土佐人 2014-11-24 06:43:24 |
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「あのな、モーラ。間もなく全機に出撃命令が下る。俺も出ないといけない」
「……ん、だから何さ。こっちは忙しいんだ。用がないないんなら、作業に戻るよ?」
ニナとコウのじれったい関係を、愉快そうに見ていたモーラとは思えない。本心とは裏腹な、勢いだけで言ってしまった言葉だ。
立ち去ろうとしたモーラを、キースは慌てて引き留める。
「その、さ、コウと同じキャリアしかなかったのに、片方はGP03なんて化け物みたいな機を操って、俺は相変わらず、必死にベイト大尉たちね援護をするだけだ」
「連中に、また何か言われたのかい?」
「いいや、そうじゃない。ただ、何となくさ。バニング大尉に言われたことを思い出したんだ。お前の任務は、ガンダムの援護だろって。でも、今じゃそれも出来ない」
「仕方ないだろう。あれはモビルスーツって言ってるけど、全然違う機体だ。モビルアーマーみたいなもんさ」
「そうだけどさ」
いつもの陽気なキースとは、全く異なる人物のように見えた。俯き、そのまま黙り込む。が、それは間違いなくキース本人だ。普段は垣間見せない、もう一つの姿なのだ。その真意を隠すために、普段はわざと明るくふるまっているのだ。また隠された真摯(しんし)な姿があるからこそ、アフリカで09(ドム)を撃破し、月でヴァルヴァロの猛攻に苦しむGP01を援護出来たのだろう。
「今度出撃したら、もう、帰って来れないかも知れない。だから……」
「だから?」
「いや、何でもない」
「キース!」
「へ?」
モーラはおもむろにキースを引き寄せ、互いのヘルメットのバイザーを重ねた。
「帰って来たら、今度はヘルメットなしで、ね」
わざとらしくウインクして見せる。それを見たキースは、いつもの明る表情を取り戻した。
「ああ、約束だ」
そう言って、二人はそれぞれの場所に戻った。モーラは作業要員たちの群れの中に。キースは愛機のコクピットへと。
OVA『機動戦士ガンダム0083 スターダストメモリー』小説 下巻 第13章 阻止限界点 本文 チャック・キース モーラ・バシット より
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