乙種七類型調査隔離　──番、〆

さあ？多分父親の方になんか混じってんじゃねえの。母親はイマイチ分かんねえけどな。多分五番目、いや十二番目のパトロン？( 顎に手を遣りどうだったかと思い返して )随分な自信で。…ふうん、可愛いよ。すぐ目を背けるのも含めてな。( 視線にひっそりと笑みを零し / 悪戯めいた面持ちで逸らされた相手の視線の先にひらりと手を振り )……この期に及んで捨てると思ってんのか？発動してねえだろ、お前の呪いも。( 口腔に舌を潜り込ませて上顎を擽り / 舌先を押し付けるように触れ合わせると唇を離し / 何度か触れるだけの口づけを交わした後、先の言葉には如何にも心外とばかりに口を開き / かつて牙の埋め込まれた自身の肩口を指し示して )

　
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無駄にクソ長えしここからは読み飛ばせ。今更だが一応俺の出自云々を置いておく、ただの自己満足に過ぎねえから死ぬほど暇な時の時間潰しにでもしろ。

ジャック・フェルエム／裏

容姿／ホワイトブロンドの短髪を丁寧に梳かしている。前髪は眉に掛かる程度に整えられ、涼し気なアイスブルーの瞳が覗く。直線的な鼻梁と薄い唇は冷たい感触を与えるが、僅かに欲の色を滲ませた瞳が顔全体の印象を謎めいた方向へと導いている。大人びるも青年めくも言動次第のよく分からない顔立ち。かなりコロコロ表情を変えるため一見感情が分かりやすいように見える裏、パフォーマンスの一環として表情筋を動かすことも多い。容姿を大事な手段だと考えているためケアを怠ることはなく、牢獄という中でも常に清潔感を意識して身なりを整えている。均整の取れた体格は生まれ持ってのものであり185cmの長身とも相俟ってそれなりの迫力。

性格／悪戯好きな三枚舌。更に足癖も手癖も悪く、詐欺と窃盗が天職のような根っからの悪党。年齢の割に大人げはなく付け入る隙があれば即座に利用する。露悪的な言動も歯の浮くような甘い台詞も口にするのに躊躇いはなく、目的のためならばどんな手段でも厭わない。ターゲットとしたものに関する執着は強くあの手この手で囲い込もうとする。そういう風に世渡りをしてきたので真っ当な迫り方というものを知らないし、自身はこれでいいのだとも思っている。また人の感情に極度に餓えている節があり、向けられる情がどんなものでもそれが強い感情であれば悦楽を覚える。無関心よりも悪意を貰うほうが喜ぶ性質で、一度狙った獲物はしつこく狙うたちの悪い輩。一方で生半可な感情では満足できず、並大抵の情では目的を一人に絞ることができない。そもそも向けられたものが温かであればあるほど自身にそぐわない気がして冷めてしまう身勝手な性格。この性質は自身のコントロールの範疇外にあるが、苦悩という形で現れたのは幼少期に数度ほど。今は開き直ったとも言える。開き直った結果の妥協点が余程じゃない限り同じ奴は抱かないという結論、そこに行き着くまで今以上の修羅場を数多く経験している。
基本的な姿勢が今欲しいものを我慢しない、といったもののため必然三大欲求に素直である。わかりやすく表面上に出るのが色欲であり、恐らくは周りからのイメージとして多くを占める筈。総合して傲慢と自分本位の煮凝りのような難のある心柄。

