死生契闊も程々に　〆

( 先の楽しみに心を奪われているのか、大人しく言う事を聞きあまり好まない革靴に躊躇無く足を入れるのも所謂嵐の前の静けさ。相棒が隣で何やら感慨に耽っているのにも気がつかず半分解けた靴紐もそのままに軽く踵を踏みながら靴を履くと、明らかに妥当な懸念の言葉を愚かにも一笑に付し。鍵が差し込まれ回るその瞬間を口を噤んで興味深そうに見つめる中、不意に鳴り響いた鈴の音に近い音に目を瞬かせ )
逸れねェよ。俺をなんだと思ってンだ。


( / 唐突に背後から失礼致します。いつも楽しいやり取りありがとうございます。もう本当に楽しくて楽しくて…この関係性の二人が後に信頼を深めていくと思うと胸が高鳴って堪りません…。
今回、今後の展開に関してのご相談をさせて頂きたくお声かけ致しました。またそれに際して確認させて頂きたいのですが、現代日本にて生まれた悪魔は現月達が住む世界にやって来るのか、そのまま現代日本で活動しているのか、主様のお考えではどちらを前提にされているのでしょう…？もし現代日本に現れるのであれば、お出かけ先で悪魔に遭遇し戦闘シーンに入るのも楽しそうだなあと思いまして！はたまた、もしこちら側の世界に現れる前提であればこのままお出かけして現月を大暴れさせようかなとも思っております。世界観についてはお話を進めていくうちにと言いつつ、割って入ってしまって申し訳ございません…！ )

バカだとは多少。…だから心配してるんだ。
( 粗雑且つ歯に衣着せぬ率直な感想を述べるも、数拍遅れて添えた言葉は紛れも無く本心。無愛想に言い放ちつつドアノブを引けば、見慣れたマンションの廊下では無く煤で薄汚れた路地裏であり。数歩先のダクトから鼻腔をつく食欲が唆られる香りに、今になって今朝から腹に何も入れていないことを思い返し。殆ど同等、若しくはそれ以上だろう境遇の相棒を窺い見れば手招きでドアを潜るよう誘い )




( ／毎度お世話になっております！そう仰って頂けるなんて也冥利に尽きます。当方も良い刺激を貰いつつとても楽しませて貰っております…！
掲示板に掲載した設定が初期状態なのが頭から抜け落ちておりました…、不甲斐ない上に現月くん背後様を悩ませてしまい申し訳ないです。下記に詳細と共に肉付けした設定を置きますが、あやふやな箇所が幾つか見られると思われます。その際は是非ともご指摘及びご提案の程頂ければ幸いです！

現代日本にて生み出される悪魔は現代日本で活動する。僅かな可能性で篠藤達の世界に紛れることも。( その場合、篠藤達を動かすか悩み中です。個人的には形振り構わず縦横無尽に戦う現月くんをセーブしつつ戦闘する篠藤の図が浮かびます )
特級・準特級・1級の祓魔師達が実際に現代日本に拠点を移し潜伏し戦っている。近年悪魔が増加し続けた為篠藤達にも当たり前のように戦闘命令が下され現代日本へ赴く。任務外の外出などで偶然遭遇してしまった場合でも悪魔祓いをしても良し。
戦闘では民間人含め等級の低い祓魔師も悪魔にとって喰われ、人死が出ることも屡々。兎に角常に人手が足りない。つよつよ半悪魔の現月くんが行動を共にしている為二人が連携した際の戦闘力は依然知れず。※現月くんが監獄を出られた理由は危惧した上層部の命によるもの。( と表向きにされていますが何か理由があっても美味しいなと思います！勿論、現月くんが自負しているような強靭な兵器として扱う為であっても素敵です )
篠藤達の住む世界では悪魔は湧かず、強いて言うならば祓魔師育成機関と全ての管轄をするお偉い様方がいる適度。( ※“お偉い様”の呼称が思いつかないので何か良い案があれば教えてくだいまし！無論このままでも結構です！)
但し祓魔師教育機関・悪魔の生態を研究する施設では実験的に魔力を弱めた悪魔を用いる。
篠藤達の住む世界と平行世界( 現代日本 )は特別製の鍵一つで繋がっており、平行世界と言うだけあり地形は全く一緒。建造物や風景は異なる。
当方も外出先で戦闘シーンに持ち込めたらと密かに思っておりまして、想定外のシンクロに胸が高鳴っております…！ )

