匿名さん 2022-05-28 14:28:01 |
|
通報 |
( マルセルとフェルディナンド。天下のカレトヴルッフが誇る問題児両名が、此度も盛大にやらかしたらしいという噂を、恋に恋するヒーラー娘が聞いたのは、事が発覚したXデーから数日たってのことだった。このヴィヴィアン・パチオの名誉のために補足するとすれば、いくら諸般の事情で同期と馴染み切れていないとはいえ、普段から決して情報に遅い方では決してないのだが。今回ばかりは、たまたまこの数日、母校魔導学院たっての依頼で首都キングストンを留守にしており、先程やっとギルドへと帰ってきたところだったのだ。まずは依頼報酬の貴重な薬草の類を片付けに医務室により、その足で上層部へと報告しに行こうとしたところへ、「あ、今はやめておけ、ちとタイミングが悪い」と、日ごろから世話になっている魔法医に声をかけられれば。──タイミング? と首を傾げたビビを見て、「いや、まあ……お前さんならいいか」と。昔から何かとヴィヴィアンに甘い御仁から今回の顛末を知ることとなり。
そうして、タブラ・スマラグディナの歴史的価値や、カレトヴルッフどころか、トランフォード冒険者ギルド協会自体が吹き飛びかねない時価総額……しかし、そんなものよりずっと。気にかかるのは、病み上がりの身体でもう四日もろくな休息を取らずに働き続けているらしい"彼"のことで。他の仲間たちに覚える心配とはまた違う、あの海上の夜からずっと、楽しく甘えて擦りついている時でさえ拭えない酷い焦燥感に俯けば。──……、ギデオンの坊主なら、四階の執務室だぞ、と教えてくれた魔法医へのお礼もそこそこに。元気よく飛び出していった直情型ヒーラーに、「まあ、坊主にゃいい薬になるだろうて」という呆れ声が届くはずもなかった。)
……あっ、いえ、私、ギデオンさんがもう四日も休まれていないって聞いて…………
( そうして、勢いよく開かれた扉に対面すると。思わずその両手で持ったお盆の上のティーセットが、音を立てて震えるほど縮みあがったのは、相手のあまりの容貌に驚いたからで。いつものパリッと小洒落た相手からは想像もつかない草臥れた姿。見た目だけじゃない、四日も帰っていないのだから当然と言えばそうだろうが、むっと漂ってきた男臭い香りも、この稼業についていればもう慣れっこである筈なのに。目の前のこの人からしていること自体がどうにも信じ難く混乱する。ともすればそんな百年の恋も冷めそうな状況だと云うのに、ショックを受けるどころか、胸に湧き上がる、この人を放っておけないという想いにぐっとギデオンを見上げると。相手が少しでも断ろうとする節を見せれば、多少強引に押し入る覚悟で。 )
……リラックス効果のあるハーブティなんです。
淹れ方にコツがいるので、中に入れてくださいませんか?
ちゃんと少しでも休まれないとダメですよ。
| トピック検索 |