銀河鉄道の夜　/ NBL、指名制、無登録

>牡羊座

……そう、…そうか、ありが──ン゛っ！
( 真正面から瞳を直視して観察される慣れない感覚が落ち着かず、目線を泳がせながら瞬きの回数も増えてしまう。更に追い打ちをかけるような直球的な肯定が擽ったい照れを誘い、思わず視線を逸らしてしまった所為で顔に迫る彼の手に反応することができなかった。言葉途中に鼻の先を摘まれて抗議の声を上げようとするものの、途端に告げられたこれもまた率直な誉め言葉に戸惑いを覚えれば、結局それも声にはならず喉の奥へ押し留めて。彼の手が離れて解放された鼻先を自分でも触れ、初めてその形を意識して確かめるが、彼が形容した言葉がすっきりと腑に落ちることはなかった。それでもその言葉に嘘偽りの無いことは伝わり、理解には至らずとも今まで感じたことのない自分の顔の一部に対する自信が微かに湧いてくるようで。会話の始めに話題に上った曇天に覆われた都市の風景然り、彼の視点を通すことで自分には見えていなかった美しさに気づき、そこに新たな価値を感じることができる、その感覚は胸の内で柔らかく響くような温かさがある。今一度窓に映る自分の顔を短い時間眺めた後、小さな笑いを一つ落として正面に向き直り )
鼻…鼻か…。……、ふっ。そうだな、貴方に言われると少し…自信がつくような気がする。…あくまで少し、な。

>20 身分証