バカァ！？
( 明確な答えを期待した問い掛けではなかったが、簡潔な一言が返ってくれば噛み付くように反応し横に立つ相手を睨み。しかしそこへ控えめに添えられた“心配”の言葉にまたも返答に窮し、片眉を上げ疑問を浮かべる表情は子供が初めて耳にする単語に直面した時と同じような趣さえある。暫ししげしげと相棒の横顔を眺めていたが、不意に開いた扉の向こうから吹き込んだ微かな風に前髪が揺れると、ハッとして其方へ視線を遣り目の前に広がる光景にぽかんと口を開け。鼻腔を掠める匂いも肌に感じる空気も全くの別物、その異様な雰囲気に呑まれ感動していたのもほんの一瞬の間で、興奮を隠しきれない大声を上げれば目的も無く一目散に走り出し )
すッ、げェ──！！なんだココ！！



( / 詳細な設定を頂きありがとうございます！とても分かりやすい上に既に作り込まれている世界観に感激致しました。
以下、世界観に関してのご返答とさせて頂きます。

こちらの世界での戦闘シーンもぜひ機会があれば描いていきたいです！互いに信頼関係を構築するまで何度か悪魔と対峙するシーンが入ると思いますし、どうせなら何通りかのシチュエーションを楽しめたらなと思います。戦闘シチュに関して前々からぼんやり考えていたのですが、うっかり成津くんが深手を負う事態となってしまい、瀕死の成津くんを前に人間の脆さを痛感して血を与えられながらの戦闘スタイルに臆病になる展開などがあるとグッとくるなあなんて考えております。脱線してしまいましたが良ければご一考ください！
現月が監獄から出された理由に関しては、こちらも薄らと兵器以外の理由があると良いなと考えていたのですが未だしっくり来るアイデアが浮かばず…。真相が明かされるのは先の事になると思いますので、展開を見ながらゆっくり考えて行こうと思います。
お偉い様方の呼称についてですが、登場はあくまで概念的な物になりそうなので、シンプルに上層部、幹部、組織の上の方々を引っ括めた呼称として元老院とかでも良いのかなあなんて思ってるのですが、恐らく呼称が無くとも成立はしそうなのでこのままでも構いません！
今後の展開についてもご同意頂きありがとうございます！ではそのように進めて参りましょう！まだバディとしての自覚が無いので好き勝手暴れるかと思いますが、初戦闘シーン楽しみにしております！ )

ちょ、っ──お前なあ！
( 常人と異なる瞳が威圧的な雰囲気醸し出そうと微動だにせず、正面を向いて肯定の意を込めて無言を貫き。暫しの間じりじりと焼くような視線から気を逸らそうと口を開いたと同時に追い風に青みを帯びた黒髪が揺れる。即座に伸ばした腕は相棒に指一本足りとも触れることは叶わず、曇り空の下落ち着き無く動き回る姿に早くも頭を抱える羽目となり。背後で消える扉を一瞥すれば駆け寄り、加減しない力のまま少し高い位置にある頭を叩き。人通りの無い場所が不幸中の幸いとも呼べるが、多少とも路地に響く声量に深く溜め息が零れる。興奮気味の相棒を落ち着けるべくがっしりと両肩を掴み視線を交錯させては、沸々と顔を出す怒りを心中に留め地を這うような低い声で語りかけ )
ここは日本と呼ばれる平行世界。俺達の住む世界とは勝手が違うんだ。“目立つ挙動はしない”、約束した筈だが。




