匿名さん 2022-05-28 14:28:01 |
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(“ほんの少しのお手伝い”ではきかないほど沢山助けられただとか、自分とアーロンだけでは絶対に生還できなかったろうだとか。言いたい返事は山ほどあるはずなのだが。ヴィヴィアンの手つきと言葉に、己の全てが優しく蕩かされていくようで。宥められたそのままに、何も言わず目を閉ざし、ヴィヴィアンの前で息を深く吸って吐き。己の頬に寄り添う彼女の手に、己の武骨な手を外側から緩く重ね。そうして、顔を僅かに横に向け、相手の掌の内側に、己の唇をそっと押し当てながら……与えられる優しい労わりを、ただ静かに享受する。
──そうだ、終わった。終わったのだ。子どもたちの予後は、これからも長く見守るにせよ……13年間の贖罪の夜は、ようやく明けた。ここに居るヴィヴィアンが、たった今、そう教えてくれた。……自分は役目を果たせた。きちんと、やり遂げられたのだ。
次にギデオンが目を開けて、彼女に顔を戻したとき。その薄青い瞳の奥には、何か新しい、明るい光が、静かに、しかしきらきらと、ちらつきはじめているだろう。彼女の片手に添えていた手をふと伸ばし、その形の良い頭に置くと。“あの時のように”二、三撫ながら、穏やかに微笑みかけて。)
……なあ、ヴィヴィアン。覚えてるか。
初めてふたりでクエストに出て、ワーウルフ狩りをしたあの夜……あれから、ちょうど1年だな。
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