匿名さん 2022-05-28 14:28:01 |
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ローゼン、クロイツァー……、
( 一体全体どうしてしまったというのか。疲労の剣士が思わぬ茶の旨味に、険しい視線を柔らかく解いたその瞬間。目の前の娘もまた、その剣士の横顔をぽうっと蕩けた視線で見つめていた。──乱れた頭に、伸び放題の無精髭、目の下が黒々と落窪んだ表情は、いつもより軽く十は老けて見え。その上いつもはパリッと手入れのされた上衣でさえ、今は見る影もなくヨレヨレである。そんな忌避感さえ感じこそすれ、決して魅力的だとは思わなかったはずの相手の姿に、未だ無自覚な母性をどうしようもなくかき乱され、その窮屈な胸をぎゅんぎゅんと強く締め付けられていたものだから。不意に向けられた薄青に、赤らめた頬を逸らして、緑色の視線を気まずそうにさ迷わせれば。その返答の歯切れが随分と悪くなったのは、折角、尊敬する大先輩から頼りにして貰えたというのに。相手の求める第三者機関を、すぐにでも約束できないもどかしさのためだけとも言えないだろう。 )
第三機関、だいさんきかん、……ですよね。
うーーーーん、その、心当たりが無いわけじゃ、ええ……無いんですけど。
確定じゃないので、えっと……。
( 「……一応、ガリニアの方に、知り合いの学者が」その"彼"を通して、あちらの学院の調査期間を頼ることが出来れば、ギデオンのいう第三期間としては、これ以上なく申し分無いだろう。なんて、常日頃からハキハキと、真っ直ぐにその翡翠を煌めかせる彼女にしては珍しく、長い睫毛の影を落としたかと思うと。非常に歯切れ悪く、下唇を噛んだその脳裏には──当の娘と瓜二つの麗しい美貌を誇る、偏屈五十路大魔法使いの切りそろえられた金の毛先が揺れる。その複雑な真意を打ち明けられる程、この時のベテラン剣士と、若手ヒーラーの仲は未だそれほど深くないが。「忙しい人なんです」と、「でも、ギルドの危機だったら、力を貸してくれると思います」なんて、まるで注釈に"ビビの個人的なお願いを聞いてくれるかは分からないが"とでもつけたそうな表情で自嘲すれば。ぱちん、と打った柏手は、自分から意味深な含みを持たせておいて、それ以上の追随を許さないといった卑怯な布石。「連絡をとってみますので、2,3日ほどお時間頂けますか?」そう自然に細めた視線の先には、見慣れた精霊の姿がこの場ではビビだけに見えていた。──なんにせよ、まずは現物を探し出さないと、第三機関もへったくれもないのだ。そのためにも、 )
──じゃあ、お茶飲み終わったら、そろそろ肩診せてくださいね!
( なんて、繊細な男心を理解しない一撃を食らわせた若ヒーラーを通して。激震のカレトヴルッフに、ガリニアの魔導学院から協力の打診が届いたのは翌朝のことだった。ビビのことを信用していないのか何なのか、"彼"が定期的に飛ばしてくる精霊さんにお願いしてはいたものの、まさかこんなに早く返答が来るとは──やっぱり離れてもギルドのことは今も大切なのね。と、どうにも報われない父親の哀愁はともかくとして。
ガリニア魔導学院が対価として要求してきたのは、向こうの政治闘争の影響か、ガリニア国内ギルドが、学院の依頼を黙殺……否、"討伐に非常に手こずっている"ドラゴンの討伐協力で。それと引き換えに、タブラ・スマラグディナ発見後の解析を引き受けてくれるというガリニア魔導学院からは、もう一つ。トランフォードがガリニアから別れるよりはるか以前より、ガダウェル山脈の一部地域に定住しているされる先住民の部族。魔獣の多いトランフォード地方に増して、更に危険な地域で生き延びる身体能力や、独自の武力を持ちながらも、大国の政治には興味が無いのか、彼らが大切にするのは彼らの神だけ、そんなごくごく温厚な性格だった筈のその彼らが、最近どうも苛立っていると。度々、山を降りてきたかと思うと、ガリニア勢力圏の小さな村々を脅かしていく、彼らの言葉が分かる地元民曰く、彼らの神から賜った翡翠の秘宝が盗まれたらしい、といった情報が寄せられて。 )
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