( ／承知致しました！当方も信頼し合える間柄になるまで、バディとしての幾つかの戦闘やあらゆる困難に遭遇して貰いたいと思っておりまして…！現月くん背後様さえ可能でしたら、現在の流れから初めての戦闘場面に持ち込めたらと画策しております。なんて素敵な展開でしょう…思わず感激してしまいました！傍若無人な現月くんの弱点の一つが篠藤にあることも大変魅力的で！背後様同様グッと来てしまいました。是非ともその展開を交流の中で組み込みたい所存です。
畏まりました！理由は未だ不明とするのも、今の現月くんとリンクするものがあり良いなあと…。展開に沿って明らかになる現月くんの過去や諸事情など、個人的に楽しみが増えたのですが、余り重く考えず考案してくだされば幸いに御座います。
元老院！とてもしっくり来る響きと重みのある雰囲気、何より背後様の語彙力に魅了されております！是非元老院と呼ばせて頂ければと思います。
アドバイスの程有難う御座いました！現月くん背後様と縁が結ばれて良かったと沁々と感じております。好き勝手暴れる現月くんが楽しみで仕方ないです…！篠藤の胃が痛む程、縦横無尽に戦ってくださればと思います！ )

いッてェ！！ンだようるせェな！！
( 浮かれきって今にも路地から飛び出さんとしていたところ、唐突な後頭部への衝撃と痛みに思考は一気に冴え渡り現実に引き戻される。途端に沸点を突破した怒りを爆発させた声量は狭い空間に反響し必要以上に空気を震わせるも、肩を掴んできたその手の威圧感と静かながら此方の勢いを凌駕する底冷えするような低い声には思わず口を噤んでしまい。これ以上相手を怒らせれば強制送還は不可避。すぐにそう悟ると今だけでも静かにしていた方が良いという結論に至り、たった今耳に入ってきたばかりのいつぞや自らがしてしまったらしい約束にこくりと頷いて )
…分かったって。目立つことはしねェよ。約束するから早く行こうぜ。


( / 焼肉が良い感じに満足してきた辺りで良きタイミングに悪魔出現させる流れで参りましょう！
展開についてご賛同頂けて何よりです！まだ心配やら不安といった感情を上手く処理できず、成津くんに変な伝え方をしてすれ違うんだろうなあと妄想を捗らせております。恐らくその後に信頼が深まっていくと思いますので、足並みが揃う前段階の戦闘や困難についてはその都度またご相談させてください。それとこれは信頼関係ができてからでもと考えているのですが、成津くんの妹さんが悪魔関連の何らかに巻き込まれてしまい冷静さを失う成津くんも見てみたいななんて思っております。勿論鬱展開は避けて行きたいので、よろしければ頭の片隅ででもご検討頂ければ幸いです。
現月の出生に関わるところについては何となく考えているので、それもタイミングを見計らいつつ明らかにしていこうと思います。また成津くんの生い立ちについてもお聞きできたらなと思いますので、バカな現月が何処まで理解できるかはなんとも言えませんが何卒よろしくお願い致します！
お役に立てて何よりです！では呼称はそれで統一致します。
勿体ないお言葉、ありがとうございます。こちらこそお声かけささて頂いてから今に至るまで本当に素敵な方とご縁が結ばれた事に感謝致しております。今後とも何卒よろしくお願い致します！)

よし。───来い、ここが焼肉屋だ。お前の言う、肉がたんまり食える場所。
( 少々鎮まったらしき相手に胸撫で下ろし両肩を解放してやれば、恰もペットを躾けるが如く言葉を零し。相棒の沸点に到達し兼ねない発言は一先ず路地から出ることにより解消させようと目論み、親指で指し示しながら再度結んだ唇を開き。いつか耳にした、元祓魔師が営む焼肉屋。正直事実かは不明だが祓魔師に寛大な彼ならば半悪魔の相棒に興味を抱き歓迎されるだろうと、頭の片隅で薄らと思いを馳せながら焼肉屋の扉を押し開け。足早に出迎える店員に人数と個室を希望する旨を伝えては、入店が中途半端な時刻故か安易に了承を得て。相棒の様子を気にして、ちらりと後ろを見遣り )



