土佐人 2014-11-24 06:43:24 |
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『少佐。おめでとうございます。後はコムサイの到着を待つだけですな』
16M(ザメル)のパイロットが、ガトーに通信を送る。
「世辞はいい。しかし最後の最後まで油断はならん。向こうもコムサイの到着には気づく頃だからな」
『万一の時は、おまかせを』
「このまま遭遇なしに2号機を持ち帰れるのであれば、それに越したらことはない。しばし、息を潜めて待つだけだ」
『はい』
制服の詰襟をはずしながら、ガトーは息をついた。それにこの後宇宙に無事帰れたとしても、まだまだすべき事は山のようにある。ジオン再興の道のりは、まだ最初の一歩目にしか過ぎないのだ。
ガトーは決意を新たにする。そしてモニターの映像に見入った。
彼を回収するコムサイは、すでに大気圏への突入を開始している頃だ。だが岩棚に囲まれたこの場所からは、目視する事は出来ない。隙間から見える満天の星空だけだ。
「地上から見る星空も、なかなかに美しい物だな」
『少佐、なんとおっしゃられました?』
「いや……」
----“星の屑”が成功した暁には、この夜空を、二度と地上から見上げる事もできまい。つぶやき、彼は口元に笑みを浮かべた。
彼自身気付いてなかったが、それは地上に降りて以来、初めて見せた笑みだった。
そして間もなく、日付が変わった。
OVA『機動戦士ガンダム0083 スターダストメモリー』小説 上巻 第2章 終わりなき追撃 アナベル・ガトー 16M(ザメル)のパイロット より
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