影★ポテたん 2024-05-13 13:17:31 |
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インターホンを鳴らすと君の母がいつもよりも眉を下げた表情で出迎えてくれた。
「あのこのことでしょ? 私が言ってもなんの返答もないのよ。ちょっとお願いね。私、スーパーいってくるわ」
「…そうなんだ。わかったよ。」
僕は簡単に返事をして、君の部屋へと直行した。
トントン
ノックには返答はない。
「おれだけど、入るよ?」
数秒の沈黙…いったいなんだって言うんだ。不安と焦りでもう一度ノックしかけたとき
「いいよ。はいって。」
紛れもない君の声で許可がおりた。
ドアを開けると、もう夕方も晩に近いというのに、君はパジャマらしき部屋着のままベッドの上に座っていた。髪もとかされていない、寝癖がついたままだった。本当は、驚いていた。けれど、君まで警戒しないように、僕はいつも通りを徹底した。
「風邪じゃないだろ、なんかあった? ていうか、ちょっと外の空気吸った方がいいぞ」
許可もとらず、窓を開ける。決して心地よいとは言えない風だったけど、あの密閉された空間よりは幾分マシに思えた。君は、それでも口を開こうとはしなかったね。
「んー、なんかヒントちょうだい」
少しでも、重たくならずに話せるようにそう願って出た言葉。
「…もう、死んでもいいかな」
僕の中の想定をゆうに超えてきた。今度は二人でだんまりだ。まずい、このままでは埒が明かないと僕は何年かぶりに海へ誘った。君は、なぜ?という表情を浮かべながらもついてきてくれた。
連れて来た海で二人でぷかぷか浮かんでいた。初めは見ているだけだったんだけど、君はずんずん波をかき分け進んで行くから、入水自殺でもすんじゃないかと僕は君の手をとり離さなかった。それを君は振り払おうともしないから、二人、手を繋ぎ仰向けでぷかぷかと浮かんだ。海水浴にはまだ早いようだった。
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