( ／大賛成で御座います…！戦闘を控えた二人には束の間の食事を楽しんで貰いましょう！
篠藤の本質は若干不器用です故、見事に現月くんとすれ違いを生み出してしまいそうです。それも一興なのですが、やはり信頼を深めていく過程としても丁寧に描写していきたい所存です！お互いに不明瞭な点があれば都度相談致しましょう。戦闘を繰り返す日々の中で妹達の存在に助けられている側面もありますので、恐らく冷静さをかなぐり捨て一人悪魔を追うと思われます。その際に対する現月くんの対応や反応が今から気になってしまいますね！是非その案を頂ければと思います。
承知致しました！物語の芯にもなり得る現月くんの出生や過去、もし可能でしたら篠藤と出会う前の現月くんも含めてタイミングが訪れる日を楽しみにお待ちしております。篠藤の過去も僅かに考えていた所ですので、もう暫し距離感が縮んでから語らせて頂こうかと！恐らく妹達が悪魔関連の事故に巻き込まれる場面の前後どちらかでお話できればいいなあと、漠然と計画を立てています。
そんなそんな…！何とも嬉しいお言葉の数々に頬が緩むばかりです。現月くん背後様のキャラを大切にしている箇所や積極的に物語構築の提案される所、緻密な描写の美しい言葉選び、とても尊敬しております。こちらこそ、今後とも何卒よろしくお願い致します…！ )

肉！すげェ！
( 言動の逐一が単純な思考回路によるものであるため、大人しく付いて行くと言えばぴたりと相手の背後に寄り添い歩を進め。その間も首は忙しなく前後左右を振り返り、輝いた瞳にはきっかけさえあれば今にも約束を破って駆け出していきそうな気配さえある。しかし幸い好奇心を擽られる前に焼肉屋に辿り着けば、ざっくばらんな解説に興奮を露わに声を上げ。相棒は此方にやって来た人間と何やら言葉を交わしている様子。そのほんの少しの手持ち無沙汰な時間すらじっとして居られず、興味の赴くままその場を離れ厨房へ通じる扉を開きそこで働く人間を騒然とさせ )


( / 脱線に脱線を重ね背後会話が間延びしてしまい申し訳ございません…！少しこちらのお返事を省略させて頂いております。頂いたご提案や嬉しいお言葉はしっかりと噛み締め、今後の展開についてもまたご相談させて頂きますので、その時はどうぞよろしくお願い致します！
最後にこの後の戦闘シーンに関して一つお伺いしたいのですが、現月が悪魔の弱体及び無力化、とどめを刺せるのは成津くんの持つ武器だけというのを何となく考えておりまして…。そちらの方がバディとして楽しめそうだと思ったのと、悪魔の討伐完了が線引きしやすいかと思ったのですが、如何でしょうか？ )

現つ…───ああ、ックソ！…連れが本ッ当にすみません、お騒がせしました！
( 背後にくっ付いていた筈の相棒の姿はなく、騒然とする客の視線の先、関係者以外立ち入り不可の扉を潜ろうとする最近漸く見慣れた後ろ姿。恐らく監視不足であったと己に叱責を吐き。少々油っぽい床を靴音鳴らし足早に近付いては、追いついた瞬間即座にくすんだ白い後頭部と自身の頭を下げ謝罪を。丁寧に厨房に繋がる扉を閉め、喧騒に紛れる客の視線を振り払うように額に掌をあて一旦深く息を吐く。即座に相棒を一睨みした後に腕を引き案内された個室まで辿り着けば、その頃には空腹とストレス何方で痛むのか不明瞭な腹を擦り、叱責の前に嫌味ではなく純粋な質問を問い )
お前、字は読めるのか？



