土佐人 2014-11-24 06:43:24 |
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何を掴もうというのだろう。
大地に仰向けに倒れる緑色のモビルスーツは、その左腕を天に伸ばして息絶えていた。
上空をアルビオンがかすめる。黒い影を落としながら。
その前方には、白旗を手に立ち並ぶ百余命の将兵の姿があった。投降を求めて来たキンバライド基地の兵士だ。コウはモビルスーツデッキの舷窓からそれらを見おろしながら、深い感慨に浸った。初めて見る生身の敵である。彼は、呟くともなしに、口からその感慨を漏らしていた。
「あれが敵」
率直な意見だった。しかし敵という言葉に、憎しみはおろか、何の感情も含まれてはいない。ただ敵と呼ぶものの、具体的な形を確認しただけだからだ。彼がその言葉に意味を持たせられるようになるには、まだいくばくかの時間を要する。
OVA『機動戦士ガンダム0083 スターダストメモリー』小説 上巻 第4章 熱砂の攻防 本文 コウ・ウラキ より
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