沢下条 張 2022-12-17 00:45:55 |
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それが木蓮のキーワード?はは、…本当に、俺の事好き過ぎだろ、お前…。
(彼女のキーワードを聞いてつい気が抜けて笑ってしまったのか、参ったように眉を下げて笑み。まさか此方のフルネームだったとは。どうりでどんなに考えても自分は彼女のキーワードに辿り着けなかった訳だった。そして彼女の残したキーワードから感じられる告白めいたものを受け止めては亜梨子の額にあのキチェスの印が現れたのを見て。きっと今喋っているのは木蓮で、先に待っていると言われて頷けばふわりと空中に浮かんで)
もう少しだけ待っててくれ。
(そう言い放って光の粒が収縮すると親友の玉蘭、恋人の木蓮、罪を許した秋海棠の三人をその場に残して何処かへと瞬間移動して)
―東京タワー―
(月へと発信する電波操作が出来るのに充分である高度の足場へと降りると片手で横にスライドしてパネルが現れ。幻想的な青白い光の文字盤を見上げながら、輪としての人格で彼に話し掛けてみた)
…なあ、紫苑。聞こえてる?…輪だ。あんたの目的が地球上の戦争を止めようとしてるのは分かったよ。
あんたが木蓮の最期の言葉に「地球を守って」って言われたから…、その約束を守ろうとしてたのは充分理解した。
希望を持って欲しい、あんたの生まれ故郷や母星のように戦争で地球も消滅させないようにする。
亜梨子も、僕があんたの代わりに守ると約束するよ…。
だから紫苑、木蓮とふたりで僕たちの地球を見守って欲しい。木蓮がずっと言ってただろう?"いつか地球の大気になりたい"って。
…僕、見たよ。木蓮さんはもう既に大気になってた。ベランダから落ちた僕を助けてくれたよ。
だから、このキーワードであんたが作った…人間を操作出来る兵器ごと月の基地を壊そう?あんたたちの文明が発見されると不味いだろ、地球人にはまだ早い文明だよ。
(夢の中で、時折現実世界でも彼の記憶や人格が現れては自分の中の異星人(紫苑)が何をしようとしているのか分かっていて。前世の恋人が放った約束を守ろうとしているのは彼らしいが、どうか人類に希望を持って欲しいと自分の内側へと話し掛けて。星の戦争はまた彼のような戦災孤児を生み出すだけ、それも充分わかっている。だからこそ木蓮という女性がこの地球の一部となって彼を待っている今、彼女と二人で地球を見守って欲しいと願い。シンとした冬の澄んだ空気が流れては薄い青色の光に包まれながら懐かしい異星の文字盤に小さな手で素早く触れていき)
『月基地稼働キーワード』
シオン(紫苑) 「どこかへ帰りたい」
シュウカイドウ(秋海棠) 「夢に楽土求めたり」
ギョクラン(玉蘭) 「木蓮を永遠に愛す」
エンジュ(槐) 「玉蘭のそばにいたい」
シュスラン(繻子蘭)「エンジュのお守りはもうごめん」
ヒイラギ(柊) 「オク=タコ=サノール=ヒイ=ラギ」
モクレン(木蓮) 「ザイ=テス=シオン」
(6人のキーワードを打ち込んで自爆装置を起動させるスライドにすっと息を飲んでからキーに触れ、月へと発信させた。ばっと見上げるとモニターに映されたのは、人間を操る兵器では無く美しい姿で歌う恋人の木蓮の立体映像だった。どうやら彼は木蓮を亡くしてから月で彼女の好きだった歌を歌わせてやりたかったらしい、そんな装置が永遠にループされていて。基地の爆破命令が作動しなかったのは彼女の歌声に植物が繁殖し、機能停止していた為だった。ふっとそこから己の意識が途絶えて、ぐらりと体が揺れるなり鉄筋の足場から落下してしまって)
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