備考／捕まる前の立ち位置は辺境の土地の次期領主。パトロンを数多く持つ画家の息子でもあり、ろくな税収の無い土地の資金源であった。ただ親に関して突出した絵の才能があるというよりは副業画家の名目で誑かしを正当化していたという方が正しく、一応領主下にある自身も例に漏れない稼ぎ方をしていた。家系的には父方の親族に悪魔との関わりがあるらしく時々男児に何らかの特徴が現れている。発現の方法は様々だが代を経るに連れ血が薄くなり、現在ではあまり目立った人外の特徴が現れない。今はまだその特徴が現れていないが実は容姿に関する時の流れも緩やか。寿命こそ人と変わらないものの表面上の老化が極めて遅い。
家族構成には折り合いの悪い双子の弟が存在する。肌色以外はそっくりの外見だが性格は全く異なり、そのくせ好みが被るため奥底で敵対関係にある。利害が一致した際は協力関係を結ぶため結局どちらも厄介なことに変わりはない。またこのことについて知ることはないが、家は悪魔との血縁に関するあれこれから爵位を授けられている。名字があるのはそのためでフェルエムの文字列に特段の意味はない。貴族の爵位を授けられたのはかなり最近の話、末端であり権力もあまり持たされていないこじつけでお飾りのもの。既に禁書となっている文献には爵位授与云々について「王家の予言に伝わる厄災への対抗策」と書かれている、が、実際ただの迷信に過ぎない。そんな事情を知らない為自身では己の家を成り上がりの貴族だと思っている。領主教育もサボりがちで、刹那主義のきらいがあるのも相俟って家の存続については軽く受け止めていた。そもそもこのような習慣と職がある時点で前時代的な国に生まれていることは明白、面白みも発展もない生まれの地に愛着がない。
家の方針は束縛と放任の間で揺れていた。何が正妻の子かわからないため扱いに困り、嫡男をどれにするか揉めていたのが裏事情。ただ無意識下はどうあれ本人はそれ程気にしていない。家庭環境を口にする時はそれをダシにして気を引く時であり己のカードの一つだと考えている。
捕まったのは「口説いた相手が権力者の親を持つニンフだったから」。一夜を過ごした彼女にとって純潔は一番大切、当然責任を取ってくれるものと思っていたらしい。純粋な精霊であった彼女に口八丁は通じず、言い訳を重ねる内芋蔓式に過去の罪が洗い出されていった。精霊と自身では一夜の重みが違い過ぎ、また向けられる感情がごく普通の恋情だった為か責任を取りたくない以前に意味がわからなかった、といった経緯も存在する。実際ニンフは最後まで自身を訴えることはせず、牢獄に捕まったのもたまたま彼女の父が訪れて現場を目撃したという偶然の結果から。
監獄内で着ているスーツは権威付けと目印のためであまり深い意味はない。

…はァ、なるほど。まあ普通の御貴族様ならこんな自由奔放に育つ事も早々ねぇか。…じゃあ好きな物と嫌いな物は？( 果たして浅いのか底が知れない程深いのかは検討もつかないがそれなりに歪みの生じた環境に生まれ育ったらしい事は理解し徐に其方へ手を伸ばすと人差し指の背で鼻梁を撫でながら口元に薄く笑みを浮かべて告げ / まるで初対面同士の話題作りか何かのようなシンプル故に稚拙ささえ感じる問いに思わず自ら笑ってしまいながらゆるりと首を傾げ )当たり前だ。お前が言う通り、多少のプライドも芽生える程度には俺の薬の効き目は抜群だったからな。…お前の目には俺が小動物か何かにでも見えてンのか？( 平然と肯定しては決して驕りに止まらないと自負している事を滔々と連ね / 視線を相手へ戻すと揶揄と受け取りながらも何をするにも愛でられるような心境に呆れ半分慣れない状況への居心地の悪さの誤魔化し半分な軽口を返し )…悪いな、癖なんだ。俺に都合良く金で買えねぇモンを差し出された時に裏が無かった試しがねぇんだよ。コレも予防線の一つだしな。…嫌なら解いてやる。別にお前自身を疑ってるわけじゃない。( 流石と言うべきか随分手馴れた上等な口付けに僅かに肌が粟立ち / 唇が離れれば以前牙を突き立てた場所へ視線を遣り指先を這わせながら告げ )



──

ご親切にどうも。お前の情報を時間潰しなんかに使うわけがねぇんだけどな。有難く頂いておくよ。そんだけだ、こっちは蹴ってくれ。

好きなモン…と嫌いなモンねえ、お前って言うトコじゃねえんだろ。……なんだ？美味い飯とか？( 指の滑る鼻筋の感触に僅かに目を伏せ / 問いについて突き詰めたことが無かったのか無意識に唸り、疑問形で答えとも付かないような言葉を口にして )早いところ俺にもその実感を湧かせて欲しいね。…まんまと掛かった獲物に見えてる。後は惚れた欲目かもな。( 自信のある様子に思わず笑みを漏らして / 相手の眦を親指の腹でゆっくりと撫で、顔を寄せ目尻に軽く口付けて )あ？誰が嫌つったよ、解かせるわけねえだろうが。お前の独占欲の発露なんだろ、絶ッ対解除させてやらねえ。( 肩に沿わされた指先を強引に引き剥がし、そのまま手指同士を搦め / 顔を顰めてべ、と舌を出し )

