匿名さん 2022-05-28 14:28:01 |
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( "いつも"の優しい声音でかけられた、心強く頼もしい約束に、それまで強ばっていた娘の眼差しが、ゆるりとほのかに和らいだ。とはいえ、こうして少しでも身体から力が抜けたのはほんの一瞬で。ギデオンの請求に押し黙って小さく頷けば、無骨な手が釦を外していく慣れた手つきに、肌着から首を抜く生々しい動き。それら全てから目を離せずに、とうとう素肌のギデオンと目が合うと。この時初めて己が見蕩れていたことに気がついて、その認めがたいはしたなさに、バッと勢い良く顔を逸らしたかと思うと、再び恥ずかしそうに縮み上がってしまう。果たしてギデオンの腕の中、素肌に伝わってくる素肌の感触は、良くも悪くもあまりに刺激的で。相手の耳元ではふはふと、緊張で上がってしまった呼吸を震わせることしばらく。──確かに、最初からギデオンはそう宣言してくれていたのだが。ビビにとっては、これ以上ない食べ頃を差し出したつもりにも関わらず。その姿を前に顔色を帰るどころか、いつも以上に穏やかに、大好きな優しい声でビビが安心するようにと努めてくれる恋人に──ギデオンさんは本当に、私の嫌がることはしないでくれる。ちゃんと私を見てくれるんだ。そうやっと実感が追いついて、強ばっていた身体から徐々に力が抜けていく。その頃には荒ぶっていた心臓もいつの間にか、トクトクと心地よいリズムを穏やかに刻んで。愛しい恋人がくれた口付けを控えめに、けれど少しずつ返せるようになってくる。そうして、相手の肩に頬を寄せ、いつもより少し濃い相手の香りに耽溺していたその時だった。ふと頭上から上がった、穏やかな吐息に顔をあげれば、そのあまりにも純粋で嬉しそうな微笑みに、改めて自分がいかに大切にされているかを思い知り。嬉しいようなむず痒いような、温もりに満ちた多幸感に此方も小さく微笑み返すと、「ありがとう、ギデオンさん……」と、相手からすれば牛歩もいいところだろう此方に合わせてくれた感謝に、今夜二度目となる唇への、今度は甘く触れるだけの口付けを。
──さて、そんな感謝は今すぐに撤回すべきだろうか。流石に未だ安心しきってとはいかないものの、ある程度の落ち着きを持ってギデオンとの愛情表現を楽しんでいれば。徐ろに投げかけられた質問に、最初は一瞬きょとりと首を傾げかけ、「ぶりょ……?、!」と、一拍遅れてその意味に気がつき目を見張る。その無駄に迂遠な言い回しで、あくまで自分は真剣なのだと主張している男の、その明らかに楽しげな視線が憎らしく。──自分で? 自分でって……! と、相手の腕という檻の中、顔を真っ赤にして何も言えず。あー、とかうぅ~、だとか、もじもじ俯いている時点で察して欲しいのだが。楽しげな恋人は此方を見下ろすばかりで、一向に助け舟を寄越す気配がない。とはいえ、ここで強く反発すれば、寧ろ無防備な状態で是認するのと同義で。仕方なくギデオンの膝に手をついて、身体ごと少し前に近づいて、ギデオンの耳元に顔を寄せると、周囲に誰がいる訳でもないのに囁くような声で告げたのは、なんとなく大きな声で答えるのがはばかられたからで。 )
──……いっかい、だけ。
この前、がんばるって、約束したから……でも、よく分からなくって、その……
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