敵影が無いのを確認して一歩歩みだそう。目指すは森、自分の十八番。その方角に向かいながらふと、何か思い付いたようくるりと振り返れば年相応のいたずらな笑みを)あ! でも、やっぱり貴方の思いがどうであれ生きてもらわなきゃ困るわ。まだセレネと「友達」になった記念のパイを焼いていないし、ティーパーティーだってしていないし―――したいことは沢山あるんだから。
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