匿名さん 2022-05-28 14:28:01 |
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……!
ありがとうございます、すぐ戻って来ますから、待っててくださいね。
( 確か、以前にもこんなことがあった。昨年の秋、当時キングストンに蔓延していた"幸福のおまじない"騒動の調査中だったか。一件落着の賑わいの中、それでも必ずビビの調子に気がついてくれるギデオンにきゅんと胸を鳴らし、楽しげな市民達に駆け寄る寸前、溢れ出る愛おしさを大好きな相手の頬に落とすと。そうして相手に触れたことで──やっぱり少しお疲れだわ、と。疑念から確信へ変わった違和感をこの場で指摘しなかったのは、紛れもなく相手の体面のためだった。しかし、この一連の騒動の後、警備体制の見直しのため、家に寝に帰ることすら難しい多忙が相手を襲うことを知っていれば、担当治療官、恋人、そして唯一の大切な相棒として、このままギデオンを送り出すことを決して許しはしなかっただろう。 )
──……ギデオンさん?
( それから数日たった日の夜更け。素朴ながら格式高く整えられたギルドロビーに特徴的な、途中から木材の色が変わるその柱の陰で、休憩中の恋人に遭遇したのは完全なる偶然だった。毎夜帰ってこられるか分からない相手を待ち、彼の好物が並ぶ夕食を、一人翌朝の寝ぼけた胃に無理やり押し込み続けること数日。そんなことや個人的な寂しさなどは構わないのだが、ただ調子のおかしかった相棒の体調が心配で。仕事のお邪魔にならぬよう、他のベテラン勢達の分も一緒に、祭りで調達してきた軽食をそっと差し入れたり、あまり使われた形跡のない仮眠室のリネンを整えたりと、警備のシフトが終わってからずっと一人でこなしていたものだから。そろそろギデオンの着替えがなくなる頃だと気がついて、一度家へと帰ってから、もう一度ギルドへ戻ってくる頃には随分と遅い時分となっていて。
そうして閑散としたロビーを眺め──こんな遅い時間まで、ギデオンは頑張っているのに、私は何もしてあげられない。そう、ここ数日、いつ玄関の扉が開く音が響くやもと、深く眠れていなかった疲労の蓄積が、思考を良くない方向へと引っ張ろうとするのを頭を振って振り払い。さっと届け物をして早く帰ろうと、冒険者の私書箱が並ぶ方へと、広いロビーをショートカットしようとしたところだった。ただでさえ薄暗いロビーの柱の陰、もう殆ど真っ暗といって差し支えない、視覚の利かない闇でさえ、その気配、その息遣いだけで愛おしい、他でもない、大好きな相手だとわかるのだから心底不思議だ。──疲れては……いるだろう。眠れているか、十分な食事はとれているか、何か辛いことはないか、そうどんどんと口から溢れそうになる質問をぐっと堪えて、確かな足取りで最愛の人に近づけば。ただでさえ大変な仕事に追われているギデオンにこれ以上負担を感じさせないよう、意図してぱっと明るい声を出し。 )
お疲れ、様です……ちょうど良かった、コレ──替えの服がそろそろ無くなる頃かと思いまして……それだけ!
……なので、今日はもうすぐ帰るんですけど、何か他に欲しいものとかあったりしませんか?
私書箱に入るものだったら入れておきますけど……
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