Petunia 〆

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匿名さん  2022-05-28 14:28:01 
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  • No.944 by ギデオン・ノース  2025-11-01 12:54:46 




(すっかり静まり返った中で篝火だけが時折爆ぜる、真夜中のギルドロビー。そこに立ち尽くす愚かな男は、娘が毅然と消えていった闇の向こうを眺めたまま、未だ青い目を惑わせていた。……結果的には、ほとんど望んだとおりのはずだ。これからしばらく構わなくていい、冷静に距離を置かせてくれ。自分は確かにそう主張して、彼女もそれを聞き入れた。ただし予想外だったのは、彼女のあの揺るぎなさ、静かに放っていた怒り──そしてサリーチェを去ったこと。何をいったいどうしたら、彼女まで“家に帰らない”などと言い出す羽目に繋がるのか。……それがわかる男であれば、こんな事態にはならないわけで。
足元に視線を落とし、やがて彼女が残していった着替えの包みを回収すると、エントランスに背を向けて上への階段を昇り。熱いシャワーで汗を流して、ひとまず替えの衣服に着替え、また別の階へと移ると。ベテラン用の仮眠室でも未だ替えられるとこのない、五十年モノのぼろの寝台……しかし誰の気遣いだろうか、いつにも増して清潔なリネンが敷かれたその上に、連日残業続きの躰をようやくのことで横たえて。だがしかし、隣にある若手用の大部屋から元気ないびきが聞こえなくとも、こうして目が冴えたことだろう。
何度も瞼を閉じては開けて、闇の天井に蘇るのは、強い光を跳ね返すあの大きなエメラルド。『少なくとも、私が"すべき"かどうかは自分で決めたい』──何を今更、言うまでもないだろう。彼女は元から自分とこちらを切り離しているではないか。だからこちらも、相応に構える必要が出たというのに──歪んだ顔を片手で覆い、重苦しいため息を吐く。苛立ちが胸に渦巻く、だがどこか決まりの悪いむかつきまで込み上げてくるのは何故。
寝返りを打ちながら、うつらうつらと眠りに落ちる。夢を見たような気もするが、ごちゃごちゃと乱雑なばかりで、起きた後には覚えちゃいない。だがしかし、夜明け前には覚醒してまたすぐ動きだしたとき、ふと明確な違和感を覚えた。ごく短時間、何なら気分の悪さに苛まれながら横になっただけなのに、驚くほど体が軽い。まるで昨夜からたっぷりと熟睡したかのような──良質な支援魔法を、絶えず受けているかのような。
気づけば頬に伸びていた手を、しかしすぐに、どこへともなく目を逸らしながらぎこちなく引き下げる。──得られると思ってはいけない。くだらない夢は忘れて、ただ現実に、仕事に打ち込め。これまでだってそうやって、上手く乗り越えてきたはずだ──それで正常になるはずだ。)



(……何やら、他方のジャスパーが不機嫌だったという噂を聞くが。ギデオンと同じ班だった若手冒険者や見習いたちは、地道な役に徹しながら着実に仕事をこなすギデオンの背中から、この夏実に多くのことを学んでくれていたらしい。ギデオン自身にしてみても、後輩たちが裏方を厭わず奮起してくれるのは、見ていて気分の良いもので、いつにも増して育成に精が出る日々を送った。だがそれは、結局のところただの現実逃避に過ぎず。己以上に各所で大活躍を誇ったヒーラー娘の評判に無関心を気取ったツケは、すぐ回ってくることとなる。
祭も終盤となった夜。班の出番はほぼ終わり、明日はシフト調整により時短勤務となる段で、ギデオンはようやく一度ラメット通りに帰還した。ベテラン用の仮眠室が諸事情で満員となり、近場に自宅のある者が帰らぬ道理がなくなったのだ。本当はどこか、近場の宿にでも泊まりに行こうと考えたのだが、何せ今年の建国祭は来場者数が桁外れ、王都東部の宿泊施設はどこも当然満杯で。それならば仕方ない、ほんの数時間戻るだけ、最低限寝に帰るだけだ。そう自らに言い聞かせながら玄関扉を開けた時、しかしギデオンを圧倒したのは。
──明かりひとつ灯らぬ我が家の、しんとした……静けさだった。)

