匿名さん 2022-05-28 14:28:01 |
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(“頼れる恋人、ギデオン・ノース”。己よりずっと若い彼女にきっと相応しいそれを、自分はここ数週間、努めて演じ続けたつもりだ。だがしかし、ピュアを煮詰めたような娘のとんでもない発言に、一度びきんとひびが入れば。辺り一面に展示されている素晴らしいベッドフレームを、彼女が熱心に眺める間……ギデオンのほうはと言えば、その場にじっと佇んだまま、大きな片手で険しい顔を覆い隠して。
……ああ、そうだよな。収納のことも、ちゃんと考えておかないと。それで……そうか。ヴィヴィアンのほうも、俺と眠るのが嫌じゃないと。それどころか、むしろたまにはくっついて寝たいと。普段は遠慮してすらいると。そうか。なるほど。抱いてもいいか。
──なんて本音は、しかしまだ言えやしない。なまじ恋仲になったからこそ、下手な冗談に聞こえないせいだ。それに何より聖バジリオの、あの担当医からのお達し……退院してまだ数日の、相手の体が第一だろう。
故に何とも歯痒そうに、一度眉間の深い皴をぎりぎりとより極めたものの。ようやく顔を上げたかと思えば、その面は今度はス──ンと、酷く冷静に凪いでいた。やがてこの先何年かギデオンを眺めるうちに、彼女も気づきはじめるだろうか。……この慎重居士の魔剣使いが、もはや盛大に開き直ると決めたときの面である。)
いや、マットもフレームも、しっかりしたものを選んでおくほうがいい。
二階に運び上げるのに一苦労だろう? だから──最低、五年は保たせてみせないと。
(まったく、何が“保たせる”だ。その意味深な物言いの訳を自分からは明かさずに、相手の手を取り立ち上がらせて、別のコーナーに連れていく。どうやらそこは、彼女が今までそれとなく避けてくれていたであろう、この店の最高級品が並んでいる一角らしく。仮に相手に見上げられても、そこにある男の横顔は、まったく揺るぎやしないままで。
ヘッドボードにさりげない引き出しがついているものをふと見つければ、「これなんかは便利そうだな」と、はたまた何を常備するつもりなのやら。ともかくそのベッドの、どっしりとした脚の太さをいたく気に入ってしまった様子で。先にベッドに深く腰掛け、その据わり心地に(ほう)という顔で見下ろすと。ふと相手に顔を戻し、緩く腕を広げては、当たり前のように誘って。)
これに合わせるマットレスは、やっぱり……ほら。この店独自の、『メーラースプリング』ってのが、いちばんフィットするらしい。
……ほら、お前も、こっちに来てみろ。
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