…何かねぇのかよ。貢がれたら嬉しい物とか色事以外の趣味とか。( 質問の答えと言うにはあまりにも不明瞭な返答に片眉上げ )まずはお前好みの味を付けてやるとこからだなァ。…そりゃ随分熱烈だ。良かったな、狙った獲物が単細胞で。( 思案顔で首傾げ / 目元への感触に目を細め笑みを零すと相手の後頭部に片手を遣って引き寄せ軽く唇を重ね )…ふ、…可愛い奴。( 表面上は相手への信用の無さの現れのような物言いで付けただけに快く思っていないだろうと考えていたものの告げられた言葉へ僅かに瞠目し / 思わず口端から笑みを零すと柔く目を細めて独り言のように呟き )

あー……強いて言うなら本か…？つっても趣味に数えて良いのか知らねえが。お前こそ何が好きなんだ。( 何とか捻り出した答えも相変わらず曖昧で / 此方の情報ばかりだと気付いたのか相手を指差しながら疑問を吐いて )開発出来たら口移しで飲ませてくれ。…まぁ、単細胞の獲物が他のハンターに狩られる前で良かったよ。( しれっと嘯き / 重ねられる唇を柔く食んで )…お前も大概分かんねえヤツだな。( 昨夜から時折見せる反応に訝しげに首を捻り / まじまじと表情を観察しながら相手の顎に指を添え )

…あァ、前も読んでたか。俺？…俺はこれだな。( 以前聖書を読んでいた姿を思い出せばそれも“本”と一括りに捉えているのか小さく呟き / 同じ問いを返されれば首を捻るも思い出したように掌程度の大きさの紙袋を取り出し )言われなくてもそうする。アレが一番効率良いからな。…言っとくけど俺はお前以外の人間の前ならもう少し真面で居られるんだ。そう易々と狩られるわけじゃねぇよ。( 口元に笑み浮かべ / 唇を離せば眉を寄せ不満そうな声色で主張し )そうか？贈り物を返さねぇって駄々捏ねる恋人なんか可愛くて仕方ねぇだろ。( 顎に触れる指先へ抗うこと無く此方へ視線を送ってくる相手の様子を眺め )

本ってよりも情報が目的の主体なんだよ。お前も読めりゃ幅が広が──ああ。良いことを思い付いた。文字教えてやる代わりにお前の国の言葉を教えろ。……、んだこれ。（ 言葉を引っ張り出す最中唐突に途切れさせ / 悪戯を思い付いたような面持ちでぽんと手を叩き / 次いで相手の手元に目をやれば小さな紙袋に首を傾げてその端を人差し指で弾き ）効率以外にお前も可笑しくなれっつってんだ。…ふ、真面目ね。( 含みのある目線を寄越しながら小さく呟き )…お前って恋人の概念あったんだな。これから教え込もうかと思ってたところだが、手間が省けた。( 瞬きを落としさも意外だと言うように目を見開いて / 顎の曲線に指の背を這わせて )

…ンなの覚えたところで使う機会もねぇだろ。茶葉だよ。この上無く高級で一般には流通しねぇ御貴族様御用達のモンだ。あのお坊ちゃんがロクに価値も知らねぇで持ち歩いてたからな。クスリの対価に頂いてきた。( 思いがけない言葉に瞬き一つ落とし / 袋の口を開け芳香を漂わせながら少量を掌に取り出し )…俺が損を蒙るだけじゃねぇか。仮にお前に効いたとしてもどっちかが手綱握ってねぇと目も当てられねぇよ。…何か異論でも？( 不服そうに眉を寄せ / ゆるりと首傾げ )概念こそねぇよ、人間はそう言うって事を理解してるだけだ。使い所は間違ってねぇだろ。( 顎に触れる感触に目を伏せ )

