土佐人 2014-11-24 06:43:24 |
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「なるほど、毒を以て毒を制すか。モンスター官僚の最大の敵は、官僚という名のモンスター、というわけかもしれないな」
俺の呟きは、たいそう彦根のお気に召したようだった。
「今の言葉を聞いて、なぜ僕が、無礼で傲岸な白鳥さんにシンパシーを感じてしまうのか、わかった気がします。官僚の鬼っ子である白鳥さんの敵は、僕たちの敵。共通の敵を有してるいるから、味方だと勘違いしてしまうのだな」
俺は思わず言う。
「今の台詞を聞いたら、白鳥調査官は気味悪がるぞ。『悪いけど僕たちって言うのやめてくれないかな。ロジカル的には納得できるけど、どうも胸がもやもやする』くらい言いそうだ」
白鳥の口調を真似た俺の台詞に、彦根が即座に反応する。
「うわ、そっくりですねえ。田口先輩は白鳥さんのよき理解者なんですね。ひょっとしておふたりは仲良しなんですか?」
俺はフォークを皿に投げ出し、ナイフの先を彦根に突きつけて、言った。
「お前、その台詞は二度と口にするな」
ドスを利かした俺の声にびびった顔をして、彦根は俺を見つめた。それから勢いに気圧されたように、黙ってこくこくと何度もうなずいた。
海堂尊『イノセント・ゲリラの祝祭』終章 海風の行方 本文 田口公平 彦根新吾 より
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