Petunia 〆

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匿名さん  2022-05-28 14:28:01 
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  • No.670 by ギデオン・ノース  2023-11-18 15:07:31 




ん……、…………、

(ギデオンの横髪辺りをぺしぺしと咎めてみせる、いとも力ない手つき。しかしそれすら、情欲にますます火を注ぐ燃料なのだということを、相手はわかっているのだろうか。鼻腔を満たす石鹸の香り、不規則に跳ねる柔らかな肢体。這いまわる唇の下、ぶわりと上がる体温や、今はまだ貞淑に……でもどこか堪えるように……ぴくぴくしながら閉ざされている、魔力弁の感触さえ。己をどろどろに蕩かしてしまう、甘い甘い媚薬に他ならない。体中がぼんやりと痺れるような感覚に、酷く満足気に息を吸いこみ、震わせながらまた吐き出す。それだけでさらに慄く相手には悪いようだが、こちらはまさに夢心地だ。
──ギデオンは、未だ知らない。魔力弁を介した直接の魔素交換が、見る者が見てしまえば、どんなに鮮烈な痕を残すか。物体の魔素は幾らか読めるようになったところで、それよりもっと複雑な構造をした人体については、プロの魔法学者や医療従事者と同じ見方ができないのだ。故にその視覚的な影響については、一応無罪と言えなくもないのだが。この行為に伴う、摩訶不思議で……強烈な快感。それがいったい何に似ているかについては、寧ろ知り尽くしていただろう。
ヴィヴィアンとの戯れに暫く溺れていたものの、腕の中から抜け出そうとする動きを察知した瞬間。“嫌だ”“取り上げないでくれ”と。恋人繋ぎをした五指の先に力を籠め、己の掌をぎゅむぎゅむと押し付けた──そのリズム、抑揚。それがどこか、先ほどの遊戯のそれと似通っていたせいだろうか。ギデオンのそれが上手く吸いつき、抗えずにほろりとほどけた、彼女の器官の素直さに。一瞬はたと静止して、身じろぎしながら身を起こし、相手を見下ろす。困ったようにこちらを見上げるのは、一対のエメラルド。しかしその瞳は、混乱に潤みきっていて──思わず、その豊かな胸元に顔を突っ伏す。何を始めたかと思えば、逞しい両肩をぷるぷると震わせているのだ。途端に上がる悲鳴じみた言い訳、これがなんとまあ、彼女はこちらを退かせるつもりだったのかもしれないが、完全なる逆効果で。とうとう耐えきれずに声を上げて笑いだし、腕枕にしていた方の手を引き抜くと。またもぺしぺし叩いてくる手首をごく優しく奪い、下ろさせ。自分の手はまた枕元に戻してきて、相手の頭を撫でてやるのに使いながら。笑みの引ききらぬ悪い顔で、半月越しの今更な自白を。)

知らなかった、か……っくく、そうだよな。
覚えてるか? あの時、お前は“腰を抜かした”なんて言ってたんだ。
もうどれだけおかしくて……可愛くてたまらなかったか。黙ってるのには、ああ、本当に苦労した……

(憤激している可愛い恋人を、そうして意地悪く、笑いの発作の揺り戻しに耐えながら揶揄っては。相手の反抗なり何なりの勢いを、今も絶えず掌中を責め立てる欲張りな感触で、瞬く間に削ぎ落してしまう。──魔力弁が目に見えないのは、肉体上には存在しない特殊器官であるからだ。そんなにも繊細で摩訶不思議な、普通触れ合わない場所を、こうして自分の意志で動かし……相手のそれに食みつかせ、あまつさえ魔素を流し込む。これがどれほど楽しく、満たされる行為であることだろう。最初は余裕たっぷりに優位を楽しんでいたギデオンも、また息が上がり始めると、「なあ、ちゃんと……引き返せるうちに、確認したい。もし本当に嫌なら……」と、思い出したように尋ねるものの。林檎のように真っ赤な顔をした恋人は、弱々しく否と答えるのだから、もうたまらない。無言で唇を奪い、心置きなく彼女の中へ溺れ込んでいく。
──唇が痺れてしまえば、魔力弁に。魔力弁が力尽きれば、再び唇に。そうして飽きずに高め合ううちに、身体じゅうがどんどんと火のように熱くなる。あの月夜の船上や、昨夜過ごしたひとときとは違い、今日はふたりを隔てる物が少ない。そのせいで、彼女より魔法の素養が低いギデオンですら、半月前の彼女と同じ境地に近づけているようだ。パチパチと頭の奥で鳴り続けてやまない火花、それすらも心地好く。もう数時間も、先ほどのそれと似て非なる快楽を、今度はギデオンも一緒に追い求めていた時だった。
彼女をもっと昇り詰めさせたい、という欲望が沸き起こり、ふとあの夜の出来事をもう一度思い出す。あの時の彼女は、まだ睦事を知らぬ身だった……なのにどうして、“腰を抜かした”か。その解に辿り着いた理性は、「あとで散々怒られることになるぞ」と囁きもしたのだが。思いついたら止まれない──試さずにいられない。既に息の荒い彼女を、ますますぴったりと抱き寄せると。密に絡めあった掌中、すっかりほぐれた魔力弁に、己の熱い魔素をたっぷり流し込みながら。──いつぞやの冬、まだ一応は恋仲ではなかったころ。訳ありで呼んだことのあるその愛称を、本人の赤い耳元に。低く掠れた声色で……吐息交じりに囁いて。)

──ビビ……、



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