察しろ、お前の国の言葉で愛してるって言いたいんだよ。…お前にも紅茶を嗜む習慣があったんだな。( 果たしてどちらについて使う機会がないと思っているのかと思案しながらも後者と取り、自身の目的を明け透けに話し / 相手の言葉に感心したように頷けば掌のそれに顔を近付け )主導権握るのまだ諦めてねえのか。まあ確かに獣みてえなことになりそうだしな。…いや？元手も無く儲けんのは真面目なのかと思ってただけだ。（ 僅かに笑みを漏らし / 誂い混じりに告げ ）そうだな、よく出来ました。ついでに恋人ってのは相手以外に目え向けると爆発四散するもんなんだぜ。（ 相手の仕草を真似るよう人差し指で顎を擽り / どうやら言葉にする習慣がなさそうなのを良いことにしれっとした顔で冗談を潜り込ませ ）

…どうやったらその性格でそんな言葉が出て来んだよ。…他に娯楽が無かったからな。花の香りと乳香がするだろ。匂いも一級品なんだ。こんな所でお目にかかれるとはなァ。( 僅かに瞠目するも口元に柔い笑みを浮かべると相手の頬を片手で掴み / 相手の様子を眺めながら頬を緩ませて呟き )そりゃな。お前みてぇなのを手懐ける程夢がある事はねぇだろ。…ッたく減らねぇ口だな。今はそんな話してねぇだろうが。( 口角上げて肩竦め / 顔を顰めると特に否定をする事も無く苦言を呈し )へぇ、そうか。本当かどうか試してみるか？( 顎への感触に笑みを漏らすも相手の言葉を聞けば双眸を開き片眉を上げて告げ )

意外に健気さがあっていいだろ？で、結局教えてもらえんのかよ。…なるほどな、確かに上等なモンだ。こいつを得るには騙すか奪うかしかないのが惜しいね。（ 摘まれた頬に僅かに笑み / どうやら本心からの好みであるらしい紅茶の葉と相手の様子を見比べれば胸中に微笑ましさにも似たものが生まれ / 漂う香に微かに目元を緩ませて ）とっくに手懐けてるだろうが、首輪までしてんだから。……俺から口八丁を取りゃ顔しか残んねえぜ。( やれやれと言った調子で首を振り / 何度か称された苦言にも特に気にした風はなく飄々と肩を竦め )そりゃどっちが試すんだ？( 喉奥で笑みを殺しながら惚けた様子で首を傾げ )

別に良いけど、この国の言葉では言ってくれねぇの？…俺がそんな意地汚ぇ奴に見えンのかよ。興味があんなら飲ませてやる。( 相手の頬から手を離すと口角を上げて見据え / 茶葉を袋の中へ戻しながら肩竦め )首輪だけで満足する程慎ましくねぇんだ。知ってるだろ。…自己評価が低いんだか高いんだか分かんねぇな。俺には十分過ぎる程のモンが残るぜ。( 相手の肩口を人差し指でなぞるように触れながら笑みを浮かべ / シーツの上で胡坐を掻くと膝の上へ頬杖をつきまじまじと相手を眺め )お前に試させるわけねぇだろ。( 眉を寄せると不機嫌げに低めた声で告げ )

へえ？もう忘れたのか。愛してる、ってので疼くぐらいに言ってやったはずなんだがな。……ああ、それと誤解するな。仕入元の話だよ。( 茶葉を仕舞う様子を目に収めると相手の腕を掴み耳元に口を寄せ / 尾骨の辺りに手を潜り込ませ人差し指でトントン、と叩いて / 弁解を口にしながらも興味深いことに変わりはないのか視線は若干袋へと吸い寄せられ )んじゃ、どうすりゃ満足していただけんの。…はは、そりゃ光栄だ。執着と強欲か？それなら余りに余ってるぜ。( 肩に触れる人差し指に目を伏せ / ゆっくりと瞼を上げては視線に受け答えるように首を傾げて )俺もお前に試してほしくはねえなぁ。さてどうしたもんか。( 寄せられた眉にくく、と笑みを漏らすと相手の眉間を解すように指先を添わせ )

