匿名さん 2022-05-28 14:28:01 |
通報 |
ん、
(相手のはっとした様子に、こちらもようやく浜辺の観衆に気がつき、抜け出していく相手を無理に引き留めることはなく。彼女が先に泳ぎだす間、ふと再び沖を振り返る。海は読めないものとはいえ、大した風もないというのに、先ほどの緩やかな大波は奇妙だった。海底に妙な魔獣でも潜んでいるのだろうか……後で有識者に尋ねるべきか。そう考えながらギデオンも海から上がり、ヴィヴィアンの少し後から温かい砂を踏んで。タオルを持ったアリアやリズが彼女を優しく出迎える横、ギデオンの元へやって来たのは、仏頂面のジャスパーだ。個人的にそりが合わない間柄ではあるものの、奴の顔色を見れば、同じ懸念に至っているのが見て取れた。「しばらく出てくる。こいつらを充分休ませておけよ」──言い方こそ粗暴だが、当然異論などあるはずもなく。「了解」と頷き、暫くの監督責任を引き受けることにして。
昼下がりも過ぎつつある今、それでも頭上の南国の空は、まだまだ明るさを保っている。待ちに待った遊びの時間が、たっぷりとあるわけだが……訓練初日からがっつり泳法をやり込んだだけあり、体力馬鹿と名高いさしもの冒険者たちも、あまり泳ぐ気にはならないようだ。パラソルの下で涼む者、持ち込んだ敷布の上で日焼けがてら微睡む者、寝ているうちに砂風呂に埋め込まれる者、それぞれ過ごし方は様々で。少し元気のある者はのんびり潮干狩りをしているし、疲れなど知らぬデレクとカトリーヌは、岩礁の辺りで海ウサギを追い込んで遊んでいる。全員の無事良し──今回の看護役である中年女性のヒーラーによれば、怪我人や体調不良者も特に出ていない。その確認を取ったころにはジャスパーが戻ってきて、ギルマスほか少数のベテランに、地元住民への聞き込みの成果を共有した。この辺りのビーチには、時々悪戯好きの馬の魔獣……エッヘ・ウーシュカが出るそうだ。「なんだ、それなら平気だな」という反応が大半だったものの、それは熟練ゆえの構え。若い連中は初めて見るだろうし、夕飯のときに念のため共有するか、という方向性に落ちつけば、そこから先の役割分担にも自然と話が及んで。──そうして監督責任からようやく解き放たれれば、まずは近場の海の家へ冷たいものを買いに出かけ。すぐにビーチに戻ってくれば、赤紫に落ちつき始めた空の下、今度は恋人の姿を探す。立場上、自分の職務を果たさざるを得なかったわけだが……晴れて自由になった今は、彼女のことが気がかりだ。やがて落ち着いた場所にその背中を見つければ、後ろから声をかけつつ、ごく自然に隣に座り。シロップのかかった夏氷を差し出し、自分のそれにも木の匙を差し入れながら、穏やかに話しかけるだろう。)
……今日はずいぶん泳いだな。洞窟探検は明日にするか? ……
トピック検索 |