( ／その素敵な提案頂戴してもよろしいでしょうか！戦闘シーンと一概に言えど、タイプの異なる二人ですので共闘のイメージがはっきりせず…。しっくり言語化された背後様の提案に思わず、これだ！と零してしまいました。但し共闘及び戦闘も数える程だったと記憶しております故、まだ不格好な掛け合いになってしまう事を前提にお話を進めれたらと思います…！ )

※投稿したものが気に入らず、背後会話含め手直しをさせて頂きました。お手数ですがこちらが本文とさせてください…！





現つ…───ああ、ックソ！…連れが本ッ当にすみません、お騒がせしました！
( 背後にくっ付いていた筈の相棒の姿はなく、騒然とする客の視線の先、関係者以外立ち入り不可の扉を潜ろうとする最近漸く見慣れた後ろ姿。恐らく監視不足であったと伸し掛る責任感のあまり己に叱責を吐き。少々油っぽい床を靴音鳴らし足早に近付いては、追いついた瞬間即座にくすんだ白い後頭部を掴み同時に自身の頭を下げ謝罪を。丁寧に厨房に繋がる扉を閉め、喧騒に紛れる客達の視線から逃れるように頭を冷やすべく額に掌をあて一旦深く息を吐く。2秒ほど口を噤めば相棒を一睨みした後に腕を引き案内された個室まで辿り着けば、その頃には空腹とストレス何方で痛むのか不明瞭な腹を擦り。手近なソファ席に腰を下ろし叱責の前に嫌味ではなく純粋な質問を問い )
お前、字は読めるのか？



( ／その素敵な提案頂戴してもよろしいでしょうか！戦闘シーンと一概に言えど、タイプの異なる二人が映える共闘のイメージがはっきりせず…。しっくり言語化された背後様の提案に思わず、これだ！と零してしまいました。但し篠藤と現月くんの共闘が数える程だったと記憶しております故、まだ不格好な掛け合いになってしまう事を前提にお話を進めれたらと思います…！ )

うわッ、いきなり何すンだよ！
( 今正に厨房へ踏み入りすぐそこにある肉塊に手を伸ばさんとした直後、突然後頭部が押さえつけられれば口いっぱいの肉を頬張る夢は叶わず長い体躯を折り畳んだ体勢で非難の声を上げ。しかし解放されると同時に飛んでくるのはまたも鋭い視線。何やら怒りを買ったらしいが怒っているのは自分の方で、子供じみた仏頂面を晒しながら負けじと睨み返し。応戦も束の間腕を引かれるまま個室にやって来ると、開口一番投げかけられる問いに眉間に皺を寄せ。まだ精神年齢だけでなく見てくれも幼かった頃、監獄の中で職員へとんでもない苦労を強いながら教えられたのは平仮名と片仮名、数字の読み書きのみ。漢字に関しては概念すらないが一通り文字は読めると自負しているために相棒の当然の疑問は心外以外の何物でもなく、不満を隠そうともせずに答え )
はァ？読めるに決まってんだろ。バカにしてンのかよ。


( / お役に立てたようで何よりです！戦闘スタイルは提案させて頂いたものとして進めていきますね！初戦闘シーン、なかなか面白いものになりそうで今から楽しみでなりません。引き続きよろしくお願い致します！)

さっきお前がこじ開けた扉に書かれてた言葉。あれ
は、関係者以外立ち入り禁止だという忠告だ。俺とお前は唯の客、立ち入ってはならない。…たわけ。
( 問いかけに至極不満気な表情と声音、機嫌を損ねたのは間違いないらしい。先刻拵えた眉間の皺は解くことも無しに暫くの間相棒を頬杖付いて眺めるが、長い溜め息の後に先程の暴挙はやむなく起こったのだと自制をして。読めることに関しては馬鹿正直な言い分を信じ呑み込むが、監獄という粗悪な環境の中簡単なものしか教えられなかったのだろう。哀れみが先立ってしまえば怒りは静かに消沈し告げる声音の調子さえ落ち着いたものと化し。相棒が着席するのを待ちながら机上のパンフレットを差し出して )
生肉より焼いて食った方が美味いぞ。好きなもの頼んで構わない。

