匿名さん 2022-05-28 14:28:01 |
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( Dear Vivienne, I haven’t seen you for a long time……
そんな書き出しで始まる手紙をビビが受け取ったのは、建国祭最終日、建国記念日当日の朝のことだった。朝一の門前から、自分の名を呼ぶ聞き知った声に慌てて飛び起き。ネグリジェに薄手のカーディガンを羽織っただけの格好に、目を剥いたギデオンと揉み合いになりながら、馴染みの郵便屋である青年の前に二人揃ってまろび出れば。「おはよう、ビビさん! 速達ですよ、……」と、今日に限っていつも元気な青年の笑顔が、どうも引きつって見えた気がしたのは気の所為だろうか。
閑話休題。封筒の宛名の上に、緊急の速達を表す押印がなされた手紙を開けば、それは学院の中等部卒業を待たずに、キーフェンへと嫁いで行った友人からのもので。──ここ数日、配偶者の商談についてキングストンに来ていること、そして、商談が少しだけ早く終わったので、午後の帰りの船便までにどうか一目でも会えないか、といった誘いの言葉が、とても懐かしい、しかしすっかり大人の夫人に相応しい筆つきで書かれた手紙に目を細め、隣にいた恋人へ二、三学生時代の思い出を楽しげに語って聞かせれば。とはいえ、ギデオンとの先約をして、断るつもりでいたのだが。折角なんだから会ってくればいい、という優しい言葉に、「~~~ッ、ありがとうございます!! ギデオンさん大好き!!」と、熱烈なハグで優しい恋人を送り出したのが今から数時間前のこと。 )
──…………。
( そうして、懐かしい友人とのつかの間の再会を果たせば。その実は政略結婚だったとはいえ、穏やかそうな旦那さんの隣で、幸せそうに微笑む旧友を前にして。もう焦燥の念こそ浮かばなくなれど、色とりどりのテープたなびく出港のムードに、当てられた節はあったかもしれない。──早く、早くギデオンさんに会いたい、と。思えば一年と少し前、初めて仕事を共にしたあの日も、こうして息を弾ませ、約束の場所、憧れのギデオンの下へと駆けていた。あれから変わったことといえば、あくまで上司と部下に過ぎなかったその関係と、全身に纏っているその装い。
旧友とはいえ、既婚の夫人に会うための午後用ドレスは、夢見るようなオーキッドに、深紅の意匠が、あの素晴らしい舞踏会の夜を彷彿とさせ、思わず衝動買いしたおろしたて。頭には普段元気に揺らしている尻尾の代わりに、ドレスと揃いの帽子をつけて、馴染みの赤いスカーフは結い上げた髪に編んでいる。ギデオンに貰ったハンカチーフと揃いの模様を編んだ手袋の手の中には、これまた見事な総レースの日傘を携えているのだが、動きの邪魔を苦にしてすっかり畳んでしまっているのはご愛嬌だ。──駆ける、とはいっても。動きやすい白ローブ姿だったあの日とは違い、足さばきの悪いドレスと華奢な靴で、ボコボコとした石畳を人混みの中を縫うように進めば。馴染みの広場に入った途端、やはり今日も一目でわかるほどにギデオンは輝いていて。本当は渓谷のトロイトのように駆け寄り、全力で飛びつきたいところをぐっと堪えて、ごった返している広場を進む間。──ギデオンさん! と、その内心の叫びが届いたかのように振り返ったギデオンに、ぱあぁっと満面の笑みを浮かべると、パタパタと大きく手を振って。 )
ギデオンさん、お疲れ様です!
怪我とかしてないですか? もうご飯食べました?
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