(……何も、動じることはない。明日の準備をするだけだ。
壁の燭台に灯をつけて、玄関脇に荷物を下ろす。そこから取り出したこの数日分の衣類を魔洗槽に突っ込んで、買ってきた安上がりの夜食を広いダイニングテーブルに置く。辺りを見回す、ソファーにも勝手口にも人の気配はまるでない──空き巣を警戒しただけだ。ざっとシャワーを浴びてから、魔導コンロを軽く熾して夜食のひとつを火にかけた。だがすぐに止め、温いそれを胃の中に詰め込んで、匙が進まず残った分を明日に回すことにする。ぴかぴかの食器棚からガラスの器を取りだし、次いで食料棚へと移る。扉を空けるとほとんど空だ、保存のきく食材以外は一度処分してあるらしい。顔を逸らして扉を閉ざし、浴室へ行って歯を磨き、その間鏡を見ないまま、洗い終わった衣類を干して、一度玄関の方へと戻る。鞄から引き抜いたのは明日に向けての仕事の書類で、ソファーにどっかり腰を下ろすと、四、五枚ほどに過ぎないそれに時間をかけて目を通す。二周、三周──疲れているのか、頭にあまり入ってこない。何とはなしに玄関を見て、すぐに書類へ目を戻す。これを書いて寄越したのは、いかつい見てくれに不似合いな達筆の主フィリベールだが、どうも調子が悪いのか、今日の奴の筆記体は目が滑ってかなわない。書類を諦めて脇に置き、沈み込むように頭を覆う。首に手をやり、ため息を吐く。そこで初めて気がついた、どうにも気分が落ち着かないのは、耳鳴りがうるさいせいだ。サンソヴィーノの大窓を見る──越してきたときは気づかなかったが、嵌め込み式の魔導回路の悪影響でもあるのだろうか。フェニングに問い詰めなければ。
とはいえ、今夜は何もできない。横を向き、また息を吐き、意を決して腰を上げる。階段を昇っていくが、寝室で休むつもりはなかった。明日は数日ぶりに朝から素振りをする気でいるから、どうせ三、四時間の睡眠をベッドで寝るのも馬鹿馬鹿しい。ブランケットだけ回収したらソファーでしばらく横になろう、そう考えて部屋に踏み込み、辺りにあまり視線を向けず目当てのものだけ回収する。そうして足早に階段を降り、壁の灯りを吹き消して、寝入ろうとした……その、はずが。
ソファーに横になる前に、ばさり、と布をを広げた瞬間。ふわりと鼻に届いた香りに、がつん、と頭を殴られた。思わず後ろに軽くよろけて、思考を振り払おうと必死にかぶりを振るものの。感覚にじかに働くそれが──この家に一緒に住んで早二ヵ月、すっかり手に入れていたはずのヴィヴィアンの髪の香りが──しかしこの数日で、古く薄れつつあるそれが──思考を、たちまち呑み込んでいく。

──彼女はどこだ、今どこにいる。今はだれと、どうしている。
──……別に失踪したわけじゃない、ちゃんとギルドに来てるじゃないか。大げさに案じなくていい、以前と変わりないだろう。
──違う、今の、彼女は、どういう。いったい何のつもりで……今は、何を考えて。
──……わかりきっているだろう。彼女自らこの家を出た。お前がまともになれるまで、お前とといるのを望んじゃいない。
──……約束を守れないのか? 仕事を終わってからにしろ、お前の“責任”なんか要らない、そう言われていたはずだ。

ここ数日の内なる声が寸断なく口を挟むが、以前よりも必死なそれは、リビングを歩き回る落ち着きのない足音に、暴れ回る胸の鼓動に、たちまちのうちに掻き消されていく。──彼女が行方をくらませた先が、おそらくいちばんの親友だろうエリザベスの家でないことは、昨日受付で本人にかぶりを振られて知っている。スヴェトラーナも違うというし、アリアは今不在の身。マリアは幼い息子がいるから、良識のあるヴィヴィアンが闇雲に頼るはずもない。ならばどこだ、どこにいる──ひとりで宿でも取っているのか? 浮かれる王都に漬け込むような物騒な事件があったと、この前話したばかりだろうのに。こんなに簡単に出ていけるのか──二度と戻ってこないつもりか──こんな、こんな……呆気なく、消えてなくなるものなのか。
実際に凍り付いていたのは、恐らく数秒のことだろう。しかし目まぐるしい思考、噴き出すような感情に、この数日の平静を無理に守っていた意固地の箍が、とうとう派手に撥ね飛んだ。──玄関脇のキーフックから家の鍵だけ引っ掴み、トレーニングにも使っているいつもの夜着の格好のまま、夏の夜道に飛び出していく。見当がつくわけでもなければ、彼女と何を話そうと考えていたわけでもない。ただの短絡的な衝動、どこをどう見ても繕うべくもない愚行──そうとわかっていながらも、それでもラメット通りを駆け抜け。道行く乗合馬車の御者に気をつけろと怒鳴られながら、いつの間にやら駆け込んだのは、ギルドからそう遠くない住宅街の路地裏で。)



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