土佐人 2014-11-24 06:43:24 |
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その様子を呆然と眺めていた白鳥は、ぼんやりと佇んでいた。だがやがて大声で言った。
「しまった。ウサちゃんの遺体をエーアイするの忘れてた」
その瞬間、誰よりもエーアイセンターのセンター長にふさわしいのは白鳥ではないか、と俺はしみじみと感じた。
警察一行が姿を消し、部屋にはショスタコーヴィチの交響曲が流れている。
ティンパニの華やかな打突が、シンフォニーの終幕を高らかに歌い上げる。
俺は窓の外を見ようとして、ここが地下室だったことに気がつき、目をつむる。
脳裏いっぱいに、友野君の笑顔が浮かんで、消えた。
海堂尊『アリアドネの弾丸』37章 ミス・ファイヤー 本文 より
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