…うるせェな、分かってるっての。
( 短い沈黙の間に一応記憶を掘り返してみるが、漢字表記を記号と認識しているため相手の言うような言葉が目に入った記憶は無い。しかし相棒を前にして歴然と聳え立つ知力の差を素直に認めるはずも無く、返す台詞はまるで反抗期真っ只中の子供のようである。差し出されたパンフレットを見れば表情は簡単に綻び、表紙に大きく描かれた肉に目を輝かせながら何故か当然のように相手の隣に腰を下ろし。そのままメニューと対峙するが半分以上は文字が読めず、読めたとしてもそれが何を指しているのかは検討も付かない。早々に解読を諦めると広げたメニューを相手に見せながら、取り敢えず写真が載っているものを指差して )
コレとコレとコレとコレ。あとよく分かんねェからオマエが頼め。美味いヤツ。

は？
( 端無く相棒が選んだ席は自身の真隣り。反射的に呆けた疑問を零す。つい先程の拗ねたような態度は何処へやら、双眸を輝かせパンフレットに並ぶメニューと対峙する様子から、幼子の如く機嫌を変える相棒をなんとはなしに眺める。距離感の具合にメニュー其方退けで思いあぐねるが不思議と不快感は無く、ここ数日で既に慣れ始めた自分が恐ろしくもあり。茫としていた意識が呼び戻されたのは、眼前いっぱいにメニューと題し様々な部位を如何にも美味そうに魅せるパンフレットで。差し出されたそれを受け取り、相棒が選んだメニューを避け“美味いヤツ”とのご所望を受け幾つかピックアップし。相棒を避けつつ個室から半身を乗り出して店員を呼ぶと二人で選んだ部位をさらさらと読み上げ。次いでにメニュー表の隅、ソフトドリンクの記載に一瞥配ると深く考えず二人分コーラを追加注文しようと指をさし。軽く頭を下げ駆けて行く店員を見送り座り直せば、猫背も所以か双眸にも毛先が及び食事に邪魔そうな前髪に手を伸ばし )
気に入るかは知らんが美味いやつは頼んだ。あと───

( 二人で食事に来た時、普通は対面して座るもの。そんな考えは当然念頭に無く、それどころか隣で困惑の声が上がる事にすら気付いていない。この場所を選んだのも、相手が此方側に座ったから自分も真似したというだけの単純な行動原理である。さっさとパンフレットを手渡してしまえば、落ち着き無くそわそわと周囲に視線を走らせ体を揺らし。まだ見ぬ肉に想いを馳せる事数分、いつの間にか現れた人間と相棒がらつらと呪文の如き言葉の応酬を始め、去り際人間が寄越してきたありとあらゆる事に対する疑問の視線にも気づかず上機嫌で頬を緩ませており。そこへ不意に伸びてきた手、悪魔と向き合う度恐ろしい程発揮される瞬発力の影も無く、体の動きを止めると不思議そうに其方を見遣り )
あ？なんだよ。

これで少しは食い易くなると思うんだが…。
( 忙しなく走る視線と落ち着きなく揺れる身体の隣、スラックスのポケットから片手に収まる物を取り出すとその手を伸ばし。無抵抗を良い事に耳馴染んだ音と共に鬱陶しい迄に伸びた前髪が可愛らしい薄桃色のヘアクリップに彩られ。当人は至って真面目であり、寧ろ遠慮せず食事ができないものかと危惧する程である。隣という事もあってか近場にて常人と異する双眸と視線が交錯するも、大して臆する事も非ず寧ろ興味心が疼き。反応を窺うべくまじまじと真顔は崩さずに相棒の顔を見詰め )

