匿名さん 2022-05-28 14:28:01 |
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( しゅるり、しゅるり、と髪に触れる手が心地よくて、そっと花の香りに目を伏せる。花冠なんぞしたことないぞ、と言いながら。甘くビビのおねだりに応えてくれるギデオンに、こうして甘え切ってしまったのは、我ながら自分の常識が伝わらない村に疲れていたのだろう。きゃっきゃと上がる歓声に、時折子供たちのことを見守りながらも、束の間の休息を戯れていたその時。──そうだ、何を弱気になっているのか、と。背後からかかった穏やかな声に、他の冒険者達とは違い、ただ子供たちと遊んでいただけにも見えるヴィヴィアンもまた、情報収集していたに違いないと信じてくれているギデオンに、少し弱気になっていた頭を小さく上げれば。長い脚の間で座りなおして、できうる限りの報告を。 )
魔獣のことは……確かに出るには出るらしいんですが、あの子達には危険だから外に出るなとしか。“英雄”が守ってくれる……みたいなことも言ってましたが、こっちは大人に聞いた方がいいでしょうね。
──でも、気候についてはバッチリですよ! ……なんて、むらおささんの仰っていた通りで、火山の地熱を利用しているんですが、古代魔法をそのまま守り続けているみたいです。
一度解除してしまうと、かけ直しができないので──……ねえ、君たち、本当はあんまり魔核の場所とか知らない人に話しちゃ駄目よ。悪い人もいるんだから。
( そう最後に語り掛けたのは、大の男が自分たちと同じ遊びをしているのが物珍しかったのか、いつの間に二人の周りに戻ってきていた子供たちだ。年中枯れない花畑を調べていたビビの気を引きたかったのか、先程、その仕組みをようようと語ってくれたお調子者と。その隣で「ナイショなのよ」と、村の魔術師が定期的に通う場所まで教えてくれた妹の方は、ビビの膝の上を奪い合い。彼女も彼女で純粋に、年少組の暴露に慌てふためき、「ああっ、ダメダメ! ……忘れてね、ビビ?」とダメ押ししてくれた姉の方は、熟練の職人の顔をして、今やギデオンの手つきにアドバイスをくれている。(どうやらすっかり仲間認定されたらしい)ギデオンとビビがこの村のことを調べに来たということを知れば、未だ冒険者見習いにもなれないような小さな子達だ、あまり要領を得ない点は多々あれど、必死に村での生活のことを教えてくれ。少しずつ日が傾き始めた時分、村を見下ろせるこの丘からだからこそ見えたのだろう。この遅い時間から、村から対角線上にのびる獣道に上っていく村民を見かけて、何があるのかと問いかけたヴィヴィアンに、「あっちにもお花畑があるのよ、こっちよりもずっとキレイなの……」と、教えてくれようとした瞬間だった。下の村から、そろそろ帰って来なさいと声をかけてきたのは姉妹の母親らしい。ビビと同年代か、ひょっとするともっと年若く見える妊婦は、ギデオンに遊んでくれていたことへのお礼を告げると。「本日は広場で御馳走が出ますので、冒険者様たちも宜しければどうぞ」と小さく微笑むだろう。 )
──わあ、それは皆さん喜ばれますね。エデルミラさんも呼んでこなくちゃ。
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