匿名さん 2022-05-28 14:28:01 |
|
通報 |
……いえ、その、5年後も一緒にいてくださるんだなって思ったら嬉しくて!
( それは生きてきた年月の違いからくる、時間感覚の違いに過ぎなかったのかもしれない。しかし、年若いヴィヴィアンにとっては決して短い時間ではない、これまで相棒として過ごしてきたよりも、ずっと長い歳月を当たり前のように信じてくれる恋人に、思わずきゅんと言葉を詰まらせれば。熱く火照る耳先をくりくりと面映ゆそうに弄び、潤んだエメラルドを震わせて。そうして、嬉しそうに「わあ! 確かに、ふっかふかですね!」と相手の隣に腰掛ければ。上質なスプリングに任せ、上下にぽよぽよ揺れて見せるも、正直、もう内心マットの良し悪しなんてどうでも良かった。ギデオンさんが隣にいてくれるのなら、私ドラゴンの鱗の上で寝たって構わないな──なんて、そんな自己陶酔に浸っているから、“普通に使っていたら”、先程のマットだって十分に5年は使えそうだとか、収納ってそんな小さい引き出しのことじゃなくてだとか、色々と大切なことを見落とすのだ。しまいには、確かに運搬料だってかかるんだし、ギデオンさんが言うならそうなのかもしれないなどと、すっかり上手く乗せられている自覚のないまま、戻ってきたマダムの助言に滑り止めやら、素材やらのオプションを幾つか見繕えば。ベッドの他にもいくつかの家具を含め、あれよあれよという間に、契約書等を纏めた書類を受け取っていたのだった。 )
お……お休みの日は、少しでも長くベッドの上に居なくちゃ……
( 結局、支払いの段階でやっと僅かばかりの冷静さを取り戻すも、帰りの馬車の中、本人はいたって真剣な表情で呟く内容がどこまでもずれているのはご愛敬。5年どころか、ベッド本体は一生使えそうな代物に、その視線は何処か遠い宇宙を映しながら、ぐっと両こぶしを握りこむと「ギデオンさん! 帰ったら相談したいことがあるんです!!」と。それは、これから始まる共同生活にあたり、特に経済的な方向性で、一方的に相手のお世話にだけなるつもりはないのだと。改めて伝え直すべく、帰宅後に時間をとってもらった時だった。まずは月々の細かい収支を確認すべく、約束通りに持ってきてもらった賃貸契約書に目を通すと、暫くして「………?」と首を傾げ始め。「あの、ギデオンさん………」と、指し示したのは月々の『家賃』とは別に記載された『共益費』の項目。家を借りる際に名目上の『家賃』とは別に、その他雑費がかかることは、流石の箱入り娘とて、この下宿を借りる際に知っていたが──……否、なまじ中途半端な経験があったからこそ勘違いしていた。ビビの知る『共益費』は家賃の数分にも満たない、あくまで雑費の粋を超えない程度だったが、完全な富裕層を相手にした住宅は訳が違う。警備費、補償費、清掃費……この書類から計算するに名目上家賃同等か、月によってはそれ以上の額に上るそれを正確に認識した途端、あまりの衝撃に目眩を覚え。家賃の半額だってギリギリだというのに──いや、寧ろ引っ越す前に判明して良かった、と。腹を決めたところまでは良かったのだが。その後のあまりに言葉足らずな宣言から生じる誤解に思い至れない程度には、内心かなり動揺しているらしく。入居の数日前になって、あまりの申し訳なさからそれ迄くっついていた上半身を離すと、真っ青な顔を横に振り。 )
──…………ごめんなさい!!
どうしよう、私ギデオンさんと暮らせない……
| トピック検索 |