…どうなってンだコレ。
( 口を半開きにした惚け顔でされるがまま視界の上部を動く相手の手の動きを眺めているも、その手が離れても尚視界が開けたままである事に気がつけば瞠目して瞬きを繰り返し。何やら此方を凝視して来る藍色の瞳の中に自分の姿を見つけると、顔を突き合わせ目を矯めつ眇めつして己の姿を確認しようと試み。しかし瞳の中に収まる自分の姿はあまりにも小さく、然程粘りもせずに諦めると前髪の生え際に手を遣りながら尋ね )

視界、ちょっとは広くなったんじゃないか。
( 暫しの間視線だけの応酬が続くも、ヘアクリップの存在に寸分も気付く気配の無い相棒に朧気な問いを投げ。所詮は男。女児向けのそれが特別似合う訳もないが、あの半悪魔が可愛らしい髪飾りを身に付けてる差異に、自ら仕出かした事ながら怪態さを含んた不思議な所感になり。テーブル席の椅子へ背凭れては相棒の額を指差して )

なった。スゲー。
( 常々視界の至る所を遮っていた前髪が無くなった事で随分と鮮明になる景色の中に相手の姿を認めると、ついまじまじと自分のそれとは違う人工の光に青く透ける黒髪や深みを帯びて色付く瞳を眺め。そこでふと目に留まったのは口元の黒子。“点がある”程度の認識で何の気なしに手を遣り人差し指で触れた時、入室を伝える掛け声と共にスライスされた肉ののった皿を手に唐突に人間が現れ。彼の双眸が至近距離にある男二人を捉え隠しきれない驚きが浮かび、狼狽えたように視線が左右へ振れたのも束の間、その手から皿を?っ攫うと素手で掴んだ肉を生のまま頬張り更に人間を唖然とさせ )
うおッ、肉だ！！肉！！うめェ！！

だろ。貸しといてやるから存分に食えよ。経費は“半悪魔と良好な関係を築く”為と言えば大体通る。
( 良好な反応に自信ありげに口角をやや持ち上げ、次いでに小賢しさを垣間見せ。直後肩を落としたのは自身より長く伸びた髪に充てがう物を不所持だという事で。店舗によっては安物の小さなヘアゴムを貸出している筈、流れるような白へ触れようと手を伸ばしかけるもぴたりと動きを制しする。まじまじとした視線を大人しく受け止め。長細く形の良い食指は恐らく黒子に触れたのだろう。スキンシップ未満な行為はまるであらゆる物に触れたがるような歳の離れた妹を彷彿とさせ、不意に撫で回したくなる欲求が顕著に溢れ。一声かかり我に帰れば、店員から生肉の乗った大皿を掻っ攫いそのまま口に運ぶ相棒の姿。説教は後にし、このカオス極まりない状況下から店員逃してやるべく、目を白黒させる彼に点火して貰い。段々と温かみを帯びる空間とは相反し生肉を咀嚼する相棒は言葉選ばず言えば異様。逃げ去るように幾つかの皿と二人分のコーラを置いて、何故か深く頭を下げ足早に退室する店員の背中を見送り。仕切りのある小皿にタレや塩、レモンを相棒の前にも置き、熱された網の上に肉を置いていき )
それ生肉だぞ、腹壊すだろ。…半悪魔の身体の構造は知らないが。ほら、ちゃんと焼いてやるからそっちを食え。

壊さねェよ。なァまだ？もう焼けた？
( 経費やら何やら、相手の使う言葉は時々難しすぎて理解に至るまで消化できない。何となくニュアンスで察したのは幾らでも食べて良いという事、皿の上に残った肉も平らげてしまおうとするのを窘められると憮然として唇を尖らせ。人間が置いていった幾つもの皿の上に美味そうな肉が綺麗に並んでいるというのに、それに手を付ける事ができず待てをされている状態は幼い子供と同程度の自制心しかない己には耐え難い。今正に網の上で耳触りの良い音を立て始めたばかりの肉と相手を交互に見ながら頻りと問い掛け、その落ち着きのない姿は今にも網の上に手を出さんばかりであり )