…俺がまともに物を考えられる時に言えって言ってンだよ。…だから飲みてぇなら飲ませてやるって。彼奴は俺のクスリ一つで喜んで差し出して来ンだから。( 唐突に腕を掴まれれば瞠目し / 相手の言動によって脳裏に一瞬にして駆け巡る記憶と微かに刺激される場所から湧き上がる悦楽の余波に束の間言葉を無くすも眉を寄せれば距離を取ろうと相手の胸元を押し / 弁解が余計に理解を遠ざけると同様な言葉を繰り返し )そうだな、今のところはもっと実感が欲しい。他人が見た事ねぇとこもお前自身が知らねぇとこも見たいんだよ、俺は。…それも良いけど、もっと俺が喜ぶモン。( 今後要求が増える前提ありきの一言を添えた上で以前牙を突き立てた場所へ唇を這わせながら答え / 唇を離すと笑みを浮かべて短く答え )…何処まで馬鹿にしてんのか知らねぇけど、俺だって人間に囲まれて育ってンだ。知識くらいはある。要するに情が絡んだ契約関係の一種だろ。( 眉間に指先が触れれば幾らか表情を和らげるものの不貞腐れたような口調で滔々と言葉を連ね )

…可愛いおねだりだな、今はまともに考えられる時か？……そいつんとこにはそんなにストックがあんのか。貴重な茶葉もある所にはあるもんだ。( 逃れようと胸を押されるもそれで体勢が揺らぐことはなく、寧ろ腕を掴んでいた手を相手の後頭部に回し更に此方へと引き寄せて / 虹彩がぼやける程の距離で鼻先をすり合わせると吐息で笑みを漏らし / その距離のままこれ以上は特に言い逃れをすることもなく得心がいったというように呟いて )実感ね。随分難しいことを言うじゃねえか。じゃあ誰にも言ったことねえ俺の弱みを一つ教えてやろう、実は歌が少し苦手だ。……あ？これじゃねえなら何のことだよ。( 唇の触れる感触に小さく笑みを漏らし / 弱みとなるかどうかは微妙なラインの弱点を一つ口にして / 相手の言葉には見当が付かなかったのか眉を下げ )馬鹿にしてねえよ、擦り込めるなら擦り込みてえなと思っただけだ。…まあ色気のない言い方をすりゃそうだな。辞書のほうがまだロマンチックだ。( 緩々と手を離すと愉快げに口角を上げ )

…ンなの見りゃ分かんだろ。少なくとも前回よりは遥かにまともだ。…あァ、それはねぇだろうな。まあ楽しみなんか何にしたって一時のモンだ。こんなとこに居ちゃ特にな。( 離れようとした割には然して抵抗もせず顔を寄せると鼻先がすり合わされる感触に瞼を伏せ / 相手の言葉によりたった今思い至ったのか苦笑を漏らし )…ふっ…っくく、…色男も芸事には敵わねぇか。…生憎言葉にするのは得意じゃねぇんだ。けど俺からすればお前だって十二分に宝の山だって事だぜ。( 想定外にも程がある言葉に瞬き一つ落とせば肩を震わせて笑い / 一頻り静かに笑った後溜息と共に楽し気な声色で零し / 胸中に実感としてある物を言い表す術が分からず以前相手に告げられた言葉を返しては人差し指で胸元を軽く押し )…そもそもお前らの言う恋人やら愛人やら夫婦やら妾やら、面倒臭ェ言葉が多すぎて覚えてられねぇよ。逐一契約結んでそれこそ色気もロマンもねぇ話だ。( いまいち理解に至っていないようで首を傾げてぼやき )

…ふ、愛してるよ。( 伏せられた瞼を楽しげに眺めながらゆっくりと顔を離して向き直り / 背に両腕を回すと己の胸板へと相手の顔を抱き込むような形で引き寄せ / ゆっくりとした調子で相手の背を叩きながらどこか悪戯げな響きを含ませた言葉を口にして / 付け加えられた言葉には肯定も否定もせず )違いねえな。お気に召したようで何よりだ、お前の方もなんか寄越せよ。……こんな掃き溜めならまぁそりゃ錯覚するかもな。( どうやらツボに入ったらしい相手の様子を見るともなしに見守り / 卑下とも取れる言葉とは裏腹に口調は愉快そうな響きを含んでおり )じゃあ鬼の方はなんて言うんだよ？別に卵から生まれるってわけじゃねえんだろ、それなりのことしてんなら関係もあるんじゃねえの？( ふと相手の出自ではどうなのかという疑問に緩く首を傾げ )

