匿名さん 2022-05-28 14:28:01 |
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( 若い女の声にならない叫びが、夜の甲板にしっとりと響く。聞き捨てならない宣言への不満は、大きな口に食べられてしまって。熱い舌にグチャグチャに掻き回されると呼吸が出来ない……訳でもないのだが、声を出さない呼吸の仕方が分からない。必死に息を我慢して、我慢して──それでも、長いキスに耐えきれなくなって、何度も何度も、耳を塞ぎたくなるような声をあげさせられて。その内なんだか、頭の奥が痺れたかのようにぼんやりとしてしまって、いつの間にか収まっていた胸板と優しい掌に、すり……と顔を頭を擦りつけながら。耳も腰も、全身砕けて溶けだすような言葉に、ニコニコと相槌を打っていたものだから。ふと相手が零した質問に──どこへ行こうか……。海はもう行ったから、今度は緑が綺麗なところがいいかなぁ。秋になったら沢山美味しいものが取れるだろうし、きっとギデオンさんが喜ぶだろうな。それとも、もっと都会の街中で、今度は朝から一日中ショッピングデートが出来たら。今度は私がギデオンさんに似合う物を見つけてあげたい。でも、本当は私、今の家が1番好き……朝ゆっくり起きて、ギデオンさんの朝ご飯を食べて、人目を気にせず ずっとぎゅってして、好きなだけキスもしたいし、夕飯はギデオンさんのリクエストを聞くの。ううん、でも私ギデオンさんといられるなら結局何処でもいいなあ──なんて、脳内で考えたこと全て口から垂れ流しになっていたなんて気づきもせずに。もうこの人がいなかったら生きていけないかも、なんて。たった数ヶ月で弱くなってしまった己に苦笑して、それから数分後か数十分後か。先程誤魔化してくれた腹いせに、そろそろ船室に戻ろうと促す相手にしがみつき、抱っこで連れてってくれなきゃ戻らない、と駄々を捏ねたその結果。涼しい顔をしたギデオンに本当にやられかけたのを、慌てて飛び退くその瞬間まで、その心地よい温もりをひしと掴んで絶対に離さなかった。 )
──おはようございまーす! あっおはよう……ええ、新年おめでとうございます、
( そんなビビもまだもう少し強かったはずの年始、カレトヴルッフ。忙しい冒険者たちの中には、まだ新年あけまして初めて顔を合わせる連中もチラホラ混じる厳寒の季節。今の時期のメイン収穫物になる、熱で溶ける魔物の素材を駄目にしないよう、室内にしてはやや低めに温度設定されたギルドのロビーに、鮮烈な赤を靡かせて颯爽と入ってきた娘は、まずいつもの掲示板に向かおうとして、カウンターに愛しの相棒を見つけると。その華麗なターンに舞うマフラーの優雅な様に、その贈り主を知っていて尚、目を惹かれずにはいられない男達の多いこと。しかし、そんな男たちの淡い恋心など露知らず、冬でも元気一杯の娘は、今日も今日とて片思いを公言して幅からない相棒へと一目散に飛びついていく有様で、 )
おはようございます、ギデオンさん!
今日はもうご予定決まってますか? まだでしたら一緒に行きたいなあって……
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