匿名さん 2022-05-28 14:28:01 |
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──ああ、頼んだ!
(魔剣の柄を今一度強く握り直せば、なみなみと湧き上がる底知れない生命力。ここまでしっくり来るバフは、その道およそ云十年の熟練レベルであるはずで、相手と合わせた薄青い目を、面白がるようにふっと狭める。──ワーウルフ狩り、ファーヴニル狩り、アーヴァンク狩りに呪傷の治療。相手の支援を受ける機会は、これまでたしかに幾度かあった。しかし決して多くないし、己と彼女が組みはじめてから、まだ二ヵ月も経っていない。それだというのにこの娘は、既にギデオンの身体を読みきり、的確な支援魔法を最高効率で寄越してくれる。前衛の戦士にとって、それがどれほど快いことか。
──襲い来る蔦を足場に天高く躍り上がり、月を背に大きく反転、そこから一直線に落下。右手の魔剣の切っ先を稲妻のように閃かせ、力強く着地すれば、こちらを狙って蠢いていたこの森の巨大な蔓が、数秒の遅れを持ってばらりばらりと裂けていく。眺めていたエジパンス族たちに「!?」と走る動揺の波。かれらが皆一様に蹄を一歩下がらせた、その中央で立ち上がるこちらのほうは、まだ戦るかというように軽く不敵な笑みを浮かべて。ここでようやくエジパンス族も、稀代の天才ヒーラーの支援を受けた魔剣使いが、たった単騎でどれほどの脅威になるか、呑み込み始めてくれたようだ。リーダーらしき一頭が大きな震え声で嘶き、皆森の下闇に飛び込んでの一斉退却が始まった。このまま一度逃がしてやってもこちらは問題ないのだが、しかし一応、手持ちの碑文を盗まれたというふりは貫かねばならない。「ヴィヴィアン!」と相手の名を呼び、最低限の荷を回収して共に同じく闇へ繰り出す。
──駆けるふたりを照らし出す、木々の根に茂る夜光草、時折差し込む月明かり。先を行くエジパンス族は小癪なルートを選ぼうとするが、冒険者であるギデオンたちは、そもそも身体能力がそこらの常人と桁違いだ。時折待ち受ける障害ですら、己の魔剣か彼女の杖が容易く無力化してしまうから、こちらを振り向くエジパンス族がぎょっと二度見をするのが見える。それを受けてふっと笑うと、真横の娘にちらりと目を向け、息も乱れぬひと声を漏らして。)
ヴィヴィアン──……楽しいな。
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