…、…我愛ｲ尓愛到無法自抜、…覚えたか？( 顔が離れれば同時に瞼を開いて相手を見遣り / 引き寄せられるまま相手の胸元へ頬を寄せるも何となく慣れない心地に束の間戸惑ったように視線を彷徨わせ / 告げられた言葉がやけに全身に響くような妙な感覚を覚えるものの決して悪い物では無く、その感触に浸りながら半ば無意識に落とした呟きへ思い出したように問いを付け足し )俺がこれ以上お前にやれるモンなんかねぇよ。誰にも言うつもりじゃなかった事も大方吐いちまったしな。…錯覚じゃない。紛れも無くお前が持ってるモンだ。これでも鬼は帰属意識が強ぇンだ、人間なんかにそう簡単に惚れたりしねぇんだよ。そんで俺はそこらの奴より鼻も良けりゃ目利きもできる。その上で俺がお前を選んだのを環境が起こした錯覚って言いてぇのか？( 考えるまでも無く手札は全て晒してしまったと肩を竦め / 露悪的な一言にムキになった子供の如く仏頂面を浮かべると片手で相手の頬を挟むように掴み顔を寄せて一方的に捲し立て )番だ。恋人やらとは若干意味が違ぇけどな。( 視線を宙へ投げその関係性を言い表す語彙を探しながら答え )

我愛……、無…、( 相手の言葉を静かに聞き終えると一度力を込めて抱き締め / 再度緩く力を抜けば先の言葉を反芻し /流石に一度聞いただけでの発音は難しいのか真剣な面持ちでどうにか繰り返そうと舌を動かし / 最早無意識に相手の背を撫でる手はそのままで )じゃあお前の残りの寿命そのものでいい。……お前がそう言うのを見たかっただけだ。ここらで俺の言葉を思い出させてやろう、全部の感情が欲しいんだよ。まあ、予想以上のモンがもらえて俺は満足だな。( 言葉を聞けば要求は先よりもエスカレートしており / 相手の怒りじみた言動にも楽しげな調子は崩さず、頬に添えられた手に自身の掌を添えて頭を傾け )ああ、なるほどな。じゃあ俺はお前の番に当たんのか。…恋人との違いは何だ？( 何となく自身の肩に意識を向けながら呟いて )

…、( 体を包む腕に力が込められると目を細めて相手の腰に腕を回し / 相手の声が微かに響くだけの室内の静寂と背を撫でる手が心地良く微睡むように目を伏せていたが、不意に相手へ凭れていた体を起こすとその肩に手を遣りシーツの上へ押し倒そうと体重を傾け )…悪魔と契約すんのは初めてなんだ。お手柔らかに頼むよ。……なら俺からはお前がまだ知らねぇらしい事を教えてやる。俺が怒ってる時にそうあからさまに喜ばれると俺は益々臍を曲げるぜ。( 相手の言葉へ片眉を上げると口元に笑みを浮かべ愉快げな声色で告げ / 不満を露わに顔を顰めて相手を見据えていたが頬へ触れた手に頬を寄せるような仕草に当然のように絆され頬を掴んでいた手から力を抜き / 相変わらずの仏頂面のまま先程よりも勢いに欠いた声を漏らし )そうは言ってねぇだろ。番は恋人と違って解消できるモンじゃねぇし、言葉の通りに相手に生涯を委ねるって事になる。死んでも解けねぇ呪いと同じだ。その上関係を結んだからって何かが特別変わるわけじゃない。俺は潜在意識に番って概念があるから良いが、よく理解してねぇ人間が簡単に俺らみてぇなのと番になっちゃ後悔する前に死ぬ事になるぜ。あくまで俺とお前はこの国で言う恋人だ。今はな。( 相手を見据え滔々と告げ / 言葉の最後に笑みを浮かべて付け足し )