匿名さん 2022-05-28 14:28:01 |
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………………ッ、
( ギデオンの穏やかな肯定に覚えたのは、安堵などとは似ても似つかぬ。もはや後戻り出来ぬ(と信じきった)不安と、寧ろ絶望にも近い悍ましい何か。頬を滑る普段は大好きでたまらない温もりも、どこか少し冷たいような、ゴブリンの皮で作った手袋でも被せたような。得体の知れない感触に思えてしまって、頬擦りどころかびくりと小さく固まれば。
しかし、その違和感がこの身体を暴いたならば、それこそビビが望んだ通り。きっと私はこの夜のことを──己が相手のものであることを。きっと忘れずに済むだろう。
そんな自傷に近い確信と、ほぼ同時に促された"お願い"に、いよいよ青ざめた顔へと、精一杯の笑みを浮かべて。相手の逞しい腕の中、たっぷりと焦らすようにして恋人の方へと向き直ると、その片方の膝を跨ぐようにして体重を預ける。そうして、覚えた座り心地の異常な悪さに、やっとその扇情的なランジェリーの装飾の意図に気がつけば。かあっと上がった体温も、この時ばかりは良い方向へと作用したらしい。初めは、悪趣味な飾りへの嘲笑だった吐息が、吐いた分を吸ってと繰り返しているうちに、この場にとても相応しい、しっとりとしたそれへと染まっていく。──……まずはその気にさせろ、と。……と、何気なく思い出したそのフレーズは、いつかグランポートの夜に聞きかじった、ろくでもない女山賊共の講義の一部だ。
そのありがたいご高説に従うではないが、これまで幾度触れてきたか分からぬ唇に吸い付くと。普段は翻弄されるままの動きを、純粋に己が好きだった、気持ちよかった方法を、必死に真似て再現し。そうしているうち、もとより不安定な膝の上、慣れぬ動きに滑り落ちそうになれば、相手の首に腕を回したその瞬間。二人の間でぱさりと薄い布が落ちる音が、激しい水音の間にやけにはっきりと耳についた。
それからたっぷり数十秒後。──やっと汚れた口元を離して、無言で見つめ合うこと数秒間。繋がっていた銀糸がぽたりと胸を直に濡らす感覚に身をよじると。相手の方に倒していた上半身をゆっくりと起こしながら。此方は熱というよりは、純粋な羞恥を感じさせる口振りで、促された願いについて答えて、 )
──……私が誰の、ものなのか。消えない証拠が欲しいんです。
何があっても、……絶対に、忘れられないように。
………………ギデオンさんの手で。パパがぜったい、しないこと。教えて、ください……
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