匿名さん 2022-05-28 14:28:01 |
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( 谷上まで届く程の振動と共に、今回の首領・親トロイトが、どうと音をたて倒れ臥す。確実な生死を確認するまで、戦士たちの緊張は変わらない(べきだ)が。もう既にこの瞬間から、ヒーラー達の新たな戦場は始まっている。煙幕の操作にかかりきりだったビビの背後で、初めての大型クエストにも関わらず、深手を負ったセオドアを診ながら、同時進行で壮絶な前線に滑り落ちたカーティスを拾い上げる大立ち回りを、冷静にこなしてくれたアリア。そんな二人の状態が安定したことを確認して、崖の先に立つ此方へと指示を仰ぎに来た後輩と、努めて明るい雰囲気で負傷者を数えながら、今後の方針を話し合う。とはいえ、作戦中の事だけではなく、その後に負傷者を治療するためのスペースや、必要な物資の調達先等、必要な確認は事前に済ませており。流石のギデオン指示下、この負傷者数ならば、事前の計画通りにこなしてなんら問題なさそうだ。そう手早く医療部の方針をまとめれば、あとは早々に総隊長から権限を移行して、速やかに負傷者の治療を始めたいところ。後衛の撤収はアリアに任せて、自身は先程登ってきた獣道を滑り降りようとしたところで、ちょうどギデオンと出会して。 )
現状確認できている範囲で、重篤な負傷者はナシ。速やかな手当がいる対象は9,10名程。
ヒーラーに被害は出なかったので、予定通り休耕地にテントで負傷者の救護にあたります。
他に小さくても怪我をした人がいたら、力尽くでもなんでも寄越してもらって……それから、誰でも良いので、動ける人を2人ほど貸してください。
( 総隊長の問を受け、先程アリアと確認した所見をスラスラと述べるヴィヴィアンは、急場でこなした一人での煙幕操作に、前髪は汗で潰れて、白い頬は微かに上気している。そうでなくとも、鬱蒼と茂った獣道を駆け上がった関係で、白い装束はあちこち汚れて、全身鉤裂きや小さな擦り傷だらけ。しかし、それらをものともせずに、この場の医療部責任者として、真っ直ぐにギデオンを射抜くエメラルドには、作戦前のような甘えは見られずに。谷を引き上げる準備のため、一旦相手と別れるその間際、さりげなく相手の腕に触れたかと思うと──トロイトの抓を受けていた相棒に。「お疲れ様です」と短い一言で施した回復魔法が、ビビにとってはあるまじき精一杯の公私混同だった。
さて、纏まったスペースの取れない渓谷の代わりに、昨日ビビが確保した休耕地は、ここから山道を徒歩で20分程のところにある。とはいえ、医療従事者にとっての"重傷者"とは、早急に最新医療に繋げなければ、数時間先が分からない者たちを指す言葉であり。従って重傷者はゼロ……と言っても、今この瞬間も脂汗を浮かべて、痛みに喘ぐ負傷者達が歩ける距離ではとてもない。それ故に──パンパン! と手を叩いて、歓喜に湧く冒険者たちの視線を取り集め、負傷者を背負って山を下れる体力の残っていそうな者を数名割り振れば、ビビを目の前にした男どものそれはそれは素直なこと。元気だけが取り柄の連中を、ベテラン顔負けの速度で取りまとめ。何処から話が漏れたのやら。この後の救護活動で二人、誰がヒーラー助っ人をするかで勝手に紛糾したり、それが収まると、今度は助っ人枠から漏れた連中が、自分の身体に優しく手当をしてもらえるような負傷がないか、お互い探しあったりと。よく言えばこんな時まで健康的に、忖度を抜きにすれば品もなく、ニヤつきながら山を下る珍妙な一行を先導しながら山を下った。
そうして辿り着いた休耕地には、既に大きなテントが既に3棟。主導するのはヒーラーと言えど、大型クエスト後の救護活動は、基本的には総力戦になる。ヒーラーが負傷者の治療に当たるテントの一方で、無限に必要になる熱湯をグラグラと沸かし続け、備品の消毒等を繰り返す体力班に、その間に使う薬や物資、労働力の調整をする、頭脳労働班用のテントがそれぞれ。まずはその負傷者用のテントを開けて、その傷に響かないよう慎重に負傷者達を寝かせると、治療に当たる前に手を洗いに顔を出せば。下山中、勝手に助っ人の座を勝ち取った青年達が、テントから顔を出したビビが、助っ人を呼ぶのをソワソワと待ち構えているところで。 )
それじゃあ、誰か救護テントの方を